放任主義

ショー・ケン

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放任主義

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A子さんが大学生の頃、近所の公園でよくある小さい女の子をみかけた。といってもその子はいつも一人で、夕方ごろまで一人で遊んでいる。その頃付き合っていた彼氏はよく彼女のアパートにきていたので、二人でその子をみかけてはかわいそうに思っていた。

ある休日に、アパートで彼氏とすごしていて近所にかいものにでかけるときに、隣の部屋にすむ水商売をしている女性にであった。子供がいるらしいとは聞いていたがその人が手を引いていた子供こそ、その子だった。

そのうちの子だと知ってからは、遅くに公園で見かけるたびに、危険な目に合わないように、挨拶をして暇なときは遊んであげていた。彼女が遊び疲れたら家にかえす、しかし、母親はというとたまに家にいるときに彼女を送り届けに行くことがあっても、彼女が家にかえり挨拶をしても知らんぷり。
 彼女が家の玄関をあけて、彼女がいるのをみつけて
「娘さんを送りとどけにきました」
 といっても返事もしない。

 そのことで一度はっきりとものをいおうとおもって休日に菓子折りもってその件について話をもちかけたところ。
「うちは放任主義なんで」
 と話すばかり。妙な家だなあとおもっていた。

 あるとき、そのアパートに前すんでいたという友人と遊ぶ機会があった、それとなく現状を話すと、友人からこんな話をきいた。
「その号室(女と子供が住んでいる部屋)には、すごく真面目な夫婦が住んでいるときいていたけどねえ、旦那さんもバリバリの大手の営業マンで、妻のほうも公務員をしているとか、小さいお子さんもいたねえ」

 その夫婦と現在のあそこに住んでいる女性との落差が納得がいかず、もしかしたら何らかの事件に巻き込まれた、ひっこした、あるいはあの子は誘拐、隔離されていたりして。なんていう巧みな妄想をしてしまったが、その週間後にすべてのつじつまが合うことがおきる。

あるとき、少女がいつものように夜中まで公園にいたので、あぶないよ、とてをのばした。その時はじめて気づいた。少女の体にふれたことがなかったことを、少女の手に振れると、少女の手はすっと通りぬけてそしてその体は透明になっていった。そして少女は、満面の笑みでそこから姿をけしたのだった。Aさんはそのとき、やっと事態を飲み込んだ。

 その数日後。例の女性の夫が殺人の罪で捕まったらしい。もともと妻に暴力をふるい、子供を部屋にとじこめて無理やり一日中勉強を教え込み、虐待じみた暴力をふるった。あるとき酒によって逆上し、子供を殺害しうめてしまったらしい。それも、1年前のことだと。
 妻は取り調べでこう話した。
「子供の教育方針でもめる事はしょっちゅうでした、私が彼の束縛から彼女を解放していれば、こんな事にはならなかったのでしょう」

 Aさんは、すぐそのアパートをひっこしたが、奥さんの事を思い出した。
「私、放任主義なので」
 彼女も少女の幽霊をはっきりとみていたのだろう、あれは、生前の子供にたいする精一杯の償いだったのかもしれない。





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