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12、アトラス殿下

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コンコン


リズミカルに軽快にある部屋の扉がノックされた。
「はい、お入りください。」と応答がある。
「失礼する。」と入室した。

ここは王宮内にある第3皇子レオンの職務室だった。

ノックした人物は第4皇子アトラスだ。
部屋の中を見渡すと最近気にかけている女性にとてもよく似た男の顔が見えた。

「失礼だが、貴殿がオフェーリアの兄上か?」と声をかけると
「はい、オフェーリアは妹です。何か妹が殿下にご迷惑を?」と聞き返された。
「いや、妹さんとは同じクラスなのだが、今日はこちらを頼まれて来たんだ。」と紙袋を渡した。
「妹が殿下を使うとは、なんて失礼を。兄として心からお詫びいたします。」と詫びてきた。

この男のしぐさからは誠実さが伝わるな。
「いいんだ、こちらのほうが先日助けてもらった。せめてもの礼だ。本来ならもっと褒美を取らせたかったほどだからな。」

「殿下のお言葉、誠に恐縮です。確かに受け取りました。」

「職務中すまなかった。ではこれで失礼する。」



◇◇◇



次の日のお茶の時間、アトラスはお茶の相手として母親に呼び出されていた。

めんどくせえ。と毒づきながらもきちんと向き合うところを見ると優しい所があるのだろう。

「母上、只今参りました。」

「アトラスよく来てくれたわ。まあ掛けて。」と着席を促された。テーブルの上には色とりどりのお菓子が並んでいた。

「お茶の用意を。」とメイドに指示を出す。

ほどなくして目の前にお茶が運ばれてきた。

それを確認すると「アトラス、お茶の前にこちらを見て。」と目の前にひと瓶のジャムが差し出された。

「母上、これは?」
「実は今日アトラスを誘ったのはこれを見せたかったのよ。まあ開けて見て。」

手に取りキュっと蓋を開けてみた。とたんに広がる薔薇の芳香。

「これは。。。。。凄い。」「でしょ?これ貰ったんだけど誰にもらったんだと思う?」

「全然わかりません。皆目見当もつきません。母上答えを。」

「レオンよ、レオン。びっくりでしょ?誰にもらったのか最後まで言わなかったのよ。」

「いい人なのかしらね。」とアトラスが何か知ってるんじゃ無いのかという目で見ている。

「アトラス何か聞いてない?」
「私には特に何も。。。。」
「まあいいわ。ひと匙お茶に入れて見て。」と勧められ瓶からすくい紅茶に混ぜてみた。
温められて立ち上る薔薇の香り。

「これは。。。。。素敵ですね。量産が可能なら我が国の特産にしたいぐらいだ。」
「そうなのよ、ジャムならケーキなどの加工にも入れるのが可能ですもの。」
と母親と話していて気が付いてしまった。


彼女だ。紙袋の中身はこれだ。さすがだな。明日問い詰めてやろう。レオンに渡したと言う所が気に食わないが。



◇◇◇



次の日、登校して来た彼女を教室に入る前に捕まえた。

「・・・あれオフェーリア、君だろう?」と彼女を見ながらゆっくりと聞いてみた。

「えっ、違いますよ?」と白状げろったした。

「俺は何も言ってないぜ。何が違うんだい?」と切り返すと目が泳ぎ出した。

「殿下、ひょっとして薔薇のジャムの事ですか?どうでした?」と開き直られた。開き直るの早っ!

うっ!「あぁ、うん。良かった。」とこちらも正直に話した。「先日、兄に呼び出された話しましたよね。」

「実は以前レオン殿下に我が領の夕食をご一緒した事があるのです。ご存じだと思ってたんですが。。。」

「あぁ、レオンから聞いた。ごめん問い詰める様な聞き方だった。」

「それは構いません。面倒くさかったので。説明するのが。」と言い返すと

殿下がへっ、と驚いた顔しながら「普通そんな言い方する?」

「しても良いんですよ。お互いもう気にしてませんよね?で
話を続けるとその時のお礼にと王宮の薔薇が見頃だからと兄を通じてご招待して頂いたのです。」

その時に「案内して頂いた途中でとても香りの良い薔薇があったので何本か戴き、記念にジャムにしてみたのです。これでわかりますか?」

「あぁわかったよ。」「ではもうすぐ授業も始まるので失礼します。」
やっぱり彼女は手強いわ。惚れた弱みか。







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