霊感

ショー・ケン

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霊感

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 A子さんは、霊感のある女性で、学生時代、同じクラスにB男という霊感少年がいた。彼はお調子ものでいつもへらへらしていて、でもクラスでも人気があった。そんな彼が霊感があると言い始めたのは、ある夏の頃だった。

「本当はばれたくなかったんだけどね~」

 なんてへらへらしている。



 A子さんは、人の気もしらないで、と思う。B男は除霊と称して生徒たちに、格安でお祓いをしてやっていたがA子さんは見えていた。幽霊は払えていないことを。彼は……ペテンだ。そう感じていたが、ある時A子さんの親友のC子が、彼にお祓いをされたといって、ニコニコしていたのでなんだか腹が立って、あるとき放課後に教室に呼び出した。



B男はその時もへらへらしていた。

「何か用?」

「あんた、霊感なんてないでしょ、幽霊がいっぱいいるのに除霊しない……」

「シッ……くそ、君の事はよくしっているけど、なら君もしっているでしょ」

「??」

「あいつらについているのは大した霊じゃないんだ、本当の霊は、見えると気づかれる事自体がまずい、だから僕は“霊をでっちあげ、でっちあげて除霊する”」

「じゃあなんで……」

「あいつら一体が気づくと、他の霊も気づいてよってくるから」

 その時B男はつらつらと愚痴を話し始めた。別に人気になりたくなって人気になったわけじゃないとか、無理やり心霊スポットにつれてかれたら本当に危ない霊がいたから遠ざけるためにいつもの冗談まじりで霊感のある人間を演じたとか、実際に霊感はあるとか。



「君、僕より霊力があると思っているみたいだけど、それは違うよ、君の背後に霊がいる、霊力を使うたびに、君は背後に霊を増やしている」

「そんなわけないでしょ!!」

 といいかけたとき、B君は続けた。

「君、生霊ってみたことないでしょ、君はこっそり、僕が除霊した人間の相談にのって、霊を払っていたみたいだけど、君が相談にのってあげた人間たちの妬みや、羨望が集まって君の背後にびっしり集まっているよ、僕がでたらめをいったあとに不幸な人間を助けたつもりみたいだけど、変わりに君が不幸になったでしょ」

 A子さんはぞっとしたという。確かにA子さんは、生霊といったたぐいのものは見たことがないし、彼の言う事はあたっていたからだ。

 彼がA子さんに手を伸ばす、すると、直接ふれてもいないのに、彼女の肩は軽くなった。それに、最近感じていたいらいらや、彼に対する敵意がふっと消えていくのを感じた。

 彼は続けて、A子さんの不幸をいいあてた、身内の病気、自身の怪我。ペットの異常な行動。すべてあたっていた。

「君も、本当に危ない相手、手に負えない相手には、霊感がある事がばれない方がいいよ、最悪対峙するにしても、相手は少ない方がいいし、絶対に手に負えない相手は無視することだね」



 初めて、自分以外の霊感持ちの存在を自覚し、A子さんは怖くなった。それにもまして怖かったことが、自分自信、B男の人気に不満をもち、それでもでたらめを言っている事にいらいらしていた、それが嫉妬という気持ちに気づいたことだった。

“自分は本当に霊感があるのに、真摯に向き合って力を使っているのに”

 と、どこかで自分の力を誇示したい気持ちもあった。それから、A子さんはB男に対する態度を変え、本当に手に負えないほどの霊や体調不良が続く時には彼を頼るようになったそうだ。
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