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第4話 拾った男
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ギルランスは男を拾った――。
〝カズヤ〟と名乗るその男は、どうやら記憶喪失のようで自分の名前しか覚えていないようだった。その他の事は全く分からないらしく、出身や職業等、自分に関する事は何一つ覚えていない上に、ここがどこかという事さえも分かっていないようだった。
ただ、黒髪に黒い瞳という容姿に加え、着ている服からして、おそらく異国の人間だろうという事は想像がついた。もしかしたら他国から何らかの理由で流れて来たのかもしれない、とも考えられたが……。
(しかし、こんな人種、見た事も聞いたこともねぇな……)
いつものギルランスならば、そんな得体の知れない人物などそのまま放置するところ、何故か今回は放っておく事が出来ず連れ帰ってしまったのだ。
ギルランスはチラリと横で無防備に眠る和哉へと視線を向ける。
(警戒心の欠片もねぇな……)
少し呆れつつもじっとその寝顔を見つめた。
(それにしても変わったやつだな……びくびくおどおどしてるかと思えば、妙に図々しい所もあるし、表情もころころ変わる……おまけに俺みたいな奴にも平気で話し掛けてくるしな……変な奴だ)
そう思いながらもギルランスは不思議と嫌な気分にはならなかった。寧ろ面白い奴だと思うのだった。
焚き火の灯りに照らされるその寝顔は、自分と同じか少し年下くらいに見える。さらさらとした黒い髪に、今は閉じられているその目は、子犬のような黒目がちで大きな瞳をしていた。整った目鼻立ち、薄桃色の花びらを思わせるような唇、その肌は白く、長い睫毛が影を落としている。どことなく神秘的な雰囲気を感じ、思わず見入ってしまうほどだった。
(綺麗な顔立ちだな……都市部の舞台とかで歌ったり踊ったりして女どもにキャーキャー言われてる、偶像っうのか?アレみてぇ……)
そんな事を考えながら暫く見つめていたギルランスだったが、そのうち飽きてきてゴロンと横になった。
(まぁいいか……どうせすぐいなくなるんだしな……)
そう思いつつ目を閉じたその時――
「――――」
不意に眠っている筈の和哉が何か言ったような気がして、ギルランスは訝しげに瞼を開いた。起きているのか?と思いつつ振り向きその顔を見るが、目は閉じられたままだった。だが――閉じている筈の和哉の目尻から涙がひとすじ、ツゥと流れ落ちるのをギルランスは見逃さなかった。
(……なんだ? 泣いてんのか?)
不思議に思いジッと見つめていると和哉は眠りながら微かに呟いた。
「……父さん……母さん……」
それを聞いた瞬間、ギルランスはドキリとした。その声があまりにも悲痛だったからかもしれない。それと同時に自分の胸の奥に何かが込み上げてくるのを感じた――それが何なのかは分からなかったが無性に落ち着かなくなり、ギルランスは和哉から目を逸らした。
そして大きく溜め息を吐き、頭をグシャグシャと搔き乱すと小さく独り言ちる。
「……チッ、めんどくせぇな……」
吐き捨てるようにそう言うと、ギルランスは和哉に背を向けるようにゴロリと寝返りを打ち、再び目を閉じたのであった……。
〝カズヤ〟と名乗るその男は、どうやら記憶喪失のようで自分の名前しか覚えていないようだった。その他の事は全く分からないらしく、出身や職業等、自分に関する事は何一つ覚えていない上に、ここがどこかという事さえも分かっていないようだった。
ただ、黒髪に黒い瞳という容姿に加え、着ている服からして、おそらく異国の人間だろうという事は想像がついた。もしかしたら他国から何らかの理由で流れて来たのかもしれない、とも考えられたが……。
(しかし、こんな人種、見た事も聞いたこともねぇな……)
いつものギルランスならば、そんな得体の知れない人物などそのまま放置するところ、何故か今回は放っておく事が出来ず連れ帰ってしまったのだ。
ギルランスはチラリと横で無防備に眠る和哉へと視線を向ける。
(警戒心の欠片もねぇな……)
少し呆れつつもじっとその寝顔を見つめた。
(それにしても変わったやつだな……びくびくおどおどしてるかと思えば、妙に図々しい所もあるし、表情もころころ変わる……おまけに俺みたいな奴にも平気で話し掛けてくるしな……変な奴だ)
そう思いながらもギルランスは不思議と嫌な気分にはならなかった。寧ろ面白い奴だと思うのだった。
焚き火の灯りに照らされるその寝顔は、自分と同じか少し年下くらいに見える。さらさらとした黒い髪に、今は閉じられているその目は、子犬のような黒目がちで大きな瞳をしていた。整った目鼻立ち、薄桃色の花びらを思わせるような唇、その肌は白く、長い睫毛が影を落としている。どことなく神秘的な雰囲気を感じ、思わず見入ってしまうほどだった。
(綺麗な顔立ちだな……都市部の舞台とかで歌ったり踊ったりして女どもにキャーキャー言われてる、偶像っうのか?アレみてぇ……)
そんな事を考えながら暫く見つめていたギルランスだったが、そのうち飽きてきてゴロンと横になった。
(まぁいいか……どうせすぐいなくなるんだしな……)
そう思いつつ目を閉じたその時――
「――――」
不意に眠っている筈の和哉が何か言ったような気がして、ギルランスは訝しげに瞼を開いた。起きているのか?と思いつつ振り向きその顔を見るが、目は閉じられたままだった。だが――閉じている筈の和哉の目尻から涙がひとすじ、ツゥと流れ落ちるのをギルランスは見逃さなかった。
(……なんだ? 泣いてんのか?)
不思議に思いジッと見つめていると和哉は眠りながら微かに呟いた。
「……父さん……母さん……」
それを聞いた瞬間、ギルランスはドキリとした。その声があまりにも悲痛だったからかもしれない。それと同時に自分の胸の奥に何かが込み上げてくるのを感じた――それが何なのかは分からなかったが無性に落ち着かなくなり、ギルランスは和哉から目を逸らした。
そして大きく溜め息を吐き、頭をグシャグシャと搔き乱すと小さく独り言ちる。
「……チッ、めんどくせぇな……」
吐き捨てるようにそう言うと、ギルランスは和哉に背を向けるようにゴロリと寝返りを打ち、再び目を閉じたのであった……。
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