予定にない予知夢

ショー・ケン

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予定にない予知夢

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 あるスポーツマンの高校生二人組AとB。Aには、その頃悩みがあった。些細な事というか、奇妙な事だったが、Bの夢をよく見るのだ。別に好意があるとか、そういうことではない、Bが死ぬ夢をよく見る。 

 その頃二人はクラスのマドンナCをめぐって喧嘩をしていた。どっちが先に告白するかとか、そんな些細な事だ。

 このマドンナも変わった子で、勉強もスポーツもできるが物静か。それでもあふれ出る品やオーラから、一目おかれ、マドンナとして認識されている。

 Aが見る夢というのは、Bが車にひかれる夢なのだ。自分がなんとか彼をとめようとするがBが黒い人影をおって車道に走り出して、ひかれてしまう。朝起きて汗がだくだくで目が覚める。しかし目が覚めるともう少し夢のなかに記憶を忘れてきたよう名もやもやした気分になり目覚める。

 あまりに続くので彼は、マドンナに話してみた。彼女はクラス委員長でもあり、こうした相談もおてのものなのだ。放課後、二人で話をした。
「まず問題を解決してから、その夢の事を話したら?」
「問題っていうのが……」
 そういいかけたとき、マドンナのCはその場所からいなくなっていた。
「君のことなんだけどなあ」

 その日も部活が終わるとAとBは一緒に帰宅する。だがお互いに何もしゃべらない、喧嘩をしてからほとんど口も利かないが、お互いルーティーンを繰り返している。

 そのとき、いつも夢でみる交差点に通りかかった。いつも通り、だとおもったがその日は奇妙だった、あまりにも、人通りや町の様子、雰囲気がいつもと違う、夢とそっくりだったのだ。その時だった。小柄な黒い影が、歩道にあるきだす。
「まずい!!」
 と思った。というのもその影の事ではない、Bがそれを追った必ず車道に飛び出すはずだ。体が自然とうごきBを制止し、Aは焦ってかれより先に車道に飛び出そうとした。そして勢いよく地面をけろうとした。その時だった。Aのサッカーボールが先に車道にとびだし、車がそれを跳ね飛ばしていった。ふと、現実にかえる。Bがどなる。
「おい!!何やって!!!」
「お前こそ!!なんで車道にでたんだ!!」
「それは!!」
 BがAに語ったことにAは驚愕した。Bも全く同じ夢を逆の立場でみていたのだ。いったいこの夢は何だということになった。直ぐ傍のカフェによって、二人は話をすることに。

 向かい合って沈黙。
「もっと早く、お前にあの事を謝っておけば」
Aが陳謝する。
「何が?」
「抜け駆けして告白しようとしたことだ、俺たちは二人とも自分でいうのもなんだが、お前は野球、俺はサッカー部のエース、同格といわれているじゃないか」
「ああ」
 沈黙が流れる。
「二人で告白しておけばよかったな」
「はは」
 Bはくだらない冗談に笑ってくれた。

 だがAは、あの事故の時に車道を隔てた向こう側にみたものを思い出し、語りだすか、やめようかとまどっていた。
「あの時……」
「お前もみたか?」
 Bもいいかけた。
「俺たち、あの人を狙うのはやめたほうがいいのかもしれない、彼女はきっと……」
 
 そのときカフェの奥のトイレから人がでてくる。それに二人は驚愕した。すれ違いざまに彼女はいった。
「諦めてくれたならよかったわ」
 その手には、怪しい魔術本のようなものが握られていた。たしかにオカルト趣味があるという噂もあったが、知的な子なので大してきにしていなかった。今の今までは。
「C!!」
 とAは呼び止めようとしたが、言葉がでてこなかった。AとBは、夢の中で忘れていた記憶を思い出すのだ。それはCが、かつて女子たちにいじめを受けていた記憶であり、そして彼女自信の心の声だった。
「私は、本当は人と関わるのも目立つのも苦手、そのせいで嫌な思いをたくさんしてきたから、あなたたちの知らないもう少し小さな頃は、私はちやほやもされなかった、少し目立つ事をするだけで、他人にバカにされたものよ」
 そしてもう一つの記憶、そうだ。彼女はカースト上位のAとBが彼女に告白すると意気込んでいたのをあるとき教室を通りがかる時に聞いていたのだ。
 
 彼女は、カフェからでるときもう一度振り返っていった。
「私に殺される勇気があるのなら、告白してもいいわよ、それで噂にしてあなたたちは盛り上がるでしょうね、でも、私は、あなたたちがどれだけ人気があろうとどうでもいい、静かに暮らしたいだけなの、あなたたちみたいに人気があってうぬぼれている人間が嫌いなのよ」
 そういって、カフェを出ていくのをただただ二人は見送った。
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