霊感少女と不良

ショー・ケン

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霊感少女と不良

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学生時代不良と仲の良かったAさん。しかし自身は不良というわけではなく、あらゆる人間とうまくやっているつもりだった。だがクラスで浮いているC子さんだけが彼に心を開かなかった。

 といってもC子さんも別段仲間外れというわけでもなく女子の中で雰囲気が浮いているというだけ。ちょっと口調がきつかったりはっきりものをいう事があって、そんな様子だった。それだけではなく彼女は霊感があるとはっきり周囲に話していたので、普段から不思議ちゃんと思われていたのだろう。

 そんなある日、同じクラスの不良Bに教室の中で大声で誘われた。
「心霊スポットいこうぜ」
 そういって、Aさんを誘う不良B、いけいけ系、もともと運動部に所属していたのもあって体力はあるし、わりといいやつで面白い事をいうので時折ムードメイカー的でもあった。

「俺はなあ」
 心霊スポットどころか怖い話が少し苦手なところのあるAさんは戸惑った。ある霊媒師に子供のころ見てもらった事があるが、霊がつきやすい体質だといわれたこともあって気にしていたのだ。
「そんなんきにすんなよ」
 とずけずけと誘うB、ついにはういているC子さんに突然話しかけていった。
「なあ、○○病院(地元で有名な心霊スポット)大丈夫だよなあ」
 とC子さんにいう。C子さんは本をよみながら
「ああそうね、バカ二人は死んでもなおらないしいってみたら、別に興味ないし」
 と強気なC子さん。
「ふむ」
 となぜか納得気味のB。険悪な雰囲気になるのを避けるために、Aさんはわってはいって心霊スポットについていくことにしたそうだ。そのさいにC子さんはAさんをみてぽつり。
「そんなんだから、あんたの事は昔から嫌いだからどうでもいいけど……腐れ縁もあるし、これを持っていくといいわ」
 としおり型の札をもらった。
「もしもの時はいうといいわ“奴を贄に”って」

 その夜、心霊スポットにつくと、噂にたがわぬ異様な雰囲気の廃病院がそびえたっていた。金曜日という事もあったが初めは乗り気でなかったAさんも、段々気分がのってきて、二人で歌を歌ったりしてはしゃいでいた。
「何もねえなあ、つまんねー」
 そういって、帰ろうとしたとき、建物の二階から見下ろすと地面に雨合羽をきた子供の様な姿がみえた。
「おい、ガキ!!何やってんだ」
 と、勢いよく声をかけるB、Aさんがとめるも、にやにやとしてあれをおいかけようという。午後の7時、その時間にライトももたず、月明りだけであんなところに人がいるのはおかしい。そう思うものの、その時は、Aの雰囲気におされて、その少年を追わなければいけない気分になっていた。

 一階の出入り口からでると、子供……少年はこちらをふとふりむいた。普通の顔にみえる。だがいくらか古びた格好のように見える。
「ふふふ」
 と笑う少年。Bさんはなぜかはしゃいで
「よーし、お兄ちゃんがつかまえてやろう」
 そういって追いかけていった。Aさんはこの段階でなぜか妙な胸騒ぎがした。Bをとめようと肩に手をかける。だがBは勢いづいてそれをなんどもふりはらう。何度か目でふりかえってBがAさんをなぐりつけた。
「なんだよ!!」
 ふりかえったBをみてAさんは驚愕した。その顔、目も鼻も口も真っ黒で中身がないようにみえたのだ。
「い、いや……すまん」
「謝るなら止めるな、今、いいところなんだ」
 ふと、その瞬間機転をきかせたAさんはBを止める手段にC子さんにもらったものを利用した。
「このお札、ある人にもらって、いいからもっておけよ」
「あ、ああ」
 いつもと違う強い口調で、どんと押し付けられた札を持ったBは、Aをおしのけるとまた走って行ってしまった。Aさんは殴られた痛みと、初めて口答えしたことで体が震えて地面にへばっていた。

 しばらくすると、やがて悲鳴が聞こえた。すぐにかけつけると、Bは、崖の直ぐ傍でがくがく震えている。
「お、お札、効果があったみたいだ、俺はなんであんなガキを追いかけていたんだ」
 と要領をえない。話をきくと、すっと子供を追いかけていったBは、ふと少年がたちどまったのをみて、自分もたちどまる。
「今度はお兄ちゃんがおいかけられるばんね、ほら、この先」
 少年が指さす方向には廃病院がみえる。あれ?おかしいな、まっすぐ来たはずだったのに、そう思って進もうとしたとき、ふと少年が苦しみだしたのをみて、自分の手もとをみる、すると握られた札で少年が悶えているらしい。
「おい、大丈夫か」
 少年は自分をみあげた。その時、はっきりと間近で顔を見たが、その顔は先ほどAさんがみたように目、鼻、口に真っ黒なくぼみがあるだけで、中には何もない。よくみるとうじがはっているようだった。
「う、うわあああ」
 腰をぬかしたB、そして後ずさりして気づいた。自分が進もうとした先、それは切り立った崖になっており、落ちたら死ぬだろう高さがあった。

「ひ、ひいいい」
 そこで悲鳴をあげてかけつけたのだった。二人は一目散にその心霊スポットをあとにした。その際、何度となく少年がおいかけてきたのだが、AさんはC子さんに教わったことをおもいだした。
「“奴を贄に!!”」
 そう叫ぶと同時に、子供の叫び声みたいなものが夜闇に響いて、以後、怪奇な現象はなくなたっという。

 二人は何事もなく帰ってきたが、あとから聞くとつい先日もそこで行方不明者がでたらしい。

そしてC子さんが心霊スポットから帰ってきた後にAさんにつげる。
「だからやめとけばよかったのよ」
「どうして助けてくれたんだ?」
「あなたを助けたわけじゃない、腐れ縁っていったでしょ」
 どうやら話を聞くとC子さんとBさんは幼馴染だったらしくBは昔はまじめな生徒だったらしい。別の地域からこの高校にかよっていたAさんには、初耳な事だった。
「じゃあどうして俺にこんなにつめたいんだ?少しは労いをいっても」
 と尋ねる。なにせ、Aさんは逃げる時に右手首をねんざして、怪我をおっていたからだ。
「前から言おうとおもっていたけど、あなたは優しすぎるからいろんなものを引き寄せちゃう、対処できないんだから、だれとも仲良くなろうなんて思わないほうがいい、心霊スポットでだって、幽霊は簡単についてきちゃうんだから」
と忠告をうけたそうだ。
「ふむ」
と不満そうでいるとさらに彼女はつげた。
「あんたには、ヤバイ霊がついてる、私には払えない、“奴を贄に”って、あなたについてるやばい霊に、あそこの悪霊を退治させたのよ」
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