人形

ショー・ケン

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人形

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 Aさんは小学生の頃やんちゃな女の子で、クラスのみんなの持ち物、アクセサリ、文房具などをぶんどっては、皆を服従させていたという。腕っぷしもつよく、親が金持ちだったのもあり、おしゃれだったし、高価なアクセサリーやポーチなどをもっていて、ファッションセンスもあったために皆は、困りながらも彼女を崇拝していたのだという。

 Aさんは家に家族がいない事がほとんどで、両親ともに忙しく国内外をとびまわっていた。その寂しさのせいだというが、男子女子かまわず、きにいらないことがあるとけったり、いちゃもんをつけたりしていた。カリスマ性もあったのでだれもいじめにケチをつけなかったのだ。

 そんなある時、Aさんは、クラスでもおとなしいCさんを見つけた。朝の会が始まるまえのことで、がやがやしている中で突然AさんはCさんを見つけて叫んだ。
「おい!!C、お前またお人形遊びしているのか?」
 皆はひそひそいいながら、Aさんをとめようとしたが、しかしAさんはCさんに近づいていった。ぼろぼろの服、痩せたからだ。クマのひどい顔。いつも怪談本を持ち歩いているオカルト少女のCさんは皆近寄りたがらなかった。

 唯一、学級委員のBさんだけがいつもCさんの傍にいて楽しくはなしていた。
「おい、B、こんなやつの傍にいてたのしいか?」
 Aさんは、BさんがCさんを憐れんで無理やりかまっていてあげているとおもっていたので、突然Cさんが手に持っていた人形をつかむと、それをみんなに見せてまわった。
「薄汚い、人型、顔もいびつだし、変な人形だなあ」
 Bさんが叫んだ。
「やめて!!それはCさんが、人のために!!」
 しかし、Aさんがその人形をよく見ると、右足がやぶけて綿がでている。Aさんは驚いた。そう、Aさんは先日まで階段からおち右足を骨折して、最近治ったばかりだったのだ。

 Aさんですらそのことが気味悪くなり、一瞬たじろいだが、しかし、皆がみている手前、こんなことに驚いていてはいけないと思い、それを奪うと、ポケットにいれて、席についたのだった。皆はきょとん、としていた。

 Aさんの頭の中でその時ぐるぐるまわっていた思考は、Cさんが「ほんもの」ではないかという疑念だ、彼女の母親は霊能者で、本当に困った人を格安で助けているという。Aさんにはそれでビジネスをして稼がないことの意味が理解できなかったが、あの“人形”の様子を見るに、Aさんは自分が呪われているのではないかと思い始めたのだ。

 あるとき、Aさんが部活に向かう途中で教室に道具を忘れたのを引き換えしたとき、Aさんの机の傍に男子二人がたむろしていることに気が付いた。
「おい、何を」
 みると、AさんがCさんから分捕った人形をひっぱったりしてあそんでいる。
「お前ら、一体何を」
 Aさんが語気を荒げると、二人の男子はいった。
「い、いやあ、気味が悪いとおもって」
「そうそう、だって、Aちゃんがそんなの信じてるなんて、おかしいじゃないか」
 Aさんは、教室の入り口で棒立ちをしていたが、その時丁度Cさんが何か用があったのか、そばを通りかかった。Aさんは皆がみている手前恥をかくわけにはいかないとおもったのか、男子たちから人形をとりあげ、そしてCの目の前でその人形をブチブチと引き裂いた。そしていいのけたのだ。
「お前の呪いは失敗だ、おまえはこいつをいためつけて、その呪いを私にかけようとした、これは藁人形と同じものだろう?」
 Cさんはわなわなと震えて、そして廊下で丸くなって震えていた。その様子をみていた男子二人はなぜかAさんを指さし笑っていた。
 
 その翌日だった。Aさんの祖父が亡くなったのは。Aさんは学校を休み、顔を真っ青にして、家族と祖父の家にむかった。その道中でAさんはすさまじい高熱をだし、母親は、肩を脱臼し、父は持病の心臓病が悪化し入院。

 あまりにも不幸が続いたので、祖母が、いわゆる“霊的”な事に精通している人で、拝み屋さんをしっているからといって、母とAさんにその人を紹介してくれた。

 拝み屋さんは、パーマのかかったどこにでもいそうな平凡なお婆さんで、目を細め、綺麗に和服をきて、葬式がおわったあとのAさんの祖父宅にあがりこんできた。そして、Aさんをみるなり、顔に手を近づけてきていった。
「あんた、呪われているねえ……」
 Aさんは、泣きだしてしまった。そして隣に母がいるのに、今までの全てを白状し、この呪いの犯人であるCの事を打ち明けた。
「違うねえ」
「え?」
 母親が聞き返すと、拝み屋はいった。
「その子じゃないねえ、犯人、もっと数が多い、そうだねえ、1クラス分くらいだよ」
「!!」
 拝み屋が、厄払いをすると不思議とAさんは体がかるくなり、その父の調子もよくなりすぐ退院の運びとなった。

 再び学校に通い始めたAさんは、以前とは違う陰鬱で静かな調子で、クラスの全員が驚いていた。あるとき、放課後に家の用事があったので帰る準備をしたが、トイレにいきたくなってまた教室に戻ってきたとき、クラスの5人くらいの男女が何かを話していて、聞き耳をたてた。
男1「むかついたよなあA」
男2「女のクセにな」
女1「ちょっと、それは関係ないでしょ」
女2「でもおとなしくなってよかったよね」
女3「そうそう、私たちの大事なものをうばって、ぶすのくせにえらそうに」
 その時Aさんは初めて自分が威張っている間に、クラスに派閥ができ、静かな別のカーストができていたことにきがついたのだ。頭を抱えて座り込むと、彼らは続けた。
男1「だから、Cのもってた魔術本、利いただろ?あの通りに呪いをかけただけだ、Aの髪とか、唾液とか、持ち物とか、触りたくなかったけどな」
女1「あのとき、Aに仕返しをしちゃだめだってかばったのは、Cだけだったよね」
 そういって、笑っている。思わず気持ち悪くなり口を押えると、後ろにハンカチをもったBと、そばにCがたっていた。

 3人は、クラスの5人のやつらが帰るまでに保健室へ向かおうといった。その道中で、Bがことの顛末を話してくれた。
「あなた、“呪いの人形”だとおもったんでしょ?Cちゃんがもってたの、たしかにあなたをもしたものだけど、あれは“身代わり人形”だったんだよ」
 Aは、恥ずかしくなり、そして自分が情けなくて、泣きながらCにいった。
「どうしてお前は、お前の魔術の本をつかったからって、お前がそんな責任を負う事はないだろ、私はお前にひどいいいがかりをした、クラスのみんなにだって」
 Cは、もぞもぞしていたが、かわりにBが答えた。
「違うわ、あなたは誤解している、あなたは、たしかにひどい事をみんなにしてきたけれど、Cちゃんをいじめたりはしなかったし、むしろかわいそうだとおもったのか、いつか、Cちゃんがクラスのみんなにからかわれてるときに私にいったでしょ“委員長だから、助けてやんなよ”そういって私がかばいにいったあと、あなたは何気なく皆の傍に顔を出して、いじめをやめさせたわ、Cちゃんと私は今では大親友、あなたのおかげだって、Cちゃんはいつも言ってる」
 Aさんがないていると、Cさんはその手をにぎって、いった。
「大丈夫、やり直せるよ」

 その後、三人は仲良くなり、大人になった今でも連絡を取り合う仲だという。Aさんは人がかわったように人に気を使うようになり、看護師になった今、患者さんに困った人がいても、もしかしたら、その人の事を必要としている人もいるかもしれない、と、思慮深く考えるようになったという。
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