17 / 41
第17話
しおりを挟む
美術の授業で、なぜだか校庭に出るよう促されて上履きを履き替えて皆ぞろぞろと外に出る。
美術教師が言うには、何でも好きなものをデッサンしてください。との事だった。
一人は中庭の花を描いたり、一人は校舎自体を描いたりしている。
僕は校庭をうろうろしながら描くものを探す。
特に描きたいものが見当たらないなあ。
ふと、校庭の端に目をやると他クラスの生徒が体育の授業でサッカーをしている様だった。
そこに一際目立って活躍している生徒がいる。
圭太だ――。
圭太は中学までサッカー部だった。
全国まで行った事がある強豪中学出身で、プロを目指している程の実力があり、サッカー強豪チームのある高校に推薦も決まっていた程だ。
だけど、中学3年の時に信号無視の車に轢かれ大怪我をする。
その時に足を怪我して推薦の話は無くなり、今の高校へと進学することになったのだ。
ゴールに点を入れる度、調子よくコートを走り回る。ポーズを決める圭太に、同じチームの仲間が圭太を称えた。
楽しそうだな。
描きたい、と思った。
木陰に座って、試合を続ける圭太の様子を観察しながらスケッチブックに描き始める。
走る圭太。
ゴールを決める瞬間の圭太。
そして、楽しそうに全力で笑う圭太。
描き始めると僕も楽しい気持ちになる感じ。
久しぶりに絵を描くのは、すごく心地良かった。
「あー!やばい」
大きな声が校庭に響く。
ボールが大きく弧を描いて、こっちに飛んできた。
ちょうどいい位置にボールが来たせいで、急いで立ち上がってボールをキャッチしようとするけど、やっぱり間に合わなくて避けるしか無かった。
ちょっと僕、ダサいな、と自分でと思う。
ボールもキャッチ出来ないなんて、柊、お前どれくらい運動神経悪いんだよ。
まあ、前の僕の康太だって、そこまで運動神経がいい方では無かったけれど。
急いで立ち上がったせいでスケッチブックが地面に落ちる。
「ごめーん、ミスった!てあれ、柊くん?」
「ああ、うんキャッチしようと思ったんだけど間に合わなくて」
「あはは、あるある。ごめんね、スケッチブック汚れちゃったかな」
圭太は落ちたスケッチブックを拾って土を払っていると、その絵に気づいてじっと見つめている。
「……これ、もしかして俺?てか俺だよね」
「ああ、美術の授業で好きな物を描くように言われたんだよね、それで描かせてもらってたんだけど……嫌だった?」
「ええ?俺?ははっ、俺なんか描いてくれるんだ。嬉しいな。てか絵めっちゃ上手いね。すげー」
おーい、とチームに呼ばれて、圭太が手を上げる。ボールを地面に置いて数歩下がり、軽く助走をつけて思い切り蹴ると、ボールがまた弧を描いてコートまで飛んだ。
そして、そのまま僕の隣に座り込む。
「戻らなくていいの」
「んー、疲れたから休憩」
相変わらず、自由な性格だな。
「サッカー好きなんだね。見てたら分かるよ、すごく楽しそうだったから」
「ああ、まあね、中学の頃は本気でやってたからなあ。プロとか目指しててさ。ま、事故で怪我したのがきっかけで辞めちゃったんだけどさ」
「そっか……」
僕が描いた設定。
だけど圭太の口から告げられると一気に現実の重みがのしかかる。
圭太は昔の僕、康太の気持ちを背負っているキャラだと、今は考えればそう思う。
当時描いている時は、思いもしなかったけど、人生を諦めていた康太の気持ちを圭太に反映させていたんだと思う。
美術教師が言うには、何でも好きなものをデッサンしてください。との事だった。
一人は中庭の花を描いたり、一人は校舎自体を描いたりしている。
僕は校庭をうろうろしながら描くものを探す。
特に描きたいものが見当たらないなあ。
ふと、校庭の端に目をやると他クラスの生徒が体育の授業でサッカーをしている様だった。
そこに一際目立って活躍している生徒がいる。
圭太だ――。
圭太は中学までサッカー部だった。
全国まで行った事がある強豪中学出身で、プロを目指している程の実力があり、サッカー強豪チームのある高校に推薦も決まっていた程だ。
だけど、中学3年の時に信号無視の車に轢かれ大怪我をする。
その時に足を怪我して推薦の話は無くなり、今の高校へと進学することになったのだ。
ゴールに点を入れる度、調子よくコートを走り回る。ポーズを決める圭太に、同じチームの仲間が圭太を称えた。
楽しそうだな。
描きたい、と思った。
木陰に座って、試合を続ける圭太の様子を観察しながらスケッチブックに描き始める。
走る圭太。
ゴールを決める瞬間の圭太。
そして、楽しそうに全力で笑う圭太。
描き始めると僕も楽しい気持ちになる感じ。
久しぶりに絵を描くのは、すごく心地良かった。
「あー!やばい」
大きな声が校庭に響く。
ボールが大きく弧を描いて、こっちに飛んできた。
ちょうどいい位置にボールが来たせいで、急いで立ち上がってボールをキャッチしようとするけど、やっぱり間に合わなくて避けるしか無かった。
ちょっと僕、ダサいな、と自分でと思う。
ボールもキャッチ出来ないなんて、柊、お前どれくらい運動神経悪いんだよ。
まあ、前の僕の康太だって、そこまで運動神経がいい方では無かったけれど。
急いで立ち上がったせいでスケッチブックが地面に落ちる。
「ごめーん、ミスった!てあれ、柊くん?」
「ああ、うんキャッチしようと思ったんだけど間に合わなくて」
「あはは、あるある。ごめんね、スケッチブック汚れちゃったかな」
圭太は落ちたスケッチブックを拾って土を払っていると、その絵に気づいてじっと見つめている。
「……これ、もしかして俺?てか俺だよね」
「ああ、美術の授業で好きな物を描くように言われたんだよね、それで描かせてもらってたんだけど……嫌だった?」
「ええ?俺?ははっ、俺なんか描いてくれるんだ。嬉しいな。てか絵めっちゃ上手いね。すげー」
おーい、とチームに呼ばれて、圭太が手を上げる。ボールを地面に置いて数歩下がり、軽く助走をつけて思い切り蹴ると、ボールがまた弧を描いてコートまで飛んだ。
そして、そのまま僕の隣に座り込む。
「戻らなくていいの」
「んー、疲れたから休憩」
相変わらず、自由な性格だな。
「サッカー好きなんだね。見てたら分かるよ、すごく楽しそうだったから」
「ああ、まあね、中学の頃は本気でやってたからなあ。プロとか目指しててさ。ま、事故で怪我したのがきっかけで辞めちゃったんだけどさ」
「そっか……」
僕が描いた設定。
だけど圭太の口から告げられると一気に現実の重みがのしかかる。
圭太は昔の僕、康太の気持ちを背負っているキャラだと、今は考えればそう思う。
当時描いている時は、思いもしなかったけど、人生を諦めていた康太の気持ちを圭太に反映させていたんだと思う。
24
あなたにおすすめの小説
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
彼氏未満
茉莉花 香乃
BL
『俺ら、終わりにしない?』そんなセリフで呆気なく離れる僕と彼。この数ヶ月の夢のような時間は…本当に夢だったのかもしれない。
そんな簡単な言葉で僕を振ったはずなのに、彼の態度は……
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる