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グラナダのマリアンナ教会
しおりを挟むグラナダまでは馬車の旅で数時間と言った所だ。フローレンスは割と我慢強い方だがこの移動は結構堪えている。
グラナダが近づくにつれ景色が変わって来た。
山よりも海の見える面積が増え、人々の服装から気候が暖かい事がわかる。
街路樹も暖かい地方の植物に変わってきた。
グラナダは暖かい気候の住みやすい海沿いの街だった。
往来にも活気に溢れ街が生き生きとして見える。この街の青い空ですら今のフローレンスには眩しく感じた。
「お嬢様、あともう少しの辛抱ですよ。」と御者がフローレンスに気を遣い一声かけてくれた。
「ありがとう。頑張って下さいね。」と労いの言葉を返し、ふと手に持っていたあのチラシをもう一度読み直した。
チラシには裏側にも説明があり、間借りするお家は布教活動に熱心な子爵家で、滞在費はお布施として教会に寄付して欲しいとの事。
作業時間は朝8時から夕方5時ぐらいまで。
作業者には昼食が賄いとして出る。飲み物はお茶ぐらいなら出る。そう言った感じの事が綴られていた。
徒歩で行ける範囲に街があり日用品程度ならそこで事足りるらしい。良かった、仕事を持ってきているので何かあっても文具関係は手に入れられそう。
そんな事を考えていたら、馬車が急に停まった。
「お嬢様、着きましたよ。」と御者が声をかけた。
「はい、わかりました。」と返事をすると、座席からゆっくりと立ち上がり、長時間座り続けていたので老婆の様に腰を屈めて馬車から降りた。
馬車から降りると海が近いせいかフワッと潮の香りが鼻腔をくすぐった。
「うぅーん。」と伸びをし首をぐるぐると回した。腰をトントンと叩き上体を起こすと目の前に眩しいばかりの白壁の割と大きな教会が建っていた。
最近付いたと思われるネームプレートに
「マリアンナ教会」と書かれている。
フローレンスは御者に目配せし、教会のドアへ向かって歩き出した。ドアの近くまで来るとまだ新鮮なペンキの香りがした。
コン、コンとノックすると「はぁーい。」と女性の声が中から響いて来た。
「すいません、チラシの募集を見て来た者です。担当の方にお目通り願えますでしょうか?」
そう告げるとドアが開いた。
現れたのは30代後半ぐらいの女性に見えた。
「チラシをご覧になられた方ですね。ありがとうございます。どうぞこちらへ。」と教会の中へと案内された。
通路を通り過ぎ、新しい礼拝堂に着くと一つの椅子を示し、どうぞこちらでお待ちください。と言われた。
フローレンスは手持無沙汰でじっと待っていた。しばらくすると神父服に身を包んだ40代ぐらいの男性がやってきた。その後ろには先ほど案内してくれた女性も付いている。
「こんにちは。私はこの教会で神父を務めますカーネルと言います。後ろにいるのは妻のサラです。ようこそお越しくださいました。」と二人ともフローレンスに向かい一礼をした。
「すでにほかの方もお見えで買い出しに行って頂いています。今回の募集で貴女を含め3名の応募がありました。一名は女性の方で70代の女性の方です。もう一名はここグラナダの画家です。」
「その2名がもうすぐここへ帰ってくると思いますが、すいませんお名前を教えて頂けますか?」
「はい、私はフローレンスと言います。ここから少し離れたトリニティからやって来ました。なので滞在期間中は子爵家のお部屋を間借りさせて頂きたいと思います。後で結構ですのでその子爵家に案内をお願いできませんでしょうか?」
「間借りの件はわかりました。後からサラと一緒に行かれるといいですよ。所で絵に関しては何か。。。?」
「はい、趣味程度ですが絵本を書いています。お力になれると良いのですが、皆さんの足を引っ張らないように頑張りますね。」と答えておいた。
「わかりました。先に作業現場をお見せしますね。こちらへどうぞ。」と席を立ち近くにあったマリア像の所まで手招きされた。大きな白壁を指さし「ここにマリア様の絵を描いて頂きたいのです。」
近くで見ると結構な大きさだ。でも3か月。
やってみるしかない。
フローレンスが壁の前で考え事をしていた時、礼拝堂の入り口が騒がしくなった。
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