刑務所にて

ショー・ケン

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刑務所にて

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 看守が囚人に尋ねる。
「お前、なんで刑務所を出たがらないんだ?」
「なぜって?いつも話している通りですよ、復讐を終えて、自分の居場所がなくなった」
「しかしなあ」
「はあ……」
 看守は何度も聞いた話を思い出していた。

 この囚人。いつもしょうもない軽犯罪で刑務所にくる、つまらない盗みや強盗や恐喝。だが本人いわく彼は“人殺し”だという。何でもある方法で、人をそそのかしてある一家を全員惨殺させたのだという。

「あの家はなあ、俺の家族をむちゃくちゃにしたんだ、悪い噂やでっちあげで父の事業を台無しにし、父の友人、知人、協力者をみたら、マフィアを使って脅した、同じ業種で、近所に住むもの同士、父の名声が気に食わなかったのだろう、おかげで父はおいこまれ、自信を喪失、母はどこかの男と逃げて、妹は精神を病んでしまった、事業が失敗したあともしつこく嫌がらせをしてきたからなあ、俺もひどいいじめにあったし、ろくな青春を歩んでこられなかった、不名誉のせいで就職にも影響がでた、そこで復讐の方法を思いついたんだ」

 その家には、心を患った三男がいた。三人兄弟の末っ子で、家族は老婆と父母の6人だ。彼はその末っ子に目をつけ、彼の働く施設に忍び込んだ。そしてある実験をした。それは、その末っ子に“催眠術”をかけるという実験だった。

 うまく行くはずはないと思っていたが、これが案外すんなり通り、そして、目論見通り、その末っ子はある日事件を起こした。両親、祖母、二人の兄を惨殺し、家に火を放ったのだ。

「あいつの体にはあざがたくさんあってそれだけでわかった、家族に碌な扱いをうけていないってな」

 時は現在に戻り、看守は再び尋ねる。
「居場所がなくなったのは、本当にお前だったのか?」
 ふと、驚いたように顔をあげる囚人、その体はやせ細り、何かに怯えているようにみえた。そして、ぽつり、といった。
「ああ、そうですよ、奴は、俺の暗示により罪を犯し、そして罪は精神疾患により帳消しになった、完全犯罪のハズだった、だが、俺は見落としていた、奴の、隠された意思を」
「どういう事だ?」
「俺は、奴に、奴を脅かす“敵”を殺せと命じた、あまりにも奴への暗示と、催眠術の精神支配が強すぎてね、その解除の方法がわからない、もしかしたら家族を殺したトラウマがトリガーになっているのかもしれないが、やつは……刑務所をでると、必ず俺を殺しに来るんですよ」
 看守は、哀れな目で囚人を見下ろした。
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