三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第20話

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 眩暈だった。
 眩暈は割とよくある。
 耳石が剥がれやすい体質だからだ。
 だから別に特別なことでもなかった。

 ただ──

 勇凛くんが私に覆い被さっている。

「すみません!大丈夫ですか?」

 勇凛くんが顔を上げた時、目が合った。
 見つめ合ったまま、時計の秒針の音だけが聞こえる。
 心臓が早く脈打つ。

 その時自然に私たちの唇が重なった。

 あの時は一瞬だった。
 今度は、10秒くらい。

 そのあと、私も勇凛くんもお互いの顔が見られなかった。

「……眩暈は割とよくあるんだ。驚かせてごめんね」
「そうなんですね……俺今日も泊まりますよ」
「ううん。大丈夫。明日学校あるんだから、今日は帰って」

 私が促すと、「わかりました」と渋々了承してくれた。
 勇凛くんは立ち上がって、私に手を差し伸べてくれた。

「帰ります」
「うん」

 ぎこちなく話す私たち。
 私は勇凛くんを見送ったあと、部屋のフローリングにへたりこんだ。

「こんなんじゃ心臓がもたない……」

 その時、スマホに着信があった。
 姉からだった。

「もしもし」
『退院した?』
「うん、退院したよ」
『あの男の子とはどうなったの?』
「うん……。これから夫婦として二人でやっていくつもりだよ」
『そうか~。おめでとう!式は?』
「まだ何も考えてないよ」
『まあ急がなくていいからねー。ところでさー、あんた、その子の扶養とか社会保険関係ちゃんとやってる?』
「え?」

 何も考えていなかった。

「え、扶養って、どうすればいいの?」
『今彼学生なんでしょ?なら親の扶養に入ってるんじゃない?』
「たぶん……」
『あんたの扶養に入れれば、配偶者控除で手取りあがるよ』

 わけわからない……。

『彼のご両親に会いに行って相談すれば?』
「え──」
『早くやった方がいいと思うよ。名義変更とかもね~』

 やらなきゃいけないことが、どんどん増えてゆく。
 勇凛くんの親に会いに行く……?
 可愛い息子を奪った社畜OLとか絶縁されたらどうしよう……。

「姉ちゃん……ヤバい私色々自信ない」
『あんた一人じゃないんだから、二人で頑張りなさいよ』

 電話を切った。

 もう何を言われても、行くしかない。
 まず勇凛くんに連絡しよう。
 私は勇凛くんにメッセージを送った。

『扶養のことで相談がある』

 しばらくすると返信が来た。

 勇凛『なんでしょうか』
 七海『勇凛くん親の扶養に入ってるよね?』
 勇凛『はい』
 七海『私たち結婚してるから、私の扶養に入った方がいいと思って』

 その後返信がなかなか来ないと思ったら着信があった。

「もしもし」
『七海さん。俺、七海さんの扶養に入るのはキツイです』
「え、なんで……?」
『妻に養われてるって感じが、ちょっと……』

 プライド的に難しいかな……。

「勇凛くんが扶養に入ってくれると、家計が助かるんだ……」
『そうなんですか?』
「うん。税金の関係で」

 ──沈黙

『……わかりました。じゃあ、四月まではそうします』
「ありがとう。あとね、その件も含めて、勇凛くんのご両親に会おうかと思ってるの」

 正直めちゃくちゃ怖い。

『両親は仕事で海外に住んでます』
「え?」

 海外……?

『家の細かいことは兄達がやってます』

 お兄さん達……?
 じゃあ私、お兄さん達に会いに行かないといけないの?

「わかった……。じゃあご家族が都合がいい日にお伺いできれば」
『……わかりました。一応両親にも説明します。ただ──』

 ただ……?

『兄達は厄介なので、必要最低限の会話で早く切り上げましょう』

 どういうこと!?
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