百物語

ショー・ケン

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百物語

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ある青年たちが百物語をした。ものものしい廃墟で、幽霊がよく出るといわれるが人が死んだ話などはない。あるとすれば、その廃墟に肝試しにいったあとに事故でなくなった人々の話など。

 肝試しは順調に進む。女二人と男四人の6人組。そして最後の一話、ろうそくをつける事なく、話者が話し出した。順番的に男の中で一番気弱な彼だったし、話し方もそうだったので誰も疑わなかったが、彼は話を終えると、突然叫びだした。
「影が一つ多いぞ!!」
 その通り、確かに影は多く、急いでリーダー格の男がスマホのライトであたりをてらす、一人、二人、三人、数えていくと見覚えのない男が一人いた。
「おい、お前だれだ!!」
 そして男は突然けたけたと笑いだす。
「あはははは、あははは」
 と、ふと消えてしまった。

 暫くパニックになったが、騒ぎがおちついて、皆がおちついてもってきた懐中電灯で明かりを取り戻すと、最後に喋ったはずの男ががくがく震えている。皆が彼をといつめる。
「何であんな奇妙な笑い声をだした!!それに一人多いってきづいたんだ!!」
 彼はひとこと
「おれじゃない……俺は最後話してなんていない、俺の横で俺が話始めようとしたとき、誰かが話し始めた、そして、その話の最後に突然たちあがって叫んだんだ、一人多いっていったやつ、あいつ自身が、幽霊だったんだ」
 皆は沈黙してしまった。

 その最後の一人、幽霊がした話というのが、その廃墟でなくなった青年の話だったのだが、誰もその話など聞いたことはなかったし、いわくなど知りもしなかった。実際あとから調べても、そこで人がなくなった事実などは出てこなかったという。

 きっとわざわざこの場所にきて彼らを驚かすために現れた幽霊か、あるいはこの場所にきたあと不幸な目にあった幽霊の仕業だったのだろうか、いずれにしても、夏の夜の納涼を楽しもうとしたのは、初めから、人間だけではなかったという事だろう。
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