いじめ対策室

ショー・ケン

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マイノリティ・いじめ対策室

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 ある強権的な政府を持つ、曲がりなりにも民主主義の国で、政府がある優れた機関を設置した。マイノリティへのイジメを相談し、公表し、被害者を守るための機関。イジメ対策相談所である。

 確かにそれは一定の成果をあげた。世にはびこるマイノリティ問題。弱者に対するもんだい。
 そこである少年が勇気を出してその相談所へとむかった。男の相談員でニコニコしていた。しかし、一時間ほど相談するなかで、30分ほどすると男の顔いろが変わった。少年が話し終えるときっぱりといった。
「はあ、あなたのいじめはいじめではありません」
 少年はたじろいだ。しかし、今まで話した話はひどいものだった。少年は確かに不条理に殴られたり、ひどい言葉を浴びせられたりする。それでも相談員はこういう
「あなたは男です、および、高収入の過程にいる、少しは我慢をしてください、それに、あなたは“強者の側でありながら強者に殴られている”だけですから本当のマイノリティではない」
 少年が釈明しようとする、が、しかし事務員は淡々と続けた。
「何を期待しているのですか?あなたのいじめは定義上マイノリティに対するものではないし、あなたの悩みに対するイジメは“私たちの示す定義”と異なるし、あなたの不幸やマイノリティ性に対して、世の中ではうねりをもつような抵抗運動はおきておりませんし“意識高い系”の中で取り沙汰されてもいない、あなたは女性でも、トランスジェンダーでもなく、男です、“流行り”というマジョリティの眼中にない以上、あなたは“注目されない”あなたは“認知のないマイノリティ、あなたの痛みは、存在しません”……お帰りください、マニュアル通りに対応すると、あなたを救ってもこちらに何のメリットもありませんから」
 そういってちらりとマニュアルを見せる男、少年は男が見せたマニュアルに目を通した、頭がくらくらするようだった。
「私は安月給で苦しみながら生きているんです、あなたも自分でなんとかしてください」
 少年は絶望して、その相談所を後にした。少年が、自分をいじめる人間たちそっくりにみえた。“世が差別といじめと認めなければ、こうして隠れて大人は弱い人間に暴力を風るのだ”少年がその建物を出ると、大勢のひとが通りすぎ、笑うものもあった。だが人々は口々にいった。
“性格が悪いと、あんな無様な顔になるものね”
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