ショー・ケン

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 都内に住むOL私には、幽霊の顔が人の顔にだぶってみえる。この能力によって、何人かの人間を救った事がある。

 事故にあいそうな友人、怪我をしそうな知人。大病をわずらいそうな人。すべて助けられたわけじゃないが、警告はしてやった。

 自分にわかるのは、幽霊がその人の顔にダブって取りついて見える時は、必ず、よくない事がおこるってこと。

 だがある時、ある難問に出くわした事がある。時折、強烈な悪意をもった太ったスキンヘッドの男の霊が、ある人にダブって見える。スキンヘッドの人の顔の傷、ホクロの位置に、ひどく見おぼえがあって調べてみると、地元によく張り紙のある指名手配犯のものだ。

 これはまずいとおもって、通勤時、いつもその男性に声をかけようとするのだが、なぜか男性に近づけない、男が強烈にこちらをにらんで遠ざけようとするのか、妙な力が働いているようで近づけないのだ。

 だが仕事でつかれてひどく体調がすぐれないとき、私はしばらく霊の存在を、見ることができなくなっていた。不調で嫌な思いをしていたが、その意味ではこちらの生活のほうが楽なのかもしれないという奇妙な思考回路にも陥っていた。

 そんな時だ。いつものように通勤で使う電車にのり、電車で降りる、いつもあの男を見ていた場所だ。その日も疲れていたので周囲に目を配ることなどしなかった。だが下車の時、私はころびそうになった、後ろから手をつかまれ、支えられた。
「大丈夫ですか」
 振り返る。私はぎょっとした。私は、その時すべてをさとったのだ。私の霊能力は、たしかに、弱くなっていたが、その男が、何度か整形をしているだろうことがわかった。ホクロや傷を修復するために……その男は指名手配犯と同じ場所に、ホクロや傷のあとがあったのだ。
(どういうことだ……スキンヘッドの男は)
 そうか、と私は気づいた。この男とスキンヘッドの男があまりにもうまく重なりすぎていたため気づかなかったが、この男こそが指名手配犯で、スキンヘッドの男はこの男を恨んでいたのだ。

 その時ようやく気付いたのだ。その顔は、加害者ではなく被害者の顔なのだと、この力は、幽霊から人を助けるものではなく、人から自分の身を守るためのものだと。

 それから、私は、力を使ってむやみに人を助けることはなくなった。助けたものが、もし、人から恨まれる正当な理由を持っているのだとすれば、それは霊によるものだとしても、許容されるべきだろうから。

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