1 / 1
ある大富豪の家
しおりを挟む
幼い次女をなくした家に長くからつとめている家政婦A子さんは、ある事に胸をいためていた。その家の次女の母親、つまり奥さんが、ひどく落ち込んでいることだ。旦那さまは近年急激に事業がうまく行き、大金持ちになっていった。いい家に住む事になったのだが、大富豪ばかりが住む住宅地で、かつ人の出入りも激しい、つまり、一時期もうけても急にそうでなくなる人もいる。それが隣家であった。新規事業をたちあげて一時期儲かったが、なにがしかの理由でたちゆかなくなり、採算がとれなくなり倒産、夜逃げ同然ににげていった。それを、旦那さまはからからと笑っていたのを思い出す。
この家にひっこしてきてから、この家の人々は、次女を亡くなった苦しみを少しずつ癒しているかにおもえた。ひとえに裕福になっていくためにおもえたが、次男はそれに葛藤している様子だった。まだ大学生で、しかし、思慮深く、いつも母親の様子をきにかけていた。
母親は、彼に支えられほとんど家にいない父親の目を盗んでは、夜中にないたり、外をあるいて、気を紛らわせたりするが、想い精神病らしい。次女が重い難病にかかって、他界してからというもの、次女の事を思いだし、苦しんでいる。
彼女の奇行は、なぜか放置されていた。彼女のいる部屋には彼女ばかりではなく家のものすべてがA子さんを近づけようとしなかった。それを奇妙に思っていたA子さんだが、それは特段きにならなかった。それよりその奇行こそが、母親を苦しめている気がした。
その奇行とは、娘の部屋の入り口に、たくさんのプレゼントをおくのだ。お菓子や人形、おもちゃなど、子供がすきそうなものをほとんど、まったく意味がないのに、お菓子は期限がきれるととりあげられ、家族のものにふるまう。なぜかその席で家族はもりあがり、楽しく娘の話をする。その席で母は、うれしそうに彼女が“今でも生きていて屋敷をかけずりまわっている”“引きこもってないででてこればいいのだ”と話すのだが、当然次男と旦那は嫌な顔をするのだった。
奇行といえば、旦那もそうだった、夜中にこっそり、件のプレゼントの山からおかしをぬすんで食べたりしている。ストレスからかと思ったがなぜかとてもうれしそうにほおばるのを、こっそり見たこともあった。おかげで旦那も太っていったのだ。
それでもその家の事だから、家政婦風情がどうこうするのも違うとおもっていたが、耐えられない事があった。夜、眠っていると、子供の笑い声がする、おもちゃの音や、ときおり子供がすすり泣く声すらするのだ。そのことをいいだそうにもいいだせず、彼女は不眠がちになり、目にクマができていった。
それだけではない。夜、自分をさけて走り回る子供の足音をきいたり、かたずけたはずの食器がちらかっていたり、冷蔵庫があいていたりする。
彼女は熱心な仏教徒であり、ある寺によく頼りにしている住職がいる。彼にそれとなく相談したところ、“なるほど、それはよくない、天国にいくのをとめている可能性がある”とつげられた。
その頃には、プレゼントの山や、お菓子の山がすさまじい量になっていて、さすがにこれはよくないとおもった家政婦A子さんは、悪くなっていく母親の事を考えて、あの扉を開けてみようと考えた。
ある早朝、抜き足差し足で地下への階段をおりる。どうにか気づかれないでこれたようだ。そして、扉に手をかけた瞬間だった。勢いよく階段を駆け下りてくるおと、その後ろには、その家の長男がいた。
「A子さん!!やめてくれ、お願いだ!!」
「もう我慢なりません、これ以上は、お母さまの事を考えてのことです、彼女はよくなりません、私ですら、幻覚を見始めたのです」
「違うんだ、そうしなければいけない理由があるんだ、君は正義感のつもりかもしれないが、この話にはそんなもの存在しません」
「いいえ、私は……守りたいのです、彼女の記憶を、こんなことをしていては、成仏できないではありませんか」
「A子さん、話を!!」
すると、中から子供の声がしたきがした。
「ははははは」
らちが明かないとおもったA子さんは勢いよくこじあけた。
「えい!!」
扉をあけると、窓もあいていない、何もないのに風がとおりすぎ、足音がすさまじい勢いで走っていく音がした。だが正面にむきなおり奇妙におもう。その部屋には、何もなかった。実際には、プレゼントの山があるだけで、B子ちゃんの私物の一切はどこにもなかったのだ。
「どういう……」
また、足音のした方向をふりかえる、長男と自分との間に、見たこともない少女がいた。それも古びた和服すがたで、髪の毛はぱっつんだ。彼女は口をひらいた。
「おまえ、この家のものではないな」
「あ……」
A子さんは、あまりの事に言葉をうしなった。
「わしは……B子ではない、寂しさを感じて……きてみれば、童がしんだというから、同じ童のわたしが居座っておった、じゃが、いつからか外に出る事は許されず、わたしは、たくさんのプレゼントと引き換えに、ここに居座ることをきめた、しかし取引はもうひとつ、“家のもの意外に見られぬこと”わたしは、寂しさによって死に、寂しさに同情したのだ、家のものがB子を思うことで、ここにいようという気になれた、それもここまで……わしが彼女でないと知られては……」
そういって、勢いよく長男の傍らを走っていくのだった。長男は、そこにおち崩れた。
A子さんは、自分の行いを始めて理解した。
「座敷……わらし?」
A子さんはとがめられなかったが、その後その家は没落した。聞くに、隣の家が没落して、栄えていた理由も“彼女”が理由だったようだ。奥さんの落ち込みはいくらか回復したものの、次女のいなくなった苦しみを抱えて、ただ稼ぐ事だけでその苦しみをごまかしていた旦那様は、さらに太っていったらしい。
この家にひっこしてきてから、この家の人々は、次女を亡くなった苦しみを少しずつ癒しているかにおもえた。ひとえに裕福になっていくためにおもえたが、次男はそれに葛藤している様子だった。まだ大学生で、しかし、思慮深く、いつも母親の様子をきにかけていた。
母親は、彼に支えられほとんど家にいない父親の目を盗んでは、夜中にないたり、外をあるいて、気を紛らわせたりするが、想い精神病らしい。次女が重い難病にかかって、他界してからというもの、次女の事を思いだし、苦しんでいる。
彼女の奇行は、なぜか放置されていた。彼女のいる部屋には彼女ばかりではなく家のものすべてがA子さんを近づけようとしなかった。それを奇妙に思っていたA子さんだが、それは特段きにならなかった。それよりその奇行こそが、母親を苦しめている気がした。
その奇行とは、娘の部屋の入り口に、たくさんのプレゼントをおくのだ。お菓子や人形、おもちゃなど、子供がすきそうなものをほとんど、まったく意味がないのに、お菓子は期限がきれるととりあげられ、家族のものにふるまう。なぜかその席で家族はもりあがり、楽しく娘の話をする。その席で母は、うれしそうに彼女が“今でも生きていて屋敷をかけずりまわっている”“引きこもってないででてこればいいのだ”と話すのだが、当然次男と旦那は嫌な顔をするのだった。
奇行といえば、旦那もそうだった、夜中にこっそり、件のプレゼントの山からおかしをぬすんで食べたりしている。ストレスからかと思ったがなぜかとてもうれしそうにほおばるのを、こっそり見たこともあった。おかげで旦那も太っていったのだ。
それでもその家の事だから、家政婦風情がどうこうするのも違うとおもっていたが、耐えられない事があった。夜、眠っていると、子供の笑い声がする、おもちゃの音や、ときおり子供がすすり泣く声すらするのだ。そのことをいいだそうにもいいだせず、彼女は不眠がちになり、目にクマができていった。
それだけではない。夜、自分をさけて走り回る子供の足音をきいたり、かたずけたはずの食器がちらかっていたり、冷蔵庫があいていたりする。
彼女は熱心な仏教徒であり、ある寺によく頼りにしている住職がいる。彼にそれとなく相談したところ、“なるほど、それはよくない、天国にいくのをとめている可能性がある”とつげられた。
その頃には、プレゼントの山や、お菓子の山がすさまじい量になっていて、さすがにこれはよくないとおもった家政婦A子さんは、悪くなっていく母親の事を考えて、あの扉を開けてみようと考えた。
ある早朝、抜き足差し足で地下への階段をおりる。どうにか気づかれないでこれたようだ。そして、扉に手をかけた瞬間だった。勢いよく階段を駆け下りてくるおと、その後ろには、その家の長男がいた。
「A子さん!!やめてくれ、お願いだ!!」
「もう我慢なりません、これ以上は、お母さまの事を考えてのことです、彼女はよくなりません、私ですら、幻覚を見始めたのです」
「違うんだ、そうしなければいけない理由があるんだ、君は正義感のつもりかもしれないが、この話にはそんなもの存在しません」
「いいえ、私は……守りたいのです、彼女の記憶を、こんなことをしていては、成仏できないではありませんか」
「A子さん、話を!!」
すると、中から子供の声がしたきがした。
「ははははは」
らちが明かないとおもったA子さんは勢いよくこじあけた。
「えい!!」
扉をあけると、窓もあいていない、何もないのに風がとおりすぎ、足音がすさまじい勢いで走っていく音がした。だが正面にむきなおり奇妙におもう。その部屋には、何もなかった。実際には、プレゼントの山があるだけで、B子ちゃんの私物の一切はどこにもなかったのだ。
「どういう……」
また、足音のした方向をふりかえる、長男と自分との間に、見たこともない少女がいた。それも古びた和服すがたで、髪の毛はぱっつんだ。彼女は口をひらいた。
「おまえ、この家のものではないな」
「あ……」
A子さんは、あまりの事に言葉をうしなった。
「わしは……B子ではない、寂しさを感じて……きてみれば、童がしんだというから、同じ童のわたしが居座っておった、じゃが、いつからか外に出る事は許されず、わたしは、たくさんのプレゼントと引き換えに、ここに居座ることをきめた、しかし取引はもうひとつ、“家のもの意外に見られぬこと”わたしは、寂しさによって死に、寂しさに同情したのだ、家のものがB子を思うことで、ここにいようという気になれた、それもここまで……わしが彼女でないと知られては……」
そういって、勢いよく長男の傍らを走っていくのだった。長男は、そこにおち崩れた。
A子さんは、自分の行いを始めて理解した。
「座敷……わらし?」
A子さんはとがめられなかったが、その後その家は没落した。聞くに、隣の家が没落して、栄えていた理由も“彼女”が理由だったようだ。奥さんの落ち込みはいくらか回復したものの、次女のいなくなった苦しみを抱えて、ただ稼ぐ事だけでその苦しみをごまかしていた旦那様は、さらに太っていったらしい。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる