ホラー短編集

悪魔信仰

　ある悪魔教があった。今では正しい行いをしているといわれたが、氏神信仰から派生した宗教だった。もともと仲が悪かった二つの信仰があり、マシラ様とユイナ様という、別々の神を信仰していたが、信者の誘拐監禁事件がおきてから。マシラ信仰は、おちついて過去の反省から、悪魔教とののしられることも自責のため反省していた。

　しかし、また事件はおきた。件の事件は昭和の時代に起きた事件であり、もう３０年以上たっているので人々も忘れかけていたが、ある霊能者が、彼らの行いによってたたりが起ったと主張した。物証もなかったので、与太話として片づけられた。ただ、少しして、被害者の暴行の痕跡がみつかり、その後死亡したのが確認されたので、人々はまたマシラ信仰を疑いはじめた。

「宗教なんて、もうやめてほしいわ、新興宗教はろくなものじゃない」
「まったくだ、ひどくしつこい勧誘をうけた友人もいる」
「まるでひどい、ほぼ殺人だ」
　死亡との直接の関連はみつからなかったものの、人々は一方で信仰を批判し、一方で祟りを信仰していた。曖昧な感情のまま、マシラ信仰は批判の的にさらされ、ＳＮＳなどの誹謗中傷や、本部への嫌がらせをうけ、ついに最悪の事態になった。

「マシラ信仰の開祖、佐藤の死去を確認だと」
「ひどいもんだ、もう７０のおじいさんでしたよね」
　ひげもじゃの中年警察官が、若い警察官に話す。しかし、若い正義感にあふれた警察官に、ひげもじゃの警察官は若い警察官に絶望的な一言を発した。
「あいつは、マシラ様を信じていたからな、ユイラ様を信じないのが悪いんだ、ユイラ様の信者の犯行だったが、俺はもみ消したんだ、うちの家系代々の信仰だからさ」