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第1話 優斗
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ここは異世界――。
魔法や魔物が普通に存在する、そんな世界に属する一国――『サリア帝国』の港町『ソルダン』は今日も大勢の人で賑わいをみせている。
まるで中世ヨーロッパを思わせるような街並みには、所狭しと店が立ち並び、石畳の通りには多くの馬車が行き交っていた。
そんな中心街の一画に大きなレンガ造りの建物がある。
ソルダン冒険者ギルドだ。
いつものように大勢の冒険者たちで賑わっているこの場所に、一仕事終えて帰還した一組のパーティーがドアを開けて中へ入ってきた。
女性一人、男性二人の三人組で、その中でもひと際目を引く若い青年がいる――それが高橋優斗だ。
優斗が皆の中で浮いている要因とはその見た目にあった。
この世界においては極めて稀な黒髪黒目なのだ。
「ユウトの瞳や髪の色って、ホント、真っ黒よね~」
隣を歩いている女性冒険者がそう言いながら優斗の顔をまじまじと覗き込んで来ると、後方を歩いている口髭を蓄えた男も後ろから手を伸ばしてきて、優斗の頭をわしゃわしゃとかき混ぜながら苦笑いする。
「確かに珍しいよな!町とか歩いてると皆じろじろと見て来るしよ」
「あはは……むしろ希少価値があって逆にかっけーじゃないっすか?」
優斗がそう言って日焼けした肌に白い歯を輝かせてニカッと笑えば、その笑顔を見た二人もつられて笑い出す。
実際、街を歩けば行き交う人たちに好奇の目で見られる事が往々にしてあるのだが、優斗は特に気にしてはいなかった。
この世界は青髪の人やら赤い瞳の持つ者など、それこそ多種多様な人たちで溢れているにもかかわらず、黒髪や黒い瞳といった風貌の人物は存在していない――そんな状態に、逆に自分だけ違う毛色だという事実に寧ろ特別感があって良いではないか?などと前向きに捉えている優斗であった。
そんな優斗に口髭の男が思い出したように話しかけてきた。
「そういや、黒髪って言えばよ……噂によれば、最近、あのおっかねぇギルランスと一緒に行動している弓使いの男も黒髪だって聞いたぜ」
(――それって、和哉《かずや》の事か!?)
その話に心当たりがありすぎて、思わずハッとする優斗だったが、すぐに平静を装って相槌を打つ。
「……へぇ~、そうなんすか?」
初めて聞いた事のように振る舞いつつも、内心では少し動揺していた。
何故なら、その”黒髪の弓使い”とはまさに自分の親友の事だからだ。
実は、優斗も和哉も異世界からの転移者であった。
しかし、まさかそんな事が周りに知られたらそれこそ奇異な目で見られかねないし、説明も面倒だ――そのため、この事実は極一部の者しか知らないのだ。
そんなわけで、優斗は知らないふりを通すのであった。
そして、今話題に上がった『ギルランス』というのは、この世界でも指折りの強さを誇る凄腕の剣士であり、また同時に非常に恐れられている存在でもあった。
優斗の親友である和哉は今、この剣士と行動を共にしているのである。
――因みに彼らが所属しているのは、ここ『サリア帝国』の隣国である『アドラディア王国』の『王都アドラ』に本部を構えるアドラギルドだ――。
(……まぁ、あの二人が一緒にいたら、そりゃ、目立つだろうし噂にもなるだろうな……)
そんな事を考えながら優斗は親友の和哉に思いを馳せる――
(あいつ……元気にやってるかな……?)
魔法や魔物が普通に存在する、そんな世界に属する一国――『サリア帝国』の港町『ソルダン』は今日も大勢の人で賑わいをみせている。
まるで中世ヨーロッパを思わせるような街並みには、所狭しと店が立ち並び、石畳の通りには多くの馬車が行き交っていた。
そんな中心街の一画に大きなレンガ造りの建物がある。
ソルダン冒険者ギルドだ。
いつものように大勢の冒険者たちで賑わっているこの場所に、一仕事終えて帰還した一組のパーティーがドアを開けて中へ入ってきた。
女性一人、男性二人の三人組で、その中でもひと際目を引く若い青年がいる――それが高橋優斗だ。
優斗が皆の中で浮いている要因とはその見た目にあった。
この世界においては極めて稀な黒髪黒目なのだ。
「ユウトの瞳や髪の色って、ホント、真っ黒よね~」
隣を歩いている女性冒険者がそう言いながら優斗の顔をまじまじと覗き込んで来ると、後方を歩いている口髭を蓄えた男も後ろから手を伸ばしてきて、優斗の頭をわしゃわしゃとかき混ぜながら苦笑いする。
「確かに珍しいよな!町とか歩いてると皆じろじろと見て来るしよ」
「あはは……むしろ希少価値があって逆にかっけーじゃないっすか?」
優斗がそう言って日焼けした肌に白い歯を輝かせてニカッと笑えば、その笑顔を見た二人もつられて笑い出す。
実際、街を歩けば行き交う人たちに好奇の目で見られる事が往々にしてあるのだが、優斗は特に気にしてはいなかった。
この世界は青髪の人やら赤い瞳の持つ者など、それこそ多種多様な人たちで溢れているにもかかわらず、黒髪や黒い瞳といった風貌の人物は存在していない――そんな状態に、逆に自分だけ違う毛色だという事実に寧ろ特別感があって良いではないか?などと前向きに捉えている優斗であった。
そんな優斗に口髭の男が思い出したように話しかけてきた。
「そういや、黒髪って言えばよ……噂によれば、最近、あのおっかねぇギルランスと一緒に行動している弓使いの男も黒髪だって聞いたぜ」
(――それって、和哉《かずや》の事か!?)
その話に心当たりがありすぎて、思わずハッとする優斗だったが、すぐに平静を装って相槌を打つ。
「……へぇ~、そうなんすか?」
初めて聞いた事のように振る舞いつつも、内心では少し動揺していた。
何故なら、その”黒髪の弓使い”とはまさに自分の親友の事だからだ。
実は、優斗も和哉も異世界からの転移者であった。
しかし、まさかそんな事が周りに知られたらそれこそ奇異な目で見られかねないし、説明も面倒だ――そのため、この事実は極一部の者しか知らないのだ。
そんなわけで、優斗は知らないふりを通すのであった。
そして、今話題に上がった『ギルランス』というのは、この世界でも指折りの強さを誇る凄腕の剣士であり、また同時に非常に恐れられている存在でもあった。
優斗の親友である和哉は今、この剣士と行動を共にしているのである。
――因みに彼らが所属しているのは、ここ『サリア帝国』の隣国である『アドラディア王国』の『王都アドラ』に本部を構えるアドラギルドだ――。
(……まぁ、あの二人が一緒にいたら、そりゃ、目立つだろうし噂にもなるだろうな……)
そんな事を考えながら優斗は親友の和哉に思いを馳せる――
(あいつ……元気にやってるかな……?)
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