奇跡的に退屈

ショー・ケン

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奇跡的に退屈

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 そこはある王級のような屋敷の、朝食の様子。豪華な料理がならび、きらびやかなドレスをきた少女が、いま、座席についた。
「セバスチャン」
「はい、エルお嬢様」
「今日はお父様お母さまは?」
「はい、今日はお仕事が早く、すでにおでかけでおいでです」
 一口食事にてをつけ、執事にむけて、ハンカチを放りなげる少女。
「あなた、また味を濃くしたのね」
「え、ええ、それはお嬢様のいいつけで……様々な味を毎日濃いめにためしたいと、豪華な食事とくらしが窮屈なので、少しでもごまかしをしてくれと」
「まったく、私は、あなたがもっと賢いと思っていたのに、私は毎日こんな広いお屋敷にお父様とお母さまと私だけで、退屈だったらありはしない、それに、いい食事がとれるのはいいけれど、舌が肥えてしまってどんな料理おおいしいと感じないわ、もっと、私の意見を汲みなさい、私は庶民の生活をしたいし、庶民の生活をしりたい、かつては私は、私の両親はそれを許してくれたはずだわ」
「と、いいますと」
「まったく、あなたは私の言葉の裏をしりながら、あえてくみ取らないみたいね!!」
 セバスチャンは深く頭をさげながら、しかし、にやりとわらった。
「かしこまりました、ではしばしの間“現実”へもどってはいかがでしょう」
 すると強制的にその少女は現実にひきもどされる。バチバチと脳に電流が走り、ヘッドマウントディスプレイが外れた。
 少女は数日ぶりに自分の“現実”を思い出した。貧乏な生活に疲れて、学校をしばらく休んだ。それというのも、両親と進学の事で喧嘩をしたのだ。

 少女は狭い部屋に住んでおり、その部屋をでると母親がいた。夕食の準備をおえ、彼女をまっている貧相な、疲れ果てた顏の母親が。すぐにその母親にだきついた。
「お母さん!!ごめんなさい、私はもう、学校を出たらすぐに働く、これ以上、お母さんに無理をさせないわ」
「エル!!!」

 実はこのメタバース用の端末もソフトも、すべてこの国の富裕層から学生へ無償提供をされたものだ、それも貧乏な学生に限り。それは善意と語るものもいるが、実体のほとんどは違った、このメタバースを体験した学生たちのほとんどが“裕福な事へ退屈や飽き”を感じる。つまり自分の将来を諦めるので、格差への抵抗力が失われていくのだった。
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