生霊使い

ショー・ケン

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生霊使い

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 Aさんの体験した話。

 小学生の頃、物静かなB君という友達がいた。入学したての頃は貧乏でもちものがすべてボロ臭く、服もボロボロで皆からいじめられていたが、いつのまにか金持ちになり、Aさんも彼の友人になった。最も、Aさんが彼と同じクラスになったのは今年からで、かつての彼とは絡みがなかったのだが。

 あるとき、いじめっ子グループの3人が、放課後B君に絡んでいた。Aさんは、ちょうどその場にいなかったのでしらなかったが、下校途中の河原でずいぶんけられたり殴られたりしたらしい。

 B君は、力がよわかったので抵抗しなかったが、B君は最後にこんな事を言い残した。
「僕の生霊が、お前たちの家にいくぞ」
 一瞬、3人はぞっとしたが、ただの捨て台詞だと思いきにしなかった。

 しかし、その数日後、クラスである噂がたっていた。いじめっこリーダー格のCのある噂である。いじめっ子グループのCだけが、A,B君と同じクラスだった。それはこういうものだ。
「彼の家は貧乏だが、息子に恥をかかせないために、悪い商売をしている、スリをしているらしい、その手癖がうつって、C君はモノを盗むのだと」
 確かに最近、クラスでモノを盗まれる生徒が多かった。C君は噂にたじたじになり、時折学校を休むことになった。噂は事実ではないかと疑われたが、そこでなぜだかB君が彼を庇ったのだ。
「疑わしきは罰せずだよ、冤罪もありえるから」
 誇らしげに彼は笑うのだった。

 しかし、順風満帆にはいかなかった、B君は、いじめっこのD、Eに目の敵にされたのだった。A君はそれを見つけるたび、彼らを追い払ったが、すべてはカバーできなかった。ほとんど毎日いじめたおされ、やがてB君は何日も休み、ほとんど不登校になった。

 その頃、C君の家は悲惨だった。なぜ不登校になったのかわからずC君を責める母親。
「どうしてなの!!あんたにだけ恥かかせないようにいいもの着せたり、与えたりしているのに、どれだけ苦労して……」
「でも……盗んだんだろ?」
「!!?」
「どうしてそれを」
「Bのやつ、前々から“霊感がある”っていってた、あいつの親は拝み屋だと自慢している、俺がちょっかいかけたら、あいつ調子にのって“生霊を飛ばす”って、だから、全部ばれたんだ」
 そういって、C君は、カバンをとりだすと、自分がクラスから盗んできたものを机の上にならべた。
「シャーペン、消しゴム、人形、キーホルダ―」
 B君は、顔を上げへらへらと笑いながら言った。近頃めっきり顔を伏せていたので気付かなかったが、その顔は青ざめ、目が充血し、ひどい隈ができていた。
「俺は、かーちゃんの真似をしただけだ、俺は悪くねえ」
 本当ならばそれを返してきて、B君に謝ってくるようにいえと言いたいところだったが、母親は、憔悴したC君の様子に何も言い返せなかった。

 その夜からだった。母親が深夜、C君の声がするので体を起こし、二階の彼の部屋へと向かうと、彼は、ベッドの横、部屋の隅っこでガクガク震えている。
「Bが、Bがいるんだ、Bが!!」
「どこにいるの!!」
「今、窓の外にいた!!」
 母親が窓に近づき、下を見下ろすも、そばには高い木がたっているだけだ。 
「何もいないじゃないの」
「いたんだ!!いたんだ!!俺は、あいつに謝らなきゃ、DとEを止めろっていわれたんだ!!」
「わかった、わかったから、明日、お医者にいきましょ、きっと幻覚でも見ているのよ……」
 翌日、医者に行っても何もわからなかった。困り果てたC母は、B君の両親について調べ始めた。だが、ご近所さんをあたっても“拝み屋をしている”という話はなく“IT関係の仕事をしている”というばかりだった。

 病院にいってから数日、C君意外の家族の過ごす一階でも奇妙な事がおきた。夜中、誰もいないはずなのに電気がついていたり、誰も使った覚えのない食器類が散乱していたりする。

(何かがおかしい)
 ふと確信じみたものを覚えたC君の母親は、その夜、C君を自室のベッドに寝かせ、C君の部屋で眠っていた。

「寒いよ、寒いよ……」
《ビクッ》
 どこかから声がする。そんなわけがない。と思うも、しかし体は異常を感じていた。確かにおかしい。窓に目をやる、かすかに窓があいていた。
「寒いよ、寒いよ」
 びくびくしながら体を起こす。窓をしめ、ベッドにもどろうとすると、何かにあしをとられ、転んだ。
《ドスン!!》
 足元には、冷たい水が飛び散っていた。
「寒いよ……」
 ふと違和感に気が付いた。クローゼットががたがたと揺れている。その中に、もし恐ろしいものがあったら……そもそも何か、とても獣臭い香りもする。だが、C君の落ち込んだ様子を思い出し、C母は、壁際に立てかけてあったバッドをてに、クローゼットの扉をあけた。
「おらああああ!」
 そこには、体育座りで縮こまるB君がいたそうだ。
「ひ、ひぃいいいいい!!!」
 しかしさらに驚いたことには、B君はクローゼットからおりて、ドタドタと階段を降り、玄関からでていったのだった。

「ほ、本物?どういう事?」
 それから数週間がたったころ、B君の両親が逮捕された。容疑は、窃盗罪。B君の同級生の家に忍び込み、パソコンなどのパスワードを盗み、収入を得ていたらしい。小柄なB君は、同級生の家に忍び込み、家に隠れすみついて、情報を盗む、使いパシリをB君はしていたのだ。

 クラスメイトは噂した。“生霊を飛ばせる”って、そういう事だったのか。B君は、その後すぐに親戚の家に引き取られていった。

 その後AさんはどうしてもB君と連絡がとれずに、社会人になったいまでもこう思っているそうだ。
「もし彼が、“霊感がある”なんて嘘をつかなければ、彼は“生霊を飛ばせる”なんていわなかっただろうし、そしてもし彼が、いじめっ子にからまれなければ、“潜入した家で見たことを白状しなくてもよかった”かもしれない。そしてもし僕が、彼の罪に気付き、やめるように説得できれば、こんな形にはならなかったのではないかと」

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