VR

ショー・ケン

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VR

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 あるゲーム好きの少年がいた。VRゲームにはまっていた。しかし近頃熱中しすぎているために、母親からきつくしかられていた。
「現実と空想の区別がつかなくなるわ!」
 しかし、少年はVRゲームを禁止されたにもかかわらず、深夜にひっそりとゴーグルをつけて、VRゲームにいそしむ。母親はそれに気づいていて、しかしいくら言っても聞かない、“区別くらいつけられる!!”と息子がいうので、母親は、こっそりそのゲームを自分も体験しようと思った。

 それは誕生日の前日のこと、ゲームを起動するとすぐに見おぼえのある画面が起動した。VR世界上に、何も変わらない我が家がそこにあり、2年前に死んだ夫の姿がそこにあった。母は涙を流し、彼にハグをした。

 その翌日、息子は母親にVRゴーグルを渡した、そしていった。
「母さん、プレゼントだよ」
 しかし、その目論見に気づいていた母親は、息子をだきしめていった。
「あなたが、仮想世界をつくってくれたのね、ありがとう、ママが、パパがしんで苦しんでいたから」
 息子はその日早くに床につき、母親も深夜に仕事を終え、リビングでそのまま寝てしまった。母親は深夜めがさめて、自分がゴーグルをつけていることに気づく、人のいない部屋で足音がひびいている。
「どこなの、パパ、どこ?」
 しかし足音は止まず、ゴーグルをはずすことにした。目の前には、半透明な夫の姿、夫は、手を伸ばし、ハグをする。

 かと思いきや、妻の首にて両手をちかづけ、絞め殺そうとする。幻想であるはずが、妻は後ろに転倒し、キッチンのほうへ後ずさりしていく。
「やめて!!何をするの!!何を!!」
 夫は叫んだ。
「お前は忘れたのか!!忘れたふりをしているのか!だが息子はしっている、お前のように幻想をみていない、なぜなら、あの日、すべてをみていたからな!!」
 
 そう、2年前のあの日。夫婦喧嘩が深夜まで続き、妻はその時の怒りにまかせて、夫に大量にそれとわからぬ薬物をとかした水をのませた。そして夫は死んだ。妻は、そういった知識が豊富で、今の今まで彼女が犯人だと誰も知らないはずだった。

翌日、息子が起きると母は毒薬を煽り死んでいた。息子は、VRゴーグルをつけ、一日中遊んでいた。
「これで、ずっと一緒に過ごせるね、父さん」


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