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第10章 種を超えた妖精は夢と舞踊る編

古代戦艦のその後… 万能機動ドック艦【マザーグース】

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「しばらくは…… 運営の依頼で古代遺跡調査をする事になるから、別行動になる。ごめんな」

「大丈夫です…… 私は混沌族あのこ達の古代艦を改修してますから…… 小型万能型パンプキン2番艦【ジャック・オー・ランタン】を使って下さい。何かあれば呼んで下さいね」

「わかった。ありがとう…… その…… 行って来ます」

「はぁい、いってらっしゃい♪」

照れながら「行って来ます」と言ったジノに、頬を紅くして送り出した後……

カナエは、盗賊団母艦の古代戦艦の前にいた。

「主! コイツも【白鳥スワン】と同型艦に改修するのか?」

エミリーの問いに、私は首を横に振りながら……

「違うよ…… このは【ドック艦】に改修します」

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 ~ 大陸と日ノ本の中間 諸島密集海域 ~

「パール艦長! 前方に反応が…… 100メートル級飛行母艦が3、飛行型機神が…… 30体以上!? 囲まれます!」

「この辺りの海賊…… いえ、この場合は空賊ですかね? 退路は?」

「後方の島々に新たな反応!? 機神です!」

「油断しました…… まさか、こんなに早く空の治安が悪化してるとは……」

パールがあずかるホエール1は、王国の王都に物産展で注文を受けたレオン専用ヒーロー型機神【アーサー】とセルフィナ専用ヒロイン型機神【シンデレラ】、親衛隊専用にカスタムしたボーイ型機神とガール型機神を各5体と各追加武装を届けた後……

王都の冒険屋から、日ノ本の温泉旅館ぼうけん屋に交換研修生を届けに向かう途中で…… 運悪く荒くれ者達が隠れて要塞化していた諸島密集海域に入ってしまい、武装集団の攻撃を受けていた。

「私が、フェアリー型機神の【レギオン】装備で道を開きます! その間に、この海域から離脱を……「後方の機神から攻撃! 直撃コースです!」!?」

後方の島々に隠れていた機神達は…… 物産展に出展されていた【大艦巨砲】の機体の劣化コピー機神だった。

物産展で、あの機神を見た武装集団が数体を購入して解体バラし、模造品を作り出したのだ。

無論、大艦巨砲製オリジナルに比べれば…… 大きく性能を落とした機体だが、移動砲台としての攻撃力だけは大艦巨砲製オリジナルに近い性能を誇り…… その砲撃がホエール1に降り注ぐ!

ドッゴーン!
「後部スラスター近くに被弾! 第1装甲部中破!? このままでは高度を保てません!」

「前方に火力を集中! 一かばちか…… 突破をはかります!」

「レーダーに反応! 後方から追撃『ビー!ビー!』!? 艦の上空! 宇宙から来ます!」

ホエール1に迫る砲弾を宇宙からの閃光が貫く!

「パール艦長! 宇宙そらからの突入体からの入電です…… 我、妖精と【マザーグース】…… コレヨリ、貴艦を援護スル!?」

「主様!?」

前方の敵飛行母艦の主砲がホエール1に狙いを定めて、砲撃を開始しようとした…… その時!? ドッゴーン! 閃光が敵飛行母艦の主砲を貫く!

流星が閃光を放ちながら、戦場に堕ちて来た……

流星は、ロング丈のレインコートを着た様な機神だった。

大気圏突入で超高温になって水蒸気を上げるロングコート型の追加装甲を空中で脱ぎ捨パージてながら、フェアリエが現れる……

「どう? フェアリエ……」

「大気圏突入用コート装甲に問題はありません…… 続けて突入して来る【マザー】の為に、敵勢力の掃討をする事を提案します」

「そうだね…… パール達を警告無しで襲う様な連中は、どうせ、ろくでなしだから掃除しようか?」

「了解…… クローゼットシステム機動します」

フェアリエがクローゼットから、完全武装フルドレスを取り出して装着する…… 私は、音声オンして敵に語りかけた。

『さあ…… 覚悟は出来てる? 討って良いのは……〝討たれる覚悟がある奴だけだ〟……って、黒い皇子様が言っていたよ?』

『全武装のロック解錠…… ターゲットを…… ロックオン……』

妖精フェアリエ…… 乱れ射ちなさい!』

全武装発射フルファイヤ!』

その後…… 大破して海を漂う敵飛行母艦の艦長が呟く……

「50の機神と3の飛行母艦が…… 5分と立たずに落とされるとは…… 奴は、死を訃げる妖精だと…… でも言うのか……」

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「これは…… 新しい戦艦ですか?」

大気圏突入して降りて来たのは…… 船を横並びに三隻くっ付けた様な形で、中央の船首に幼い顔をした見覚えある女神?の象が付いていた。

「戦闘能力もあるけれど…… 1番の売は、内蔵型ドック施設だよ」

「内蔵型…… ドック施設?…… ですか?」

「そう♪ この……【マザーグース】は、移動する〝造船施設艦〟だよ」

カナエがそう言うと…… 新しい戦艦が上下に開いた!

破損したホエール1を内蔵した造船施設に停留して、マザーグースは移動開始した。

「艦自体が上下左右に稼働して、内蔵型ドック施設を拡張出来るから、うちの艦は収納可能だよ」

「なるほど…… この艦の防衛機能は? 先程の様な武装集団が増えた様ですが……」

「純粋な戦闘能力なら…… 白鳥スワンの方が上だね。この艦は沈まない事を第1にしてるから……」

万能機動ドック艦【マザーグース】

盗賊団が使用していた古代艦を元に、再設計して完全改修した万能機動艦。

この艦は内部に造船施設を持ち、艦全体を上下左右に稼働展開する事で内部の作業スペースを拡張する事が出来る。

艦の中央に造船施設の作業スペースがある為に、同じく古代艦を元にした白鳥スワンに搭載された広範囲重力波砲は無い。

その代わりに白鳥スワンに搭載されたエンジンを倍の4機搭載し、重力操作システムは5機搭載されていて白鳥スワンの2倍以上に強力な重力バリアと積載能力を持つ。

乗組員の半数を超えるマザーグースに住む混沌カオス族達の願いにより、船首にカナエを象った女神象が付いている。

「…… ねぇ…… あの女神象…… やっぱり…… 変えない?」

「「「「「ぜったいにダメ!!!」」」」」

後に…… マザーグースは、混沌の女神の方舟と呼ばれるのであった。

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