アリステール

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少年期~

学院説明会

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「僕はアリスっていうんだ。ここに来たってことは君も魔法実践技術ってこと?」
「・・・そうだけど」
「やっぱり。これからよろしくね」
「・・・アリシア」
「それが君の名前?」
「・・・ええ」
「・・・疲れてる?先生来るまで休む?」
「・・・そうする」

よく見てみると顔色が少し悪い。あまり早起きの生活に慣れていないんだろうか
近くの席に突っ伏したと思ったらそのまま顔を伏せて寝てしまった

寒くては眠るのも辛かろう
開けていた窓を閉じ、インベントリに入れていた大きめのシーツを取り出して肩にかける
せっかくだし、来る前に考えていたエアコンの魔法を弱い出力で試してみようか

風を温めてゆるく循環させるようにして、うまくいったので徐々に範囲を広げ講堂を覆う形で展開させる
乾燥もしてるしすこし水分も混ぜてみよう
水を微細に振動させるだけだと思ったような結果にならない。一部分に範囲を絞って出力を上げていくと、加湿器のように細かい霧が出来る
医療用のネブライザを思い浮かべてみたがうまくいった。名前と簡単な仕組みぐらいしか知らないけれど

大分過ごしやすくなったんじゃなかろうか、といったところで再度講堂の扉が開く
中肉中背といった感じだが、目付きが柔らかく髪が飛び跳ねていてどことなく眠そうな印象を持つ人だ

「ん?おお、おはよう。魔法実践技術担当のセドリックという。これからよろしくな」
「おはようございます。セドリック先生、でよろしいですか?」
「あー堅苦しいのはあまり性に合わんが、まぁ好きに呼べ。アリスくんで間違いないか?そっちで寝ているのは?」
「アリスは僕です。彼女はアリシア。来た時から少し調子が良くなかったみたいなので休んでもらってます」
「アリシアね。名前似てるけど兄妹かなにか?」
「いえ、今日が初対面です」
「偶然もあるもんだな。ま、いいや。説明始めるから起こしてもらえる?」
「はい。おーいアリシア、先生来たよー」

もうそんな時間だったのか
肩を揺さぶり声をかける。しばらく反応は薄かったが徐々に目が覚めていった。シーツは回収してインベントリに仕舞っておく

「おはよう寝坊助さん。魔法実践技術担当のセドリックだ。よろしくな」
「・・・すみません、おはようございます。アリシアといいます」
「おう。体調はもういいか?」
「え、ええ。いつもよりいいぐらいです」
「そりゃよかった。そんじゃ説明始めるぞ」
「あ、先生。僕たち二人だけですか?」
「ああそうだ。つっても毎年こんなもんだ。いない年もあるぐらいだしな」

そんなに少ないんじゃ、特例で学院に通えるわけだ

それからは前の列に移動して先生の説明を聞く
分厚い紙束を渡されたので中を見てみると、いろいろな授業の要綱をまとめた冊子だった
まずは単位制。どれだけの時間授業を受けたかではなく、必要な筆記試験をクリアすれば単位はもらえる
類する授業もあるが試験範囲に準じるため、実力さえあれば試験だけ受けても構わないらしい
基礎科目は座学が中心だがフィールドワークがある科目があること。その場合フィールドワークの出来で単位がもらえるかも決まるらしい

「ようは学院が考えてる最低基準をクリアすりゃいいってこったな」
「先生、質問いいですか?」
「おぅいいぞ」
「基礎科目って数字で分かれているものもあるみたいですけど、それはどんな意味があるんでしょうか?」
「いい質問だ。数字が大きいほどより難しくなる。数が違うのは成人までにそこまでは学院で学べるって意味もある」
「ありがとうございます。ちなみに数字を飛ばして試験を受けることは出来ますか?」
「ああ、それも出来る。つってもお前たちの年なら一番下を突破するだけでも十分だと思うがな。
ちなみに基礎科目のいくつかは卒業に必要な単位にもなっている。学ぶことを疎かにすると痛い目見るからな」

飛び級はありと
試験はおおよそ3週間に一度行われるとか。授業で対策して試験に臨めばとりあえず良さそうか
どれだけの難易度かは分からないけど、早めに基礎科目を突破しておけば後々楽が出来そうかも?

「ここまでは大丈夫か?」
「いいですか?」
「アリシアか」
「はい。取った単位は分かるんですか?」
「この後に渡す学生証に記録されていく。ついでだし渡しておくか」

そう言って、両親の持っていた身分証に似た学院の校章がついているカードを渡される
どうやって記録するんだろう?裏に書くのか?

「名前や出身に違いはないか?・・・ないようだな。
そのカードも魔道具の一種だ。専用の魔道具に読み込ませると色々な情報が書き込めたり読み込むことができる。
貴重なものだから無くさないようにしとけよ。ついでに街の通行証にもなるからな」

個別認証用のIDカードみたいなものか

その次は実践技術について説明されていく
魔法実践技術の場合、選定で分かった結果をもとに攻撃や補助の魔法を習っていき、特性に応じた試験を突破していくことが単位の取得になる
攻撃系統なら威力や精度、補助なら有効性や持続力といったものが重視されるらしい。傾向なだけで絶対ではないとか
他の実践技術の人とも実習という形で組んで動くこともあるらしいので、全般的な対応力が鍛えられそうだ

「そのためにも後で選定結果を見せてもらうし、実際に魔法がどれだけ使えるかも試していく。二人は魔法は使ったことがあるか?」
「はい、あります。」
「・・・あります」
「話が早くて助かるよ。早速だが実践用の施設に移動しよう」

あると答えたアリシアの顔色が悪いようだけど、大丈夫だろうか
講堂を出る足取りはしっかりしているけれど、少し心配だ
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