【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き

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第5話 嫉妬

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『一目惚れだった』
『付き合ってほしい』

突然の告白に、頭が真っ白になった。

「考えておけ」

「はい……」

私は俯いたまま答えた。

時計を見ると、もう終電ギリギリの時間だった。

「タクシーを呼ぶ」

「ありがとうございます……」

待っている間、重い沈黙に包まれていた。

私は窓の外を見つめながら、胸の奥で渦巻く感情を整理しようとした。

河内さんの横顔をちらりと見ると、その端正な顔立ちから感情は読み取れなかった。

タクシーがマンションに着いて、乗ろうとすると。

「藤田」

河内さんに呼ばれた。

「明日も……普通に接してくれればいい」

私は小さく頷いて、タクシーのドアを閉めた。

電車の中でも、家に帰ってからも、河内さんの言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。

一目惚れ……。

私なんかに?

* * *

次の日、いつものように出勤した。

一晩考えても、答えは出なかった。
河内さんの気持ちは嬉しいけれど、立場も違うし、私には恋愛経験もない。
どうしたらいいのかわからなかった。

「藤田さん、この資料のことで確認があるんだけど」

同じ部署の田中さんが私の席にやってきた。

「はい、どちらの件でしょうか?」

「昨日のデータの件で……」

私は田中さんと資料を確認しながら話していた。
田中さんは二つ上の先輩で、いつも親切にしてくれる。

「ここの数字、間違ってるよね?」

「あ!本当ですね。申し訳ありません……」

「俺もたまにやるから、お互い気をつけてやってこう」

とても優しい笑顔だった。
私は田中さんに指摘された資料の箇所を修正していた。

その時、ふと誰かの視線を感じて振り返った。
でもそこには誰にもいなかった。

* * *

その夜はうちの部署の飲み会だった。

つい癖でラウンジでやってたような所作をしてしまっていると……

「藤田さん、まるでホステスみたいだね」

酔った上司に言われた。

「いえ……よく父の付き合いでお酒の席にいた時があったので……」

嘘だ。
私が実家から出たのは高校を卒業してからだ。

「もしかして、そういう仕事してたんじゃなくて?」

いつも仕事を振ってくる女の先輩にチクリと言われた。

その時、スマホに着信があった。
河内さんからだった。

私はお店の外に出た。

「はい、どうされましたか……」

「今日来れないか?」

「今部署の飲み会の最中で……」

その時、部署の人が何人か店から出てきた。

「あ、藤田さん、次別のところに行こうって話になってるけど、どう?」

田中さんに言われた。

「あ!ちょっと待ってください!」

「すみません、明日行きますので……」

河内さんに伝えた。

「今から迎えに行く」

「え?」

プツッと電話が切れた。

今から来る?って私がどこにいるかも知らないのに……

「藤田さんどうする~?」

他の社員に聞かれた。

「あ、先に行っててください!」

私はよくわからないまま、最寄駅で待っていた。

暫くするとまた電話がかかってきた。

「今どこにいる?」

「会社の最寄り駅です!」

少ししたら駅のロータリーに河内さんの車が来た。

私が駆け寄ったら窓が開いた。

「乗って」

「はい!」

車に乗ったら、勢いよく動いた。
心なしか運転が荒く感じる。
怖い……。

「あの……どうしたんですか?」

河内さんは何も答えない。

そのまま事故もなく無事にマンションに着いた。
車を降りた後、足早に部屋に向かう河内さん。

「待ってください!怒ってるんですか?」

訳がわからない。
そのままついていくしかなかった。
エレベーターでも無言。

怒らせてしまったの?
何も思い当たらない。

そのまま部屋に入ったら、河内さんは真っ直ぐリビングに行ってソファに座った。
恐る恐る私もリビングに入った。
何を言っても答えてくれないんじゃ、何も言えない。

気まずい沈黙が流れる。

「悪かった、無理やり連れてきて」

やっと話してくれた……!

「いえ……びっくりしましたけど」

「耐えられなかった」

「え?」

「君が他の男と話してるのを見るのが」

それは……つまり嫉妬……?
どうすればいいかわからないけど……

「あの、何か飲みますか?」

「ああ」

河内さんにグラスやボトルなどの場所を教えてもらって、私は注いだグラスを渡した。
それを河内さんは少し飲んだ。

「……ちょっとここで待ってて」

河内さんは別の部屋に行って、何かを持ってきた。

「これ、着てくれる?」

渡されたものを見たら、とても綺麗で上品なドレスだった。

「これは……」

「今日仕事の合間に寄った場所に飾ってあったドレスだ。着てほしい」

「はい……」

私のために……?
よくわからないけど、別室でそれに着替えた。
そして河内さんに見せた。

「いかがでしょうか……?」

「うん、すごい似合ってる」

そのまま隣に座った。

………これでいいんだろうか。
私は専属の嬢になる取引をしただけだから、これ以上する事もないんだけど。
でも、昨日、一目惚れって、付き合ってほしいって言われて……

どうしよう……!

「手に触れてもいい……?」

「え!!」

「取引以外の事はダメだったな……」

だんだんと見ていて気の毒に思えてしまった。

「いいですよ……手なら」

私は早速許してしまった。
ゆっくりと河内さんの手が、私の手を包んだ。

「ありがとう。安心する」

河内さんの手は大きくて暖かくて……だんだんと私の鼓動が速くなってきた。
男の人と手すら繋いだ事がなかった私には刺激が強すぎる!

「もういいですかね……?」

その時、突然抱きしめられて、唇が触れた。
一瞬の出来事だった。

「え……?」

頭が真っ白だった。

「すまない……」

私は思わず、河内さんの部屋を何も告げずに飛び出した。

壊れそうに高鳴る心臓。
唇に残った柔らかい感触……。

私のファーストキスは唐突に奪われた。
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