ショー・ケン

文字の大きさ
1 / 1

しおりを挟む
 都内に住むOL私には、幽霊の顔が人の顔にだぶってみえる。この能力によって、何人かの人間を救った事がある。

 事故にあいそうな友人、怪我をしそうな知人。大病をわずらいそうな人。すべて助けられたわけじゃないが、警告はしてやった。

 自分にわかるのは、幽霊がその人の顔にダブって取りついて見える時は、必ず、よくない事がおこるってこと。

 だがある時、ある難問に出くわした事がある。時折、強烈な悪意をもった太ったスキンヘッドの男の霊が、ある人にダブって見える。スキンヘッドの人の顔の傷、ホクロの位置に、ひどく見おぼえがあって調べてみると、地元によく張り紙のある指名手配犯のものだ。

 これはまずいとおもって、通勤時、いつもその男性に声をかけようとするのだが、なぜか男性に近づけない、男が強烈にこちらをにらんで遠ざけようとするのか、妙な力が働いているようで近づけないのだ。

 だが仕事でつかれてひどく体調がすぐれないとき、私はしばらく霊の存在を、見ることができなくなっていた。不調で嫌な思いをしていたが、その意味ではこちらの生活のほうが楽なのかもしれないという奇妙な思考回路にも陥っていた。

 そんな時だ。いつものように通勤で使う電車にのり、電車で降りる、いつもあの男を見ていた場所だ。その日も疲れていたので周囲に目を配ることなどしなかった。だが下車の時、私はころびそうになった、後ろから手をつかまれ、支えられた。
「大丈夫ですか」
 振り返る。私はぎょっとした。私は、その時すべてをさとったのだ。私の霊能力は、たしかに、弱くなっていたが、その男が、何度か整形をしているだろうことがわかった。ホクロや傷を修復するために……その男は指名手配犯と同じ場所に、ホクロや傷のあとがあったのだ。
(どういうことだ……スキンヘッドの男は)
 そうか、と私は気づいた。この男とスキンヘッドの男があまりにもうまく重なりすぎていたため気づかなかったが、この男こそが指名手配犯で、スキンヘッドの男はこの男を恨んでいたのだ。

 その時ようやく気付いたのだ。その顔は、加害者ではなく被害者の顔なのだと、この力は、幽霊から人を助けるものではなく、人から自分の身を守るためのものだと。

 それから、私は、力を使ってむやみに人を助けることはなくなった。助けたものが、もし、人から恨まれる正当な理由を持っているのだとすれば、それは霊によるものだとしても、許容されるべきだろうから。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...