変わり者

ショー・ケン

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変わり者の老婆

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小さな頃、近所に変わり者のお婆さんがいた。明らかに呆けたような表情で、いつもブツブツいって家の前を歩き回っている。通学途中の脇道でそれをみるので皆面白がったり、気味悪がったりしていた。けれど私は、そのお婆さんの事を他人ごととは思えなかった。

気の強い友達のAちゃんが、ある時おばあちゃんに話しかけようと私にもちかけた
。私が断るとCちゃんに掛け合って二人で話しかけることにしたらしい。私はやめておいた方がいいと何度もいったが、私は何も変えられない事をしっていた。

AちゃんとCちゃんは、ある日の夕方そのおばあちゃんに話しかけた。おばあちゃんは時折こちらをみて反応するが、それでもずっと自分の独り言のようなものをぶつぶついっているだけ。Cちゃんはおばあちゃんの家の奥から、人影がこちらを見ているようなきがして、Cちゃんは、帰ろうとAちゃんをうながす。けれどAちゃんはそのおばあちゃんの独り言を聞き取ろうと耳をすました。
「ハタヤがあるでしょ、あそこでね、3週まわってね、“クネキネル”というとね、私とおんなじになれるよ、怖いものを見れるよ」
 おばあちゃんはそんな事を延々と繰り返していっている。Aちゃんは面白がって、それを試してみる事にした。ハタヤは近所の駄菓子屋だ。その日、すぐにAちゃんはCちゃんをつれだってそこで、おばあちゃんの言う通りにした。

「クネキネル、クネキネル、クネキネル」
 二人で唱えると二人は顔を見合わせた。何も起きないじゃん。そういって、退屈そうに帰宅して、バイバイとてをふった。そのすぐあとだ。Cちゃんは大通りの向こうに自分の家があったのだが、その通りをわたるとき、信号無視のトラックにはねられて、死んでしまった。

Aちゃんはその様子をふりかえり、みてしまった。なにしろすさまじい音がしたのでふりかえるとその惨状があったのだ。

私はこの知らせを受けたあと、納得して、すぐにAちゃんの無事を祈った、けれどAちゃんは翌日から学校にこなくなった。私はすべてしっていたのだ。あのおばあちゃんに妙な霊感があるということも、おばあちゃんの後ろに何か良くないものが取りついているという事も。私はあの老婆を見るたびに彼女の幼少時代の記憶が頭の中にうかんだ。私とは違い、友達に自分に霊感がある事を話していた彼はいつしかいじめられるようになり、やがて、心を病んだのだ。彼女は人に危害を加えなかったが、周りの人間や、そうでないものは彼女の才能を悪用し続けたのだろう。

大人になった今、私は、Aちゃんの入院している精神病院を訪れる。けれど、彼女の言葉を聞くことはない。彼女は今も、おばあちゃんの独り言と同じ言葉をつぶやき続けている。私はなんとなく知っていたのだ。霊感を持つものが、たとえぼけたとしても、その後ろにつくものに意思があり、その人の霊感が確かなものならば、悪意をもったその背後の霊が、霊感を持つものを操って人を不幸にすることなど容易だという事を。



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