ココロ可視化代理人

ショー・ケン

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ココロ可視化代理人

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 私は、絶望していた。人のために働く“ココロ可視化代理人”に就任してから、他人の代わりに、問題のある職場につとめ、その内部実体を把握する。だがたしかにここはブラックな職場だった。四六時中仕事があり、眠れるのは3時間ほど、休憩時間にシャワーをあびて、ごはんをたべ、自分の時間などとれない。
 私はもともと、カウンセラーにあこがれていた。人の心をケアするカウンセラーだ。人が人を犠牲にすることに疑問をもち、人が人を傷つけることに疑問を抱いていたからだ。この世からあらゆるハラスメントは撲滅すべきだ。だがその私ですら、様々な知識を蓄えた私ですら、この職場は我慢がならない。そして上司に、件の職場の問題を報告し、さらにはこの仕事、公共の仕事である“ココロ可視化代理人”を辞職する旨を伝えた。

「やめる事はできないよ」
 上司は顔色ひとつ変えずいった。
「なぜですか?」
「君は、人間が他者からうける精神的苦痛を可視化するための存在だからだ、ありとあらゆるハラスメントや、人権侵害からね」
「それでも、私にも人権があります」
 上司はたちあがし、自分の背中を手の甲でおさえながら外を見上げていった。私はこうなると上司は考え事をしながら、話し出すまで時間がかかると知っていたので、
周囲を見渡す。だれもが暗い、醜い顔と表情をしている職場。無理もない、なぜならこんな仕事をしていれば、そのような醜悪な見た目になるというものだ。そしてこの悪臭だ。まるで豚小屋のようだ。
「その人権こそがやっかいものでね、あるとき、確かに開発されたのさ、人間の精神的苦痛や鬱の状態を緩和するための機械が、しかし、問題はそのあとだ、たとえばパワハラだ、もしその鬱状態を克服したとして、その後また同じ状況にあり、パワハラ自体が改善されるのか?もしすぐに治るとしても、どうして被害者がそのための療養の費用を支払わねばならぬのだろう“人類”は問題視した、つまりだ、病気を治す必要があるが、しかし人間の問題も可視化されるべきだと、組織の体質など」
「では私は、この異常な“身代わり”を問題視します、なぜわざわざ、人の身代わりとなり、実体調査をするのが私である必要があるのでしょうか」
「それはできない、君はこの仕事をやめようがない」
「なぜ私だけ例外なのですか」
「君が人造人間だからだよ、ブタの細胞からつくられ、最後には食用にされるのだ」
 私は絶望した、やはり人間は、他者を犠牲にしなければ生きていけない存在なのだ。
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