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⑨御者パーシー。

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今回の旅は目的地のオレイン地方まで馬車を貸切ってある。

オズワルド達と一緒に時間を過ごすに連れ、この馬車の御者とも仲良くなった。この御者の名前をパーシーと言い、この男が謂わゆる「当たり」であった。

道を行きながら「旦那様方、もう直ぐ有名な湯治場があります。良かったら寄りますよ?騎士の皆さんでしたら、古傷の一つや二つお持ちでしょう?」

「おっ、気が効くね。少し寄って貰えるかい?」

「分かりました。あと10分ほどで着きます。着いたら声をかけますね。」とオズワルド達を飽きさせない様に努めてくれたり、また悪路に入る時には

「旦那様方、少し揺れます。ご注意を。」と声をかけた。


有名な景色が見えてくるとそのガイドもしてくれた。本当に至れり尽くせりだった。なので3人ともパーシーを信用し、いつしかパーシーとも食事を共にする様になった。

そして、オレイン地方に入り最後の休憩場所に入った。



休憩所で一服し、さぁ再び馬車へ乗り込もうとした時、パーシーは足を止め前方をいく3人に向かって「あと少しで目的地周辺に入ります。今までありがとうございました。そして騎士団の皆さん、いつも国を守って頂きありがとうございます。感謝します。この先の旅の幸運を心よりお祈りいたします。」と言って恭しく一礼したのだ。



オズワルドはパーシーに歩み寄ると手を握り、「パーシー殿、我々こそ世話になった。私が3人を代表して礼を言う。」と感謝の意を告げた。


そしてもう直ぐオレイン地方の中心部。オリエントシティーへ着くと言うタイミングでフランキーが2人に言った。


「私は今回の旅の最大の功労者は今の所パーシー殿だと思う。なのでチップを弾もうと思う。2人とも良いだろうか?」

ケチで有名なこの男が言うのだから2人に異存がある訳が無い。


「僕は良いですよ。パーシー殿、よく気が利いてて心強かったです。」

「あぁ、構わない。細かい事はフランキーお前に任せる。」とオズワルドも言った。


とうとう目的地に着いた。オレイン地方オリエント市だ。

「せっかくなので観光案内所の前に馬車を付けます。」と言って観光案内所の前に馬車を停めた。

手早くパーシーは3人の荷物を下ろすと「では私はこれで失礼します。皆さんお達者で。」
と言いつつ馬車に乗り込もうとした。そこを「パーシー殿。」とフランキーが呼び止めた。

「これ。少ないですが。」と小袋をパーシーに手渡した。パーシーは袋の中を見ると

「こっ、こんなに頂けるんで??助かります。実はお袋が病気で伏せっております。その治療ために使わせて貰います。」そう話すと涙を流してわんわん大泣きした。

そのパーシーの肩をポンと叩きマイクが言った。「パーシー殿、お陰で楽しく過ごせました。ありがとう!」

その様子を温かい目でオズワルドは見ていた。





パーシーが馬車に走り去っていくのを見送ると
「ではせっかくパーシー殿が気を利かせて観光案内所で停めてくれました。早速行きましょう。」とフランキーが歩き始めた。


フランキーが観光案内所でピオニー村へのアクセスを聞いている。残る2人は近くのカフェで一服していた。


「お2人ともお待たせしました。」と言ってフランキーがマイクの隣の席に座った。

すかさず店員を呼び、お茶とサンドイッチを注文した。

「おう、フランキーどうだった?」

「そうですね。ここからだと馬車に乗るとあと半日近くかかる事が分かりました。」

「えー、また馬車に乗るんですか??僕お尻が痛くって~~。」とマイクが呟く。


「そうか。」

「でもちょっと見て下さい。」と言ってフランキーは机の上に地図を広げた。

「今の現在地はここです。」とある一点を指差した。

「それからここ、ここにピオニー村があります。よく見てください。」

「えっ、そう言えば湖に面してるんだな?」

「はい。それでですね。観光案内所の人が言うには、今の時期だけ湖を周遊する遊覧船が出てるらしいんです。この遊覧船は実はピオニー村にも停まるらしいんです。」と言って2人を見た。



「んー、船か。乗った事ないなぁ。」
「実は僕もです。」
「そうなんですね。実は私もです。」



「「じゃあ決まりだな!!」」



それから2時間後、3人は船上にいた。

「凄いです!オズワルド様。凄い水鳥ですね!!」とマイクがはしゃぎ喜んでいる。

「こら!マイク。こんな所で団長の名前を大声で叫ぶんじゃ無い。それでなくても団長は有名人なのに。」

「・・・すいません。」
そんなマイクの隣にオズワルドが並んだ。

「まぁ堅い事言うなよ。フランキー。別に良いじゃねぇか。」と話すとオズワルドは遊覧船のデッキ近くを飛んでいる水鳥を眺めていた。



そうこうしているうちにとうとうピオニー村に着いた。遊覧船のタラップを降りピオニー村を眺める3人。


「「・・・・・・・・・・。」」




「しかし驚くぐらい何にもない所ですねぇ。」とマイクが呟いた。

「・・・そんな事言うなよ、マイク。」オズワルドがポツリと言った。


「とりあえずあそこが役場みたいです。あそこへ行ってみましょう。」とフランキーが赤い屋根の建物を指差し歩き出した。


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