好奇心

ショー・ケン

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好奇心

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「くそ、どいつもこいつも」
 身長が小さく、目がまんまるで子供にも似た容姿の博士、自分の外見にコンプレックスがある。
「私はどこまでいっても、奇異の目で見られるのだ」
 その秘書と博士は甘い関係にあった。誰に対しても優しく、人当たりもよく、そんな人が博士に好意をよせて、二人はひそかにお付き合いをしていた。
 博士は、容姿はそんなだが数々の発明品を開発した。人の気持ちを推し量る装置、動物の気持ちがわかる薬。しかし、最近スランプに悩んでいた。自分のストレス、コンプレックスからくるものではないかと思い込み、ふさぎ込んでいた。

 そんな折、秘書は、二人で夜をすごすときにこういった。
「私は、あなたがどんな状態であれ、あなたの事を愛しているわ、だから安心して研究に打ち込んで」
 そういわれ、博士は燃え上がった。資金や、成果だのを気にしないでいいこの世でもっとも素晴らしい発明品をつくろう。

 そうしてできたのが、あろうことか自分のコンプレックスを気にしなくていい、ただそれが為の作品だった。名付けて
「人が人の欠点に無関心になる薬」
 効果は三分、さっそく、周囲の動物、次は知人でためした。効果は十分だった。例えば、動物嫌いの人が動物に嫌悪感を抱かなくなり、異性嫌いの人が、嫌いという感情をあらわにしなくなった。

「そうだ、これでためしてみよう」
 博士はその夜よからぬことを考えた、秘書との食事にそれを取り入れたのだ。 

 夕食はゆったりと行われた。博士は食事に手を付けた時間を図りその時を今か今かとまった。というのも、この秘書、苦手なものも好きなものも普段、口にしない。好みがわからないのだ。

 3分後、秘書は突然こんな事を口にした。
「はっきりいうけれど、あなた、今日全然魅力的じゃないわね」
「!?」
「あなたの異質さ、奇妙な風貌、それでも魅力ある人がらがすきだったのに、どうしてかしら、あなたの異様さが全然異様と感じられない、私の大好きなあなたはどこ」
「……」

 その時博士はきづいた、自分を慰めるもの、その最後の一つが暴かれた。自分の研究によって。その秘密は暴くべきではなかったと。秘書は目が覚めると、いつも通りになったが、博士は、昨日の事を忘れさせる薬をつかった。最も愛するものが自分のコンプレックスこそを愛していたなんて、自分さえ忘れていればいいのだ。
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