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16、キーン・バルデスという男
「ラリー君、私が知っている事は以上だ。2~3年程前からアルファザードから情報が入りにくくなっていてね。私の妹の情報も入って来てないんだ。無事だといいのだが。」とデニーロ騎士団長はそう話すと心配そうにそっと目を伏せた。
「デニーロ騎士団長お気持ちはごもっともです。両国とも何らかの情報統制を引いているのでしょう。」ラリーがそう話した時だった。
「失礼します。デニーロ団長、次回の部内試合の件ですが・・・・・・。」と扉を開けて1人の若い男が入ってきた。
思わず2度見したくなるぐらいの大男だ。それだけではない。肩幅も広く騎士団支給のシャツを押し上げている筋肉もかなりの物だと推測出来る。
その男はラリーを視野に収めると「あっ、先客でしたか?これは失礼しました。」と体の向きを変え部屋から出て行こうとした。
「あっ、キーンちょっと待って!いいところに来た。」とデニーロ騎士団長は一瞬ラリーの方をチラッと見るとキーンと呼ばれる男に向かって「紹介するよ。この男はラリー・クリストフだ。お前も一度ぐらいは名前を聞いた事ぐらいあるだろう?」とラリーを紹介した。
ラリーもこれを無視する事は出来ず「ラリー・クリストフです。チャールズ皇子のところで働いています。主に皇子の仕事を補佐しています。」と軽くおじきした。
キーンは少し考えたあと
「私の名はキーン・バルデスだ。初めてお目にかかる。君の名は社交界でよく耳にしていた。なかなかのやり手だと聞いている。」と言いながら目を合わせるとラリーに握手を求めて来た。
ラリーもその手を握り返すと「もしかしたらチャールズ皇子の仕事の一環で今後キーン様のお手を煩わせることになるかも知れません。その時はどうぞ宜しくお願いします。」とにっこり笑った。もちろん社交辞令の笑みだ。
しかしキーンはにやりと笑うと「我が国の社交界では君は超有名だ。どんな美女も受け付けない氷のような男だと。あっ、気に障ったのならお詫びする。」とラリーの表情を伺うようにそう話した。
ラリーは「いやはや、噂話には困った物ですね。そんな事なんて有りはしないのに。」とキーンと目を合わせて笑うと聞こえるように呟いた。
ラリーのまるで神が与えた造形のような笑顔を見ながらキーンは
「ーーーーこれはこれは。確かに世の中の女性はほっとかないだろう。ただの色男ではなさそうだ。」とかけた言葉とは裏腹の鋭い目つきでそう話した。
「いやいや、それは買い被りすぎというものです。では私はこれで失礼します。急な訪問にも関わらずお付き合い下さり感謝します。」とデニーロ団長に一礼すると部屋を出た。
ただ中にはいくつかの有力な情報があった。
何とリーベルの教会本部に俺の母親の実家であるハントン家について、ヤプール国から問い合わせがあったらしい。もしかしたら妹はヤプール国にいるかも知れない。
そしてデニーロ騎士団長が帰り際にキーン・バルデスの隙をつきラリーの耳元で小さな声で「君の方で『アルファザードの聖女伝説』を調べてみてくれ。」と耳打ちしたのだった。
チャールズ皇子の執務室へ戻る最中に足を止めて空を見上げると雲ひとつない澄み切った青空が見える。
「・・・・・・聖女伝説か。デニーロ団長は何か掴んでらっしゃるのか?しかしなかなか難しいな。」そう呟くと再び歩き始めた。
おそらく先ほど紹介された男が次の騎士団長なのだろう。確かバルデス家は王妃側の家柄だったな。
そしてバルデス家の派閥は戦争賛成派だったはず。デニーロ団長も我がクリストフ家もどちらかと言うと中立派だしな。
ラリーは国王から命じられているアルファザード国への出兵のメンバー構成を考えながらチャールズの執務室へと戻って行った。
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