落第転生者、異世界転生局で修行中!〜ひょんなことから異世界送りにされましたが、転生局で学んだ知識で無双しながらスローライフを目指します〜

カコ・コーラ

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第1話:え、転生できないの!?

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「……え……」

「……俺って、転生できないんですか……?」

 ◇ ◇ ◇

朝霧スバル(あさぎり すばる)は、どこにでもいる普通の高校生だった。
趣味はプログラミングで、放課後はコンピューターの前に座り、コードを書いたり、ゲームを作ったりすることに没頭していた。

特別な友達もいなければ、目立つ才能もない。
それでも、スバルは自分の時間を楽しみながら、平凡な高校生活を送っていた。

ある日の学校の帰り道、スバルは夜道を歩いていた。
時刻はすでに夜8時を回っており、薄暗い街灯が人気のまばらな夜道を照らしている。

涼しい秋の風が彼の頬を撫で、道沿いの空き地から聞こえる虫の音だけが静寂を破る。

「ふう……疲れた…」

スバルは肩にかけたバッグの紐を引き上げ、大きく息を吐いた。

スマホでZootubeを見ながら夜道を歩いていたスバルは、ふと立ち止まった。

「………なんだろう、この感じ……」

理由はわからないが、まるで誰かに見られているような、冷たい視線を感じたのだ。

スバルは辺りを見回したが、すぐ前をサラリーマン風の男が歩いているだけで、ほかに人影はない。
彼は首を傾げ、再び歩き出した。



その瞬間――

ゴゴゴゴ……ッ!!

足元の道路が、不気味な音を立てて震え始めた。スバルは驚いて立ち止まり、視線を下に向ける。

次の瞬間、地面に大きな亀裂が走り、まるで何かに引き裂かれるように道路が崩れ始めた。

「な、なに!?」

スバルは慌てて後退しようとしたが、その場に足がすくんで動けない。
足元のアスファルトが、まるで何者かに呪われているかのように、異様な力で引き裂かれていく。
瞬く間に、亀裂は彼の立つ位置まで広がり——

ズズンッ!

突然、スバルの体が宙に浮いた。正確には、足元の道路が崩れ落ち、彼の体ごと大きな穴の中へと吸い込まれていったのだ。

「うわああっ!」

スバルは咄嗟に両手を伸ばし、目の前の地面に必死にしがみついた。

「あああぁああぁああああぁ!!!!」

視界の隅で、先ほど見かけたサラリーマンが奈落に落ちていくのが見えた。あの人も巻き込まれたのか。
サラリーマンの絶叫が深淵のなかをこだまする。
しかし、彼の体が地面にたたきつけられる音は一向に聞こえてこない。

――どんだけ深いんだ…!?

「おい……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

インドア派のスバルに、鉄棒の懸垂のような状態で自分の体を支え続ける腕力は当然ない。
段々と腕がしびれ、手の力が抜けてくる。

「そんな……嘘だろ、こんなの……」

スバルの声が力なく漏れ、次の瞬間、彼の手がふと力を失った。
その瞬間、重力が容赦なく男の体を引きずり込む。

スバルは目を見開き、急速に迫ってくる暗闇に向けて、無力に手を伸ばした。
全身の感覚が宙に浮き、心臓が喉元まで上がってくるような恐怖が彼を襲う。

そして、次の瞬間――

光が消え、スバルの意識は闇に包まれた。

 ◇ ◇ ◇

……

「……う、うん……」

スバルが目を覚ましたとき、彼の視界に飛び込んできたのは、まばゆく発光する真っ白な天井だった。
スバルはゆっくりと上体を起こし、あたりを見回す。

「……えっ……ここ、どこだ?」

スバルは目を見開いて周囲を見渡す。白く輝く広大な空間には、まるで神殿のような荘厳な柱が立ち並び、床には雲が漂っている。世界の果てまでイッテPで見たパルテノン神殿みたいだな、とスバルは思った。
頭の中は混乱しており、ここが現実なのか夢なのかすら分からない。足元の雲の感触が生々しく、まるで幻想の中にいるようだった。

その時、ふわりと心地よい風が吹き抜け、スバルの目の前に一人の女性が現れた。彼女は長い金髪を風になびかせ、透き通るような白いドレスを纏っていた。まるで絵画の中から飛び出してきたような美しさに、思わず見惚れてしまう。

スバルは頭ではなく心で、この女性が神様や天使といった、そんな類の存在であると理解した。

「……ようこそ、朝霧スバルさん。ここは天界の異世界転生局です」

「私は局長のフォルトゥナです。以後お見知りおきを」

彼女の声は、鈴の音のように清らかで心地よかった。
放心状態だったスバルは我に返り、慌てて口を開く。

「え、えっと、俺がここにいるのはどうして……?」

女神は申し訳なさそうな顔をしながら、言葉を選びつつ話し始める。

「えっと……その……あなたは他の人の転生に巻き込まれてしまったのです…」

スバルは理解が追いつかず、彼女の言葉を繰り返す。

「他の人の転生に巻き込まれた……?」

彼女はゆっくりと頷き、説明を続けた。
どうやら天界では、無数に存在する下界のうち、崩壊の危機に瀕している世界に、別の下界から優秀な人間を「転生者」として送り込んで、世直しをさせているらしい。

どうやら俺と一緒に落ちたサラリーマンは大手商社の重役で、異世界転生局は彼を狙ってワープゲートを作ったらしい。

そのゲートに、俺は巻き込まれた。

「なるほど……じゃあ、俺もその崩壊しかかっている世界に転生できるんですか?」

スバルは目を輝かせた。もし自分が異世界に行けるのなら、ファンタジー小説やゲームのような冒険が待っているかもしれない。
自分も美少女のハーレムを作ったり、チート能力で夢想できるかもしれないという淡い期待が、心の中で膨らんでいく。

しかし、彼女はやや困ったような表情で、首を横に振った。

「いえ…大変申し上げにくいのですが、あなたのような普通の人間は転生には適していません」

「……え……」

「……俺って、転生できないんですか……?」

女神は大きな瞳でスバルをまっすぐ見つめる。

「私たちは、崩壊しそうな世界を救うために、特別な能力や知識を持った人間を転生者に選んでいます。」

「世界最高の頭脳を持つ者や、国宝クラスの美貌、驚異的な身体能力を持つ者など、選ばれるのはそんな人々です。」

「あなたにはそれらの要素が、まったく欠けています」

――え、うそでしょ。めっちゃハッキリ言うじゃん。

スバルはがっかりした。自分が特別ではないことは知っていたが、面と向かって言われると、やはりショックだった。
せっかく夢のような異世界での冒険が始まると思ったのに、めちゃくちゃ現実を見せてくるじゃん……

「でも…自分、プログラミングが得意ですよ!!――」

女神は呆れたように首を振る。

「そんなの、転生先では何の役にも立ちませんよ。サラリーマンさんを送り込んだ世界は産業革命が起きたばかりで、プログラミングのスキルなんて宝の持ち腐れです」

「他にも崩壊しそうな世界は沢山ありますが、あなたが活躍できる場所はありません」

「じゃあ…元の世界に返してください!!」

「転生適格者以外には転生装置の使用が認められていません。申し訳ありませんが、あなたは天界から出ることができません」

――なんなんだこれは、なんでこんなことになってんだ。もう訳が分からないよ。

スバルは落胆し、肩を落とした。しかし、彼女は続けた。

「そんなあなたに提案があります。天界の住民権を与えるので、この異世界転生局で働くのはどうでしょう」

「えっ、働く……?」

スバルは呆然と彼女を見つめた。夢のような異世界転生が、まさかの天界での就職に変わってしまったのだ。

女神は微笑みながら頷く。

「そうです。せっかくここまで来たのですから、異世界転生局であなたの能力を発揮してください」

「ちょ、ちょっと待ってください! 自分、まだ高校生だし、仕事なんて……」

女神が顔をスバルにぐっと近づけた。
その息をのむ美しさに、スバルは何も言えなくなる。

「心配しないでください。異世界転生局では、様々な業務を経験できますよ。」

「世界の管理、転生者の選定、武器の生成、異世界生物のしつけなど、幅広い知識を身につけることができます。きっと楽しいですよ。」

彼女の言葉を聞き、スバルはますます不安になった。自分がそんなことをやっていけるのだろうか。

しかし、拒否する余地もないらしい。有無を言わせない女神の微笑みを前にして、彼はただ唖然とするしかなかった。

「……これから俺はどうなるんだろう……」

スバルは不安を抱えたまま、真っ白な天井を見上げるしかなかった。

果たして、この奇妙な場所で、彼にどんな未来が待ち受けているのだろうか。
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