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10、魔法対決

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「エリー・クリスティアン並びにジェリー・フィードバック準備は良いか?」とこのフィールド担当のハノイ先生が両名の顔を見ながら叫んだ。

「「はい!」」と2人の声を確認すると先生は「防御壁展開!」と叫んだ。途端に身の回りに感じるハノイ先生の魔力。
観客の生徒達も感じる様で一瞬ざわついた。

「それでは始め!」とハノイ先生が叫ぶとジェリーがさっそく水魔法を仕掛けて来た。その水量としては中々の物だった。

 その事についてはエリーは織り込み済みだ。
自分に結界を2枚重ねてかけ、その水量を遥かに凌駕する熱量をジェリーの上空に発生させたのだ。

 大きな爆発音と共に両者が水蒸気に遮られ周りの人々から見えなくなっていた。

 ある意味ではハノイ先生のだったのだ。

 防御壁の中の様子が全く分からず騒ぎ出す生徒たち。ハノイ先生もゆっくりと防御壁を解いて行った。

 そこにはエリーの姿は無く、フィールドの中央にジェリーが倒れていた。
「っ、これは一体??」とハノイ先生が呟くとエリーがすぐそばに姿を現した。

「先生、コールをお願いします。」と微笑むとハノイ先生は「勝者エリー・クリスティアン!」と高らかにコールし、そこに居た生徒にジェリーを担架で保健室へ運ぶ様に指示した。

 しばらくそのフィールドを観戦していた生徒たちが騒ついていたが、ハノイ先生が「さぁ、散った散った。教室へ戻るんだ。」との指示でそれぞれが教室へと戻って行った。

 エリーは暫くそこに佇んでいたが、クルリと向きを変え教室に向かった。
 エリーが教室へ入ると間も無くケニー先生が入って来られ、先ほどの爆発は特に被害が無く、ジェリーも意識はあり無事だと発表していた。

 エリーにも説明が求められたが、「私にも何が何だか。とりあえずジェリー様がご無事で何よりです。」と答えておいた。

 次の日、廊下に次の対戦相手の発表が張り出されて居た。次は女性か。1番上のクラスの子ね。名前はジュリエットか。。。

 周りのヒソヒソ話を聞くだけなら彼女の家系は有名な炎の使い手らしい。ふぅん、そうなのか。今度はどうしようか?

 その日の放課後、エリーは図書室の隅っこに居た。本を読み次の対戦相手のプランを考えている。

「試合、面白かったね!」と頭の上から声が聞こえて来た。「そうですか、クリスさんに喜んで頂けたならそれは良かったです。」と本から目を離さずに答え本を読み続けた。

「先生の防御壁を爆発室に変えるなんてよく思いついたね。お見事だったよ。ましてや試合相手に結界まで貼ってやるってどんなに優しいの?」とこちらもお見通しである。

「いいえ、そんなのクリス様の買い被りすぎですよ。」と僅かに微笑んだ。

「次はジュリエット嬢だったっけ?」
「ええ、よくご存知で。」
「彼女の家は炎を扱わせたら天下一品だよ。この前の熱では通用しない。」と毅然とした顔で言い残すといつの間にか消えて行った。

 次は炎か。そう呟くとエリーは図書室から出て自宅へと帰って行った。

 そして、2回戦目がやって来た。フィールドは今回までは4会場でつぎの3回戦目からは3会場になる。

 エリーの次の試合はケニー先生のフィールドだった。

「2人ともそろそろ位置について貰おうか。」とエリーとジュリエットに声をかけた。

お互いに顔を合わせる事なく静かに位置に着く。

「ジュリエット・バーキン、並びにエリー・クリスティアン準備は良いか?」
「はい。」「結構ですわ。」とそれぞれが答える。その声を確認すると「防御壁展開」
とケニー先生の声が聞こえた。

「それでは始め!」と声がかかるとジュリエット嬢の足下から火の手が上がった。

 エリーは自分に結界を再び2重にかけると、「幻の蝶」と叫んだ。その途端にケニー先生の防御壁に溢れんばかりの七色の蝶が舞い始めた。「綺麗。」と観客がざわつき始めた。

 その瞬間ジュリエット嬢が倒れたのだ。苦しそうに喉元に手をやるジュリエット嬢。

「先生、早く防御壁を解かないとジュリエット様が大変な事に。」と静かにケニー先生に忠告した。

ケニー先生は急いで防御壁を解くと、ジュリエット嬢に駆け寄り近くに居た生徒に担架を要請した。

「勝者、エリー・クリスティアン」のコールも忘れなかった。

「ーーーーエリー様。」とジュリエット嬢が何とか起き上がりエリーに声をかけた。
「私の完敗です。お見事でした。」とひと言いうと担架を待たずに悠然とその場を去った。

 これでエリーは2試合とも自分の手の内を殆ど見せずに勝った事になる。

 エリーはパチンと指を鳴らすと周りの生徒は夢から覚めた様に散り散りと去って行った。

「エリー、今のはもしかして。」とケニー先生が訝しげに聞いて来た。「はい、今の試合の記憶を少しだけ忘れてもらいました。」と答えた。「もちろん先生には効きませんけどね。」とケニー先生を見て微笑んでいた。

 教室へ戻ると先ほどのそれぞれの試合内容について皆んなが活発に意見を述べて居た。エリーは大人しくみんなの話を聞いている。

 エリーの蝶がとても綺麗だったと興奮して話し出す生徒も何名か居たが、どの生徒も最後の決着の所を思い出せずにいた。

 まぁ、エリーさんが勝ったのよね?ぐらいの認識だ。

 次は同じクラスの男の子になった。名前はニクラウスと言う。侯爵家の長男だが大人しそうな子だった。そのニクラウスがふと気がつくとエリーの前に立って居た。

「エリーさん、次は僕とだよね?宜しくね。」と手を差し伸べて来た。

「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。」と答えるとお互いに握手をした。手を合わせた瞬間弱くだがピリっとしたので恐らく彼も稲妻を使うんだ。

 そう考えながら次の試合の為に図書室へ向かって居た。



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