アリステール

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???~少年期

街へ

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「・・・村長」

「どうしたグレゴリー」
「・・・本当によろしいので?」
「・・・君ももっと、アリスくんを信じてあげなさい。実の父親だろう?
アリスくんが持ち帰った生物がなんであれ、今まで見たことがないものだ。
だが、もし猟師が持ち帰ったとしても、私は同じようにしたと自身をもって言える。
誰がしたではない、何が起こったと考えてみなさい」
「・・・わかりました」

その後も誰がどこに行くのかが決められ、街へは両親とともに自分が街へ行って冒険者ギルドへ行くことになった
害をなす生物を判別するために解体所が併設されているらしい
そこで魔獣か魔物か、既知のものであればその脅威によって人を雇うようにと言われる

「村長さん。あの、手紙かなにか書いてもらうことは出来ますか?
話だけで信じてもらないと困ってしまうので」
「ふむ、その通りだな。
だがそのために両親について行ってもらうつもりだが?」
「実際に対峙したのが僕だけですから、細かいところまで尋ねられると難しいんじゃないでしょうか。
もちろん両親を頼りにさせていただきますが、村長という地位のある方の手紙もあれば話を聞いてもらいやすいと思います」
「・・・君は本当に7歳かい?」
「? ええ、3月に7歳になりました」
「・・・グレゴリー、ルシルさん。アリスくんをどうやって育ててきたか今度教えてくれ。
分かった、少しだけ待ってなさい。すぐに手紙を書こう」

村長が集会所のなかへ入っていく
寄り合いがあったと母さんが言っていたし、記録物でもあるのだろうか

ひとまずは大丈夫だろうか
一度村を離れることが心配だが、最悪の場合は空間転移で急いで戻ることも出来る
他の人と一緒に転移したことがない以上、本番一回目で試してダメだったとしたら目も当てられない
・・・でも一応、念のために、転移用のマーカーは作っておこう

手紙が出来上がるのを待つ間に、街へいく道すがら魔法のことを両親に説明することになった
隠していたわけではないけど、母さんに人前で魔法を使わないよう言い含められていたこともあって出来るだけ一人で練習していた
今回のことで心配をかけてしまっただろうか
魔力や魔法について夢中になって家を空けていたことにも、同時に反省しなければいけない
何が出来るか知ってもらえれば納得してくれることもあるだろう、と前向きに考えることにする

「それでは行ってきます」
「もうすぐ夜になる。道中には気を付けてね」

村長に挨拶をして村を出る
こうして自分の足で街に向かうのは初めてのことだ
道は整備されているとは言いにくい。夜道であることも相まって、松明を焚いてはいるが石や段差が見えづらく進みづらい
盗賊の類もこの世界にはいるらしく、この近辺では少ないといっても注意が必要だ
両親に魔法に関して説明をしようとするが注意も散漫になりがちでタイミングが難しい

ふと考えて、いっそ使いながら説明してはよかろうと思いいたる
ついでに普段は手をついて土に魔法をかけているが、足からもいけるんじゃないかと思い、試してみると問題なく出来た
これ幸いと2メートル範囲の土を均しながら進むことにしつつ、索敵魔法もかけながら進むことにした

「父さん母さん、ちょっと進みづらいから魔法使いながら進むね」
「・・・歩きやすいと思ったのはそのおかげか」
「そうなるかな?今は足から土に魔力を流して土を均してる。
索敵魔法って呼んでるけど、周りに害がある生き物がいないか分かる魔法も使ってるから、反応があったら言うね」
「はぁ」
「それで、どの辺まで話してたっけ?」

「その前に一つ、アリーに話しておくことがあるわ。
学校へ行く前には話しておこうとしたんだけど、いい機会だしね。
2歳ぐらいのころ、ひどい熱を出したのを覚えてる?」

「うん。魔法を使ったらすぐに良くなったのも覚えてる」
「あのとき、先生に言われたことがあるの。
魔力って感情に影響を受けやすいから、それがきっかけで熱が出たか、もしくは。
・・・想像もつかないほど、保有出来る魔力が多いか、とね」
「そうなの?」
「普通魔力が見える子は3,4日でああいう熱が出るそうよ。
一月すら一度しか見たことがないけど、生まれて2年も熱が出なかったのはそうなんじゃないかって話だったわ」
「なんとなく、わかるかもしれない」

これまで魔法の練習をしていくなかで、この世界で初めて魔法をつかったときのように意識を失うことはなかった
空気中の魔力を取り込むこともできていたし、そのおかげかと思っていたがそれだけでもないらしい

「多分、他の人よりいろいろなことが出来るし、魔法が使える人のなかでも大きなことが出来るようになるかもしれない。
けれど、それを悪用してはいけないよ。
誰かのためや身を守るときや悪いものを倒すとき、力が必要になるときもある。
だけど、自分から人を傷つけたり、悪いことをするためにその力があるわけじゃない。
そこだけはちゃんと覚えて、考えて力を使いなさい。
もし忘れるようなことがあれば、母さんが行ってぶっ飛ばすからね」
「・・・父さんも行くぞ」
「・・・はい。忘れません」

もともと魔法のない世界から転生してきたうえに、魔物や魔獣といった脅威はなかった
一個人でなんでも出来る魔法というのは、そんな自分にとってゲームや物語のように夢中になれるものだった
目を向けないようにしていたのかもしれない。出来ることが楽しくて、出来ることが増えていくことが楽しくて
過ぎたるは猶及ばざるが如し
不正・無益には従事せず、必要なときに必要なだけ力を考えて使わなければいけない

そのあとは使える魔法に関して話していく
火水風土、氷雷光、重力、魔力圧縮・操作、索敵、亜空間倉庫と空間転移、飛翔などなど
父さんは魔力圧縮の手、母さんは亜空間倉庫に興味を惹かれたようだ
畑仕事にも応用できるだろうし、食材を腐らずに保管できるのも生活に密着しているし、らしいといえばそうだと納得もする

「・・・魔法ってのは、ずいぶん便利なんだな」
「うん。だけど他のみんながどれぐらい使えるのかとか、
どんな魔法が使えるのか分からないから、学校に行ったらそういう勉強が出来たらいいなって思ってる」
「・・・そうだな。頑張れよ」
「はい!」

街の門が見えてきたところで話を切り上げる
幸い道中は順調だった
好きなことを話すのが楽しかったせいか時間を忘れていたが、今回の本分を思い出して気持ちを切り替えなくては
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