家庭菜園物語

コンビニ

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44 信仰

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「にゃーん」

 アホか、とかじゃないもん。
 もうあのアホ神の話なんて鵜呑みにしないって、俺は誓う……俺の嫁が。

「お初にお目にかかります。自分は修行僧のソーズと申します。お告げにございました、白く美しい獣に導かれて参りました」

 大福は「何こいつ?」って感じで怯えてる。
 導いたっていうより、単に着いて来られただけじゃないか?

 一応、客人らしいし、今回はアホ神の許可もあったのだろう。
 結界内に入ってこれるということは、上半身裸の変態でも、悪人ではない……のか?

「えっと、ソーズさんですね。俺は悠といいます。黒猫が姉さんの杏、白いのが大福で、この子が娘のモモです」
「これは白髪で褐色のエルフ殿とは……初代の巫女様のようですね」

 巫女様?
 モモと一緒に首を傾げる。

「立ち話もなんですし、よければ中にどうぞ」
「感謝いたします。ですが外での修練続きで、いささか汚れておりまして」

 上半身が裸……というか、布の切れ端が張り付いてはいたので元々何か着ていて破けた感じだろうか。
 大福を追いかけて、破れたとかかな? 全体的に薄汚れている。

 この寒空で「井戸で汚れ落としてくれ」とも言えないし……お湯、用意しないと。

「外にある水をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「え? いいですけど、水じゃ冷たくないですか?」

 許可を出すと、井戸まで進み、水瓶を軽々と持ち上げ、頭から水をかぶった。

 いや、寒いって!

「モモ! 大きめのタオル持ってきて! ……ソーズさん、ちょっと!」

 玄関から駆け寄ると、水のはずなのに、まるでお湯をかぶったかのようにモクモクと湯気が立っている。

「水を頂戴しまして、ありがとうございました」
「いや、寒いでしょ!?」
「いえいえ。滝打ちなどの修行もしておりますので、この程度なら」

 モモが持ってきたタオルを渡し、体を拭いてもらってから、シャワーの簡単な使い方だけ教えて、浴室に詰め込む。見てるこっちが寒くなってくる。

 モモも言葉にはしなかったが、少し困惑していた。
 とりあえず大福が連れてきた(?)状況だし、客人として飯と寝床くらいは用意しよう。

 モモたちには食事の再開を促し、俺は途中で中断していたご飯をかき込む。
 急いで新しい生姜焼きを準備して、もう一人分テーブルに並べる。

 少しして、パツパツのスウェットを着たメガネ坊主の青年がリビングに現れる。
 服、破けないかな……? 伸縮性のあるもの選んでよかった。

「まさかこの森で風呂に入れるとは思いませんでした。ありがとうございます」

 正座をして、両手を前につき、頭を下げる。
 僧侶ってだけあって、なんか様になってるなあ。

「いえいえ、大したもてなしもできませんが……うちの大福が迷惑かけたみたいで、すみません」

 ——正確に言えば、アホ神のお告げで迷惑をかけたんだが。

「迷惑など、とんでもありません。お告げにあった“素敵な出会い”とは、貴方方との出会いだったのでしょう」

 俺、そういう趣味はないけど……。
 目をキラキラさせて“素敵な出会い”って言われると、なんか怖い。

「ははは……そうですか。よければご飯、用意したので、どうぞ」
「これは……何から何まで感謝いたします。こんなにいただいてよろしいのでしょうか?」
「どうぞどうぞ。うちは、比較的ご飯には困ってないので」
「それは素晴らしいことですね。それでは、ご厚意に甘えまして……いただきます」

 お礼や食べ方を含めて、所作が美しい。
 勝手な印象だが、人の良さがにじみ出てる。

「これは……美味しいです!」
「おかわりもあるので、遠慮なく言ってくださいね」
「恐縮です!」

 ソーズさんは結局、ご飯を三杯おかわりしたが、体格のわりには控えめな印象だった。
 モモのほうが、食べるくらい。

「ご馳走様でした」
「お粗末様です。それで、ソーズさんはこの森に……“お告げ”で?」
「はい。素敵な出会いがあるとのことで、お告げを受けて参りました。きっとこの出会いは、聖書に記されている“初代聖女様”と同様の容姿——モモ様のことと考えております」
「聖書とか巫女とか、ソーズさんはビクドの方なんですか?」

 彼の答えは、イエスだった。
 まさか、このままモモを連れて行きたいとか言い出すんじゃないだろうな?

 「素敵な出会い」がモモのことだとしたら……いや、言ったらそれこそ、どうして知ってるんだって話になる。神と知り合いなんですって展開になれば、大ごとになる。

「モモ様、悠様。ビクドは非常に素晴らしい国です。よろしければ、ぜひ我が国にいらっしゃいませんか?」
「えっと……お誘いはありがたいんですが、俺は戦闘能力もないし、ここ以上に安全な場所もないと思ってるので、今のところ外に出る気はありません。それに、やっぱりソーズさんとしては、“聖女様と同じ容姿”のモモを連れて行きたいんですか?」
「そうですね。モモ様にその意思があれば、ぜひご同行願いたいと考えております。モモ様、いかがでしょうか?」

 モモは無言で首を横に振り、俺の背中に隠れる。

「そうですか……それでは、諦めざるを得ませんね」
「えっと……思ったよりあっさりですね。もっと強引に迫ってくるのかと思いました」
「自分も、“開祖様が最初に建てられた『褐色白髪エルフお姉さん大好き教』”は信仰しておりますが、一番大事なのはご本人の意思ですので、強引なお誘いなどはいたしません。ただ、残念なことに、強引な輩もおります。どうかお気をつけください。もしお困りの際には、自分に——」
「いやいや、ちょっと待ってください。『褐色白髪エルフお姉さん大好き教』って何なんですか!?」
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