人造少女

ショー・ケン

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人造少女

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 ある退屈な青年。成績優秀、飛び級で大学生になった16歳だがあまりにも日々に退屈していた。彼が興味があるのはシンギュラリティだけ、AI、人工的なものに憧れドールにさえ憧れ、趣味で集めていた。なぜドールかというとその時代にはまだアンドロイドはなく、アンドロイドさえいれば、彼もアンドロイドを愛しただろう。

 彼に憧れる女性は数知れず。たった一人、同じ大学に通う年上の20歳の物静かな女性だけが彼に興味を示さないようだった。彼女とは恋仲ではなかったがよく世話になった。彼は彼女に自分に似た心地よさを感じていた。

 それでも、彼にとっては彼女さえ退屈だった。勉強も、スポーツも、趣味も、どこか退屈。自分と同じレベルの完璧な存在を探し、見つけるまでその退屈は終わらないように思えた。そうすると逆に体の中に熱がわいてきた、その場所へいかなければと。

 思い立ったらすぐ行動に移した。彼の力でできる仕事をすべて請け負い金を稼いでいった。プログラミング、AI学習の手伝い。コンピューターグラフィックの依頼。彼は一人でベンチャー企業何個分もの仕事をした。それでも彼の脳はパンクせず、ひたすら働き続けていた。

 そして彼はついに“夢”にたどり着く、2000万を手にして、それをすべてつぎこみ、国の最先端事業である“コールドスリープ”実験へ。増えすぎた人口を減らし、かつ少子化問題を先遅らせるための施策だった。しかし実際参加したい人間が多かったのと維持費がかかるため、それだけの資金が必要なのだった。

 周囲に相談したあと、種々の書類の整理をおえた。家族に見送られ、彼は長い卵型のポットに乗り込んだ。周囲は別れを惜しんだ。
―あんなに若いのに
―多彩で素晴らしい人だった
―人格者でもあった
 しかし彼はどこかで想っていた。自分の性格のわずらわしさを人々は知っているのだろうと。そして彼のコールドスリープが始まった。冷却用の特殊な液体を流し込まれ、彼は深い眠りについた。


 そして彼は次に起きたときは、アンドロイドが一体、頭上からのぞき込んでいた。
「おめざめですか?」
「ここは?」
「エルインダストリの社内、コールドスリープ施設です」
「おお、間違いない、コールドスリープは成立したのか」
 彼は案内されるままに手術着をきて、いくつかの審査を受けて、1週間後に施設をでた。

 彼が外にでるとマスコミがあつまっており、その中にはサイボーグ化した人やアンドロイドなどがまじっていた。
「コールドスリープの生還者第一号」
「過去からの使者」
「希代の天才少年」
 まさか自分が解凍から目覚めても、以前と同じような扱いをされるとはおもってはいなかったが、その熱は彼の考えとは別に、徐々におさまっていった。仕事を探すとプログラミングの仕事へついた。周囲は天才ばかり、ついていくのが精いっぱいだったが、しかし日々精進し、彼は順当に成績をあげていった。日々が楽しかった。

 だが彼には一つ空虚があった。家族がいないし、自分の家もなくなっている。それもそのはず、200年もたっていたから……。名乗り出てこないという事は、きっと家が絶えたか別の理由。まあいい、彼のプラスチックのような心には、もっとも心残りなのはドールだけだ。彼の愛着のあった、赤色にピンクのツートーンカラーの、うつくしい青の瞳のぷっくらとした唇と頬をもつ美少女。
 とそんなことを考えていると、すぐ脇をいい香りとともに、強い足音が通った。
「あぶないじゃないか!!」
 その勢いに気おされ難癖をつけると、そこには、件のドールそっくりの女性がいた。
「君は……」
「あら?どこかで?」
 二人はすぐ意気投合した。彼女は自分をアンドロイドだとなのった。まさにそれは疑いようがなかった。人間らしくないしぐさや思考をしている。男には彼女がどのくらいのスペックかはわからなかったが女性はミステリアスで、ぶっきらぼうで、そして感情がわかりづらい、無機質なドールそのものだった。間違いなく最新型におもえた。
彼は彼女をひどく気に入り、その日の内に深い仲に、そしてやがて恋仲になった。

 同棲をし始めて、彼が休日でごろごろしていたころ。彼女は仕事だというので退屈だとおもっていたが、ふと魔がさして彼女の荷物を物色しはじめた。
「浮気の証拠でもみつかれば~」
 なんて謎にうきうきしながら調べていたが、特段そんなことはなく、一枚の名刺がおちた。
「!!!」
 その名前、間違いない。彼がいきたかつての時代で出会った、彼によくしてくれた物静かな20代の女性、その人の名前だった。

 その夜彼はといつめた。
「何よその顔、浮気なんてしてないわ」
「そんなことじゃない、事はもっと重大だ」
「あら、浮気が重大じゃないっていうの?あなた私に隠し事を……」
「隠し事をしているのは君の方だ!!」
 おもわず、彼女の頬をたたきそうになって、すんでのところでとめた。美しい瞳がまっすぐこちらを見つめていた。
「この名刺、君の正体は……僕がここに来る前に出会った彼女だろう」
「あら、ばれちゃった?」
「君は、僕に興味がないようなふりをしていて、君もまた僕に興味を隠していただけだったんだな」
 彼女の体をいたずらっぽくさわりながら挑発すると彼女はいった。

「私は、初めから誰よりあなたに憧れていた、初めからあなたの憧れているドールになりたかったの、だからこの時代まで生き延びた、脳だけ冷凍し、そしてサイボーグ人間となって」
「どうしてそこまで……」
 男がいうと女性は笑っていった。
「あなたを驚かせたかったのよ、もしあなたの愛したアンドロイドが、アンドロイドに偽装した人間だったら、あなたも少し人間に興味が持てるとおもって、純粋な愛よ」
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