3 / 31
第3話 医務室で……!?
しおりを挟む
「カエサルさ~ん、いるっすか?」
優斗が医務室のドアをノックしながら声を掛けると中から返事があった。
「ああ、入ってくれ」
その言葉を受け中に入ると、窓辺に置かれた机で書類仕事をしていたらしいカエサルの姿が見えた。
白いワイシャツに黒いスラックス、その上に白衣を纏っており、後ろで緩く一つに纏められた長い髪は深い緑色だ。
年齢は25歳と聞いているが、それよりはかなり若く見える風貌をしている――優斗的に言えば『スッとした美人さん』だ。
眼鏡をかけている整った顔立ちは知的な雰囲気を醸し出しており、その眼鏡越しに見える翡翠色の瞳は静謐な湖を思わせる。
すらりとした長身の痩せ型で、優雅さを感じさせる佇まいがありながらも、意外と鍛えられている事も窺える。
カエサルは今でこそギルドの医務室で医師をしているが、以前は『勇者』の称号を持つ冒険者だったとの事だった。
しかし、カエサルがゲイである事がギルド側に知られてしまった為に、その称号は剥奪されてしまったらしいのだ。
そんなカエサルは椅子に腰掛けて机の上に広げた書類に目を通していたようだが、優斗に気づくとその手を止め、顔を上げて苦笑いを零した。
「ユウトか……なんだ、またクエストで怪我をしたのかい?」
「いやいや、今日は違うっすよ」
言いながら、優斗は苦笑いを浮かべつつ否定するように手を振ってみせる。
実は、事、戦闘となると突っ走ってしまう傾向のある優斗は、しょっちゅう怪我をしてはカエサルの治療を受けたりしているのだ。
「ちょっと顔を見に寄っただけっす」
「はは、なんだそれは……」
冗談めかして答える優斗に呆れたように苦笑するカエサルだが、その表情はとても穏やかで優し気で、優斗も自然と笑顔になってしまう。
(ああ、やっぱり……俺、この人の事好きだなぁ……)
初めて出会った時から薄々そう感じていたのだが、最近はその気持ちがより強くなってきていると感じるのだ。
穏やかで優しく、何より人としての魅力に満ち溢れた美しい男――そんなカエサルに優斗はすっかり心を奪われてしまっていた。
だが、問題もいろいろとあるもので……。
優斗はカエサルの向かいにある診察用の椅子に腰を下ろして話を続けた。
「――そんな事より、カエサルさんはまだ和哉の事忘れらんないっすか?」
そう、実はカエサルは以前、和哉の事が好きで彼に告白した事があったのだ。
残念ながら和哉の心はギルランスに向けられていた事もあって振られてしまったのだが――。
カエサルは唐突な優斗の質問に一瞬目を見開くも、すぐにクスクスと笑って答える。
「随分唐突だな……どうした?藪から棒に……」
「いや……いつんなったら俺の事本気で考えてくれるのかな~って思ってさ」
「ふふ、前にも言っただろ?私はもう恋愛はしないって決めたんだ……君とは体の関係だけだ、とね……君もそれで納得していたじゃないか?」
「そうだけどさぁ……」
(……でも、やっぱり納得できねぇんだよなぁ……)
――そして、もう一つの問題はこれだ。
優斗はカエサルを好きになってから何度もアプローチして口説いてきた。
その甲斐あって?か、今では彼のセフレ的な立場に収まっているが、未だに彼の心を手に入れる事が出来ずにいたのだ。
カエサルの言葉に一瞬胸に痛みが走る優斗だったが、すぐに気を取り直して更に問いかける。
「それってやっぱ、まだ和哉が好きだから……すか?」
その問いにカエサルは穏やかな笑みを見せながら静かにかぶりを振った。
「……確かにカズヤ君は魅力的な子だよ――私も一時は本気でギルランス君から奪ってしまおうと躍起になったものだ……」
そこまで言うと一度言葉を切り、目を伏せて小さく溜息をつく。
そして再びゆっくりと話を続ける。
「だけどね……気付いたんだよ――私は『ギルランス君に恋焦がれているカズヤ君』を好きになったんだ、ってね」
その言葉に息を呑む優斗だったが、黙って静かに聞いている。
「おそらく私は、カズヤ君がギルランス君を想う熱量というか、その想いから醸し出される色香みたいな物に惹かれたんだと思うよ……だから彼の事は綺麗さっぱり諦める事にしたんだ。今では彼らの幸せを応援すらしているんだよ」
そう言うと、カエサルは窓の外に視線を向けて目を細める。
「まぁ……そうは言ってもまだ多少未練はあるのかな?何せ元カレを亡くしてからこっち、恋なんてものをしたのは久しぶりの事だったからね……」
自嘲気味に笑うカエサルだが、その瞳にはどこか切なさが漂っているようにも見えた。
そんなカエサルを見つめながら、優斗はゆっくりと椅子から立ち上がりカエサルの元へ歩み寄ると、その額に軽くキスを落とす。
(俺は……俺ならあなたを幸せにできるのに……)
「――カエサルさん、今夜も部屋に行っていいっすか……?」
優斗が耳元で囁くように言うと、カエサルは一瞬目を瞠った後、すぐに艶っぽい笑みを浮かべながら小さく頷いた。
その微笑みに誘われるように優斗は口付けをしようと顔を近づけるが、途中でカエサルの人差し指によって阻まれてしまう。
「こら……キスはダメだと言っただろう?」
眉尻を下げ、少し困った様な笑みをみせてカエサルは優斗を窘めた。
だが、優斗は負けじと口元に当てられた手を取り、その指にぺろりと舌を這わせると、悪戯っぽく笑って囁いた。
「――んじゃあ、今すぐ抱きたいっす。ちょうどそこにベッドもある事だし――」
「は?」
優斗はきょとんとしているカエサルの身体をひょいと抱え上げると、そのままベッドへと運んで横たえ、その上に覆いかぶさった。
「ちょっ、待て、ユウト!ここは仕事場だぞ!?何考えてるんだ!」
焦ったように声を上げるカエサルに対し、優斗は真顔で答える。
「え?今からここでSEXするんすけど?」
その言葉にギョッとした様子のカエサルだったが、すぐに気を取り直して抗議する。
「わ、私は嫌だぞ!?こんな誰が来るか分からないようなところで!」
「大丈夫っす!どうせ今日はもう誰も来ませんって!」
そう言って優斗はニッとカエサルに笑いかけると、そのまま彼の首筋へ顔をうずめて吸い付いた。
「んっ……こら、やめなさい!やめないと怒るぞ!」
必死に身じろぎしつつ抵抗するカエサルだったが、そんな彼にはお構いなしに優斗は慣れた手つきで白衣をはだけさせると、ワイシャツの上から彼の胸を弄り出した。
そして、小さな突起を見つけ出すと、服の上からそこを指先で刺激し始める。
「やめっ……ぁっ……」
途端に、カエサルの口から甘い吐息が漏れる。
(相変わらず感度が良いなあ……ふっ、可愛い……)
口ではダメだと言いつつも、身体はしっかりと反応しているカエサルの様子に気を良くした優斗は更に大胆になっていく。
優斗はカエサルのシャツのボタンを一つずつ外していき、次第に露わになる肌に舌を這わせていった――その時だった。
「すみませ~ん、カエサルさん、この依頼なんですが――」
突然医務室のドアが開いて、一人の女性が入って来た――受付嬢のエマだ。
エマはベッドの上の二人を見るなり顔を真っ赤にして叫ぶ。
「わ、わぁっ!?な、なな何をやってるんですかっ!?」
慌てるエマを尻目に優斗はカエサルを組み敷いた姿勢のまま彼女に声を掛けた。
「あ~……すんません、今取り込み中なんで後にしてもらっていいっすか?」
苦笑いしつつ、立ち去れと言わんばかりの視線を彼女に向ける優斗だったが、下から手が伸びて来たかと思うと、ゴツンと鈍い音と共に額に拳骨が落とされた。
「イテッ!?何するんすか!?」
涙目になりながら抗議する優斗に対し、カエサルはニッコリと微笑みかける(だが、目は笑っていない)。
「それはこちらの台詞だ……ユウト。ここは仕事場だと何回言ったら分かるんだい?ん?」
いつもの穏やかな声色が逆に怖い――優斗は引きつった笑顔で答える。
「いや~、すんません……なんか無性にムラムラしちゃって……」
「はぁ……君はまったく……」
呆れたように溜息をつき、優斗の下から抜け出したカエサルは乱れた服を手早く直した後、眼鏡を押し上げながらエマの方へ向き直り笑顔で答えた。
「すまないね……見苦しい所を見せてしまったようだ」
申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べるカエサルに、ゆでダコのように顔を真っ赤にしたエマは慌てて手をパタパタと振って否定する。
「い、いえ!むしろこちらがお邪魔したみたいで申し訳ありません……」
実は、このギルド内でエマだけは優斗とカエサルの関係を知っているのだ。
顔を赤くしたまま頭を下げるエマに対し、カエサルは苦笑を浮かべる。
「いや、気にしなくていいよ――それで、依頼というのは?」
話題を変えるべくカエサルが問いかけると、エマは思い出したように顔を上げ話を続けた。
「あ、はい!実はこれなんですが――」
彼女が慌てて手にしていた依頼書をカエサルに渡している姿を、ベッドに座ったまま眺めている優斗は少し残念な気持ちになっていた。
(あーあ……もうちょっと遊びたかったんだけどなぁ……)
優斗は恨めし気な視線をカエサルに向けるが、当の本人はまるで気にしていない様子でエマから書類を受け取りそれに目を通している。
そんな二人のやり取りを、優斗はカエサルにゲンコツされたオデコをさすりながら黙って見守る事にする。
「ふむ、これは……なぜ私のところに?誰も引き受けてくれないのかい?」
依頼書に目を通していたカエサルは眉間に皺を寄せながらエマに問いかけると、彼女は申し訳なさそうに答える。
「そうなんです……みんな怖がってしまって……」
「まぁ、そうだろうな……無理もない」
(ん?みんなが怖がる依頼って……?)
その依頼内容に興味が湧いた優斗は、ベッドから降りて二人に近付くと横から覗き込みながら問いかける。
「その依頼って何なんすか?」
するとエマが顔を上げ、優斗に向き直り答えた。
「隣町の貴族、クシュール家からのクエストです……依頼内容は、『屋敷内で起きている不可解な現象の解決、及びご子息の護衛』となっています」
「不可解な現象???」
エマの言葉に優斗が首を傾げていると、横に立つカエサルが「読んでみるかい?」と言いつつ書類を差し出して来た。
優斗はそれを受け取り目を通してみた――。
優斗が医務室のドアをノックしながら声を掛けると中から返事があった。
「ああ、入ってくれ」
その言葉を受け中に入ると、窓辺に置かれた机で書類仕事をしていたらしいカエサルの姿が見えた。
白いワイシャツに黒いスラックス、その上に白衣を纏っており、後ろで緩く一つに纏められた長い髪は深い緑色だ。
年齢は25歳と聞いているが、それよりはかなり若く見える風貌をしている――優斗的に言えば『スッとした美人さん』だ。
眼鏡をかけている整った顔立ちは知的な雰囲気を醸し出しており、その眼鏡越しに見える翡翠色の瞳は静謐な湖を思わせる。
すらりとした長身の痩せ型で、優雅さを感じさせる佇まいがありながらも、意外と鍛えられている事も窺える。
カエサルは今でこそギルドの医務室で医師をしているが、以前は『勇者』の称号を持つ冒険者だったとの事だった。
しかし、カエサルがゲイである事がギルド側に知られてしまった為に、その称号は剥奪されてしまったらしいのだ。
そんなカエサルは椅子に腰掛けて机の上に広げた書類に目を通していたようだが、優斗に気づくとその手を止め、顔を上げて苦笑いを零した。
「ユウトか……なんだ、またクエストで怪我をしたのかい?」
「いやいや、今日は違うっすよ」
言いながら、優斗は苦笑いを浮かべつつ否定するように手を振ってみせる。
実は、事、戦闘となると突っ走ってしまう傾向のある優斗は、しょっちゅう怪我をしてはカエサルの治療を受けたりしているのだ。
「ちょっと顔を見に寄っただけっす」
「はは、なんだそれは……」
冗談めかして答える優斗に呆れたように苦笑するカエサルだが、その表情はとても穏やかで優し気で、優斗も自然と笑顔になってしまう。
(ああ、やっぱり……俺、この人の事好きだなぁ……)
初めて出会った時から薄々そう感じていたのだが、最近はその気持ちがより強くなってきていると感じるのだ。
穏やかで優しく、何より人としての魅力に満ち溢れた美しい男――そんなカエサルに優斗はすっかり心を奪われてしまっていた。
だが、問題もいろいろとあるもので……。
優斗はカエサルの向かいにある診察用の椅子に腰を下ろして話を続けた。
「――そんな事より、カエサルさんはまだ和哉の事忘れらんないっすか?」
そう、実はカエサルは以前、和哉の事が好きで彼に告白した事があったのだ。
残念ながら和哉の心はギルランスに向けられていた事もあって振られてしまったのだが――。
カエサルは唐突な優斗の質問に一瞬目を見開くも、すぐにクスクスと笑って答える。
「随分唐突だな……どうした?藪から棒に……」
「いや……いつんなったら俺の事本気で考えてくれるのかな~って思ってさ」
「ふふ、前にも言っただろ?私はもう恋愛はしないって決めたんだ……君とは体の関係だけだ、とね……君もそれで納得していたじゃないか?」
「そうだけどさぁ……」
(……でも、やっぱり納得できねぇんだよなぁ……)
――そして、もう一つの問題はこれだ。
優斗はカエサルを好きになってから何度もアプローチして口説いてきた。
その甲斐あって?か、今では彼のセフレ的な立場に収まっているが、未だに彼の心を手に入れる事が出来ずにいたのだ。
カエサルの言葉に一瞬胸に痛みが走る優斗だったが、すぐに気を取り直して更に問いかける。
「それってやっぱ、まだ和哉が好きだから……すか?」
その問いにカエサルは穏やかな笑みを見せながら静かにかぶりを振った。
「……確かにカズヤ君は魅力的な子だよ――私も一時は本気でギルランス君から奪ってしまおうと躍起になったものだ……」
そこまで言うと一度言葉を切り、目を伏せて小さく溜息をつく。
そして再びゆっくりと話を続ける。
「だけどね……気付いたんだよ――私は『ギルランス君に恋焦がれているカズヤ君』を好きになったんだ、ってね」
その言葉に息を呑む優斗だったが、黙って静かに聞いている。
「おそらく私は、カズヤ君がギルランス君を想う熱量というか、その想いから醸し出される色香みたいな物に惹かれたんだと思うよ……だから彼の事は綺麗さっぱり諦める事にしたんだ。今では彼らの幸せを応援すらしているんだよ」
そう言うと、カエサルは窓の外に視線を向けて目を細める。
「まぁ……そうは言ってもまだ多少未練はあるのかな?何せ元カレを亡くしてからこっち、恋なんてものをしたのは久しぶりの事だったからね……」
自嘲気味に笑うカエサルだが、その瞳にはどこか切なさが漂っているようにも見えた。
そんなカエサルを見つめながら、優斗はゆっくりと椅子から立ち上がりカエサルの元へ歩み寄ると、その額に軽くキスを落とす。
(俺は……俺ならあなたを幸せにできるのに……)
「――カエサルさん、今夜も部屋に行っていいっすか……?」
優斗が耳元で囁くように言うと、カエサルは一瞬目を瞠った後、すぐに艶っぽい笑みを浮かべながら小さく頷いた。
その微笑みに誘われるように優斗は口付けをしようと顔を近づけるが、途中でカエサルの人差し指によって阻まれてしまう。
「こら……キスはダメだと言っただろう?」
眉尻を下げ、少し困った様な笑みをみせてカエサルは優斗を窘めた。
だが、優斗は負けじと口元に当てられた手を取り、その指にぺろりと舌を這わせると、悪戯っぽく笑って囁いた。
「――んじゃあ、今すぐ抱きたいっす。ちょうどそこにベッドもある事だし――」
「は?」
優斗はきょとんとしているカエサルの身体をひょいと抱え上げると、そのままベッドへと運んで横たえ、その上に覆いかぶさった。
「ちょっ、待て、ユウト!ここは仕事場だぞ!?何考えてるんだ!」
焦ったように声を上げるカエサルに対し、優斗は真顔で答える。
「え?今からここでSEXするんすけど?」
その言葉にギョッとした様子のカエサルだったが、すぐに気を取り直して抗議する。
「わ、私は嫌だぞ!?こんな誰が来るか分からないようなところで!」
「大丈夫っす!どうせ今日はもう誰も来ませんって!」
そう言って優斗はニッとカエサルに笑いかけると、そのまま彼の首筋へ顔をうずめて吸い付いた。
「んっ……こら、やめなさい!やめないと怒るぞ!」
必死に身じろぎしつつ抵抗するカエサルだったが、そんな彼にはお構いなしに優斗は慣れた手つきで白衣をはだけさせると、ワイシャツの上から彼の胸を弄り出した。
そして、小さな突起を見つけ出すと、服の上からそこを指先で刺激し始める。
「やめっ……ぁっ……」
途端に、カエサルの口から甘い吐息が漏れる。
(相変わらず感度が良いなあ……ふっ、可愛い……)
口ではダメだと言いつつも、身体はしっかりと反応しているカエサルの様子に気を良くした優斗は更に大胆になっていく。
優斗はカエサルのシャツのボタンを一つずつ外していき、次第に露わになる肌に舌を這わせていった――その時だった。
「すみませ~ん、カエサルさん、この依頼なんですが――」
突然医務室のドアが開いて、一人の女性が入って来た――受付嬢のエマだ。
エマはベッドの上の二人を見るなり顔を真っ赤にして叫ぶ。
「わ、わぁっ!?な、なな何をやってるんですかっ!?」
慌てるエマを尻目に優斗はカエサルを組み敷いた姿勢のまま彼女に声を掛けた。
「あ~……すんません、今取り込み中なんで後にしてもらっていいっすか?」
苦笑いしつつ、立ち去れと言わんばかりの視線を彼女に向ける優斗だったが、下から手が伸びて来たかと思うと、ゴツンと鈍い音と共に額に拳骨が落とされた。
「イテッ!?何するんすか!?」
涙目になりながら抗議する優斗に対し、カエサルはニッコリと微笑みかける(だが、目は笑っていない)。
「それはこちらの台詞だ……ユウト。ここは仕事場だと何回言ったら分かるんだい?ん?」
いつもの穏やかな声色が逆に怖い――優斗は引きつった笑顔で答える。
「いや~、すんません……なんか無性にムラムラしちゃって……」
「はぁ……君はまったく……」
呆れたように溜息をつき、優斗の下から抜け出したカエサルは乱れた服を手早く直した後、眼鏡を押し上げながらエマの方へ向き直り笑顔で答えた。
「すまないね……見苦しい所を見せてしまったようだ」
申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べるカエサルに、ゆでダコのように顔を真っ赤にしたエマは慌てて手をパタパタと振って否定する。
「い、いえ!むしろこちらがお邪魔したみたいで申し訳ありません……」
実は、このギルド内でエマだけは優斗とカエサルの関係を知っているのだ。
顔を赤くしたまま頭を下げるエマに対し、カエサルは苦笑を浮かべる。
「いや、気にしなくていいよ――それで、依頼というのは?」
話題を変えるべくカエサルが問いかけると、エマは思い出したように顔を上げ話を続けた。
「あ、はい!実はこれなんですが――」
彼女が慌てて手にしていた依頼書をカエサルに渡している姿を、ベッドに座ったまま眺めている優斗は少し残念な気持ちになっていた。
(あーあ……もうちょっと遊びたかったんだけどなぁ……)
優斗は恨めし気な視線をカエサルに向けるが、当の本人はまるで気にしていない様子でエマから書類を受け取りそれに目を通している。
そんな二人のやり取りを、優斗はカエサルにゲンコツされたオデコをさすりながら黙って見守る事にする。
「ふむ、これは……なぜ私のところに?誰も引き受けてくれないのかい?」
依頼書に目を通していたカエサルは眉間に皺を寄せながらエマに問いかけると、彼女は申し訳なさそうに答える。
「そうなんです……みんな怖がってしまって……」
「まぁ、そうだろうな……無理もない」
(ん?みんなが怖がる依頼って……?)
その依頼内容に興味が湧いた優斗は、ベッドから降りて二人に近付くと横から覗き込みながら問いかける。
「その依頼って何なんすか?」
するとエマが顔を上げ、優斗に向き直り答えた。
「隣町の貴族、クシュール家からのクエストです……依頼内容は、『屋敷内で起きている不可解な現象の解決、及びご子息の護衛』となっています」
「不可解な現象???」
エマの言葉に優斗が首を傾げていると、横に立つカエサルが「読んでみるかい?」と言いつつ書類を差し出して来た。
優斗はそれを受け取り目を通してみた――。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる