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6、禁断の魔術

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「禁断の魔術とは?」とフリッツも思わず尋ねる。

「うーん、詳しくは分からないが魔法を使った遺伝子操作の類いの禁術だろう。
リツドウ元帥の魔力回路をたくさんの魔法使いの命を使って再現させたんだ。まぁ、そんな方法は知りたくも無いがな。」と話すとアレクサンドラは再びお茶に口を付けた。

「そんな、ではエリーはどうしてここに居るんです?そんなのはおかしくないですか?」
と思わず噛み付いた。

「母性さ。」
「母性?」
「そうだよ。母性だよ。エリーを身籠った母親がエリーを利用されるのを恐れて自分の命を投げ打ってエリーを国の外へ飛ばしたんだ。」と何ともやり切れないと言った表情で話した。

「まぁエリーの母親も魔術師としてはかなりのエリートだったんだろう。アイツらの目を掻い潜って赤ん坊だったエリーを国外へ逃したのだから。ひょっとしたらエリーの母親はリツドウ元帥の子孫だった可能性も捨てきれない。」

「この事を我々が事前に知ってたら助けてやれたのかも知れない。まぁ、残党の存続の有無を確認出来るまでは、これからエリーを保護する事は絶対だ。」

「ただ、エリーは魔法の事は一切知らないし外で使われるのを恐れたからわざと教えなかった。ただ今回の様に無意識に恐怖を覚えたり悲しんだりと感情の起伏に任せて魔力を使う事はあるだろう。」

「だからマリー後は頼んだよ。私もあと何回こうして出て来られるかわからないしな。フリッツも頼むよ。」と話すとエリーの体から力が抜けた。倒れるエリーの体を思わず支えるフリッツ。

「とりあえずエリーをこれからどうするかだな。私の学校へは入れるつもりでいるが。寮か?」

「マリー様、学校に通うのなら私の屋敷で預かりましょう。たくさんの人間が出入りする寮は危険です。そしてこの髪と目の色は隠しておいた方が良いでしょうね。」と自分に寄りかかって眠るエリーを見ながらそう答えた。

「そうかい、まぁお前の結界を破れる魔法使いは早々いない。魔道具で良い物がある。ちょっと待っててくれ。」とマリーは部屋の奥へと入って行った。

「最初のうちはお前が髪の色を元の色へ戻しておいてやると良い。授業で早めに変化は教えるとしよう。目の色はなかなか変えられないからこの眼鏡をかけさせよう。」と何の変哲も無い眼鏡を出して来た。

フリッツはさっと呪文をかけエリーの髪の色を元のグレーに戻してやった。

「エリー、エリー。」と声をかけると「うぅーん。」とエリーが目を覚ました。バチっと、目を開くとやはりアンバーに変わっていた。

「これから長い話になるけど良いか?エリー。」そう断るとマリー先生が話した。

マリー先生は今までの話の流れを事細かく説明した。もう髪と瞳の色が変わってしまった事から話し始めた。

フリッツも専門用語などの説明を噛み砕いてわかりやすく話して聞かせた。
話が母親の事になった時は

「っ!お母さん。お母さん。」とエリーがぼろぼろと泣き出すと優しくフリッツが慰めてやった。

「よくお聞きエリー。これからは私とフリッツで貴方を保護する。そして私の授業を一日も早く理解できる様になるんだ。その為にもフリッツの屋敷で預かってもらう様にする。」

「わからない所はすぐにフリッツに聞くなどして一日も早く力を付けるんだ。わかったかい?」とエリーに言い聞かせる様に話した。


「そして自分で変化の魔法が使える様になるまではフリッツに髪の色を戻して貰うんだ。眼の色はこの眼鏡をかけるといい。」と何の変哲も無い眼鏡を渡した。

エリーが眼鏡を手に取り掛けると「あぁ、元の色に戻ってるよ。」とマリーが言った。

「すでに制服は使いの者にフリッツの屋敷に届けさせてある。明日からそれを着て登校するんだ。アレクサンドラの話だと、読み書きは最低限出来ると聞いている。1番下のクラスからのスタートだ。頑張りな。」と言いながら立ち上がった。

「エリー僕たちも屋敷へ帰ろう。」と話すと同時に魔法陣が現れた。

「フリッツ、お前の魔法陣はいつも見事だな。いずれそれもエリーに教えてやりな。」と笑っていた。

 フリッツはエリーの手を繋ぎ魔法陣へと入って行った。

「マリー先生、今日はありがとうございました。明日から宜しくお願いします。」とエリーがお辞儀をするとマリーが笑っていた。
フリッツが意識を自分の屋敷に向けたと思われたその時は

 もうそこには二人の姿は無くそこにいたと言う空気だけが残っていた。

「。。。さぁ、アレクサンドラ。アンタに頼まれた事がいよいよ始まったよ。私はいつまであの子の力を見ておけば良いんだい?」と意味深にマリーが笑った。


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