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ドナー
しおりを挟む海外に住むAさんはドナーからある臓器を譲りうけた、どうにもならないほど弱り切っていたその臓器は、ドナーのおかげで回復し、問題なく機能した。
彼は警察官だったが、問題なく回復したため、職場復帰を果たした。だが彼は、その頃から妙なものを見るようになった。初めは夢だった、頭のない少女が自分に助けをもとめてすりよってくる。まさか、自分のドナーとは、と考えることもあった。
次のその少女は現実にも現れるようになった。ある上司のもとに縋りついている姿で。
彼は彼女が何を訴えようとしているのかはわからなかったが、不安だったのが自分に与えられた臓器が違法な臓器売買によって与えられたものではないかということだった。
そんな中でも夢は日に日にリアルになっていく。そしていつしか、その夢にもう一人の人物が現れた。その人物は、どうやら大人のようで、兵士の格好をしておりショットガンのようなものを構えていた。
(そうか、こいつが何かしたのか、こいつをどうにかしてほしいんだな)
そこで目が覚め、Aさんはその日から、現実に現れる少女の霊を目で追うようになった。その幽霊はいたるところ、特に惨劇がおこる所に現れた。そして徐々にその法則が明らかになる。それは、強行に及ぶ犯人と思しき人物にまとわりつくのだ。
そしてある連続放火事件がおこった。警察署は全力でその犯人を追ったが、なかなか見つからない。Aさんも、容疑者たちのアリバイや犯行当時の事を洗っていたがそこで気になる事があった。それは、少女が縋り付いている事の多かったAさんの上司だ。彼は……いつも放火事件のあったときは有給をとっていたり、近くで事件の捜査にあたっていたりした。まさか、と思い彼を付け回すことになった。
ある時、街はずれの老人がひとりですむ宅に、彼がバイクでかけつけ、放火をしようとしているところを目撃する、カメラでとらえ、すぐに取り押えようとする。
がその瞬間、少女の霊があらわれ自分の背後を指さした。背後には、ショットガンをもった男が自分めがけて発射しようとしていた、咄嗟に彼は敵を撃った。
そして逃げようとする上司を殴り合いの末に捕まえたのだった。
彼は表彰され、その後、警察署のヒーローとなった。
その翌日に彼は夢を見た。自分は、件の兵士となっていた。自分の腹部を触る、そこは交換した臓器のある場所だ。そこで気づく、実は自分のドナーはこの兵士だったのだ。
兵士の記憶が流れ込んでくる。
(テロ組織が我が祖国を攻撃してから、ついに壊滅までおいつめた、しかし、この先何がまっているかわからない、この倉庫の中に、奴らが隠れているはずだ)
そこで、兵士は倉庫をけ破った。そこには、拳銃を構えている少女がいた。拳銃がこちらを向いているのに気づき、兵士は、思わずショットガンを発射した。少女は、見るも無残な姿になって倒れた。
同僚たちが彼の脇を通り過ぎ、テロ組織のボスたちを取り押えるまでも、彼は泣き続けた。
そして、景色は移り、彼はあるビルの屋上にいた。酒を飲み、ドナーカードを手に取り、やがて、それを胸にいだき、鉄柵を乗り越えた。
例の少女がいた。
(苦しまないで、悪いのは、テロ組織だったから、私は彼らにとらわれ、いわれるがままに、彼らの盾になっただけ、あなたは悪くはない、悪いのは……戦争や悪意、そのもの)
しかし、その少女の幻影を見てもなお彼の決意は揺るがず、諦めと幸福な表情を浮かべ、両手をひろげ、落下していったのだった。
「はっ!!!」
Aさんは目を覚ます。ドナーは少女ではなかったのか。机の引き出しにある辞表を自分で破った。そうか、正義が人を救えないこともある。ならば、できうるだけ犯罪を未然に防ぎ、そうした悲劇を防ぐだけだ。不本意な形で死んでいったもののためにも。そう決意して、職場へと向かうのだった。
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