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46イアラ女王の苦悩
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サンビチョ王国軍は睡眠不足と虚脱感の為か、神降臨街からわずか三キロメートル先の草原で、テントもなく野宿していた。
サンビチョ王国兵はサコン司祭の言葉を信じて、正義の戦いと思っていたが、
聖人テテサ修道女の奇跡を目撃した為に、ガイア様の意に反していたと気付いて、
九つの徳を唱えながらも、虚脱感に囚われていていた。
サンビチョ王国兵は気付かないで、闇の魔王に加担してしまっていた自分を恥じてもいた。
ビリー等教育参謀がトラックで乗り込むと、野宿していたサンビチョ王国兵は飛散しだしたが、逃走する兵の前方に回ったシーラーは、
飛散する兵に向かってスピーカーで呼び止めた。
「間もなく、イアラ王女がくる!整列して迎えよ!」
と、叫んだ。
「イアラ王女がくる。」
との声に反応したそれぞれの指揮官たちは全員に声を掛けると、兵と傭兵達は飛散を止めて整列しだした。
コーA.Iから鹿島に報告が入り、サンビチョ王都の南門より、
多数の男女が首に綱をまかれて、引かれていくのを確認したと報告が入った。
カントリ国はサンビチョ王都の住人を奴隷目的で、捕縛していくようである。
鹿島は三湖街の守備隊をサンビチョ王都の応援に向かわせながら、
パンパ街の守備隊全員に、
カントリ兵の犠牲はやむを得ないが、サンビチョ王都の住人の救出救護を優先して、
出来れば、カントリ王の身柄を捕獲するようミクタとポール教育参謀中将に通信した。
ヒット国に向かっていた三湖街の守備隊は、急遽サンビチョ王都の住人の救出の為に、
ミクタの指揮でエミュー部隊だけでであるが、パンパ街の守備隊を追った。
パンパ街の守備隊はトラックに乗り込み、ポール教育参謀等の乗る機動車輌に遅れないように荷台の揺れを気に留めず、目一杯の駆動でついてきたが、少しずつ遅れだした。
ポール教育参謀等守備隊機動車輌部隊は、捕縛されている住民を開放すべき、
容赦ない攻撃でカントリ国兵に挑んでいた。
教育参謀等守備隊は奮戦しているが、カントリ兵の抵抗は激しいようで、
爆裂砲、レーザー砲、火炎放射器等を乗せた機動車輌は、
束縛されたサンビチョ王都の住人を守るように、
円を描きながら、戦場を駆け回っている。
トラック隊と三湖街のミクタエミュー守備隊も、束縛された住人を守っている守備隊に合流したが、
サンビチョ王都の北門から次々と、カントリ兵は湧き出てくる。
門と住人を守っている守備隊の間には、
かなりの死傷者が横たわっているのが確認できた。
特に門の前方は足場もないくらいの死傷者で、サンビチョ王都から脱出しようとしていたカントリ国兵は、
脱出を諦めて門を閉ざしてしまい、城壁街内に逃げ込んでしまった。
此れは、結果最悪の悪手であった。
ミクタとポール教育参謀達は一カ所に集まり、最悪の悪手になってしまったと苦境していると、急遽駆け付けたビリー教育参謀がトラックから降りてきて、
「まずい、閉じ込めてしまったようですね。」
と、ポールにニヤリと冗談交じりに笑うと、ポールは意に介さない様子で、
「サンビチョ王国軍の到着をまとう。ミクタ知事は三湖街の守備隊と傭兵を連れて、シリーに合流してほしい。」
とポールはミクタに声がけした。
「ありがとうございます!すぐに追いかけます。」
と言って、ミクタは、エミューに乗って駆け出して行った。
コーA.Iからの報告が常にあったとはいえ、ミクタはシリーの身をやはり気にしていたようである。
夕闇迫る頃、イアラ王女の気迫に押されて、落胆していたサンビチョ王国軍は、
駆けに駆けて来たかいがあり、ようやく東門前に到着した。
ポールは解放されたサンビチョ王都の住人三千人を、
サンビチョ王国軍の到着した東門の方へ案内した。
解放されたサンビチョ王都の住人三千人を前に、イアラ王女もサンビチョ王国軍すべてが怒りを表し、駆けに駆け続けて来た疲労は、何処かに吹き飛んでいるように思えた。
イアラ王女は、残ったカントリ兵を一人も逃したくないようで、
四ケ所のすべての門に兵を配した。
ビリーはイアラ王女に、城壁内にいるカントリ兵の逃走用逃げ口を、
緩くする事を提案したが、イアラ王女に頑として拒否された。
イアラ王女の意向を尊重して、ポールとビリーは各門に、レーザー銃携帯のエルフ騎馬隊十五名ずつ配置して、爆裂砲搭載機動車輌をも付けた。
城壁上に留る全てのカントリ兵を、薄暗くなりかけた空に照明弾を飛ばして、カントリ兵をまんべんなく浮かび表し、
エルフ騎馬隊のレーザー銃で頭を蒸発させた。
同時に、爆裂弾丸で門も破壊すると、サンビチョ王国軍すべてが、
我先にと王宮壁内になだれ込んだ。
サンビチョ王国軍は逃げ遅れたカントリ兵を、まんべんなく刺し殺して行った。
シーラーの乗った軽機動車輌は、無数の切り傷や突き刺されている、カントリ兵の遺体脇を通り抜けて街中へと向かった。
照明弾下の教会前広場では憤激した罵声が飛び交い、
サンビチョ王国軍の一方的と思える殺戮が起きていた。
戦闘を止めようと教会修道士が飛び出してきたが、これらの者達もサンビチョ王国軍兵から悪魔と罵られて、教会修道士等は袋叩きされてしまい、
サンビチョ王教会内に逃げ込んだカントリ兵と、教会修道士は残らず引き出されると、
殴られ蹴られてこれもまた容赦のない暴行を加えられているが、
教会の修道士は、兵士たちの不信に満ちた暴力と、
悪魔と罵られる意味が解らず、失意の表情で逃げ惑っている。
王宮に逃げ込んだカントリ兵は、王宮門を固く閉ざしていて、
顔をのぞかせる者達もなく逃げ潜んでいるようである。
シーラーの乗った軽機動車輌に搭載している爆裂砲が城門を破壊しても、
カントリ兵は潜んだまま姿を現さない。
現れないカントリ兵にシーラーは業を煮やしたようで、マイク片手に、
「カントリ国軍兵に次ぐ!亜人協力国のシーラー教育参謀中将だ。
速やかに投降しろ!命は保証する。
サンビチョ王国軍に探し出された者達は、どうなるか保証できない。」
と、叫んだ。
続々と現れた兵士は気力ない顔で、生へのかすかな希望を懇願するように、
武器を放り投げて次々とあらわれた。
サンビチョ王国軍兵は、四千人余りいるカントリ兵の甲冑を脱がすと、
ロープで首を数珠繋ぎに結んでいった。
サンビチョ王国軍兵二万人ほどと思える多数の兵は、
怒り表に王宮内の捜査に参加していく。
王宮内には、まだかなりの残兵が隠れていた。
恫喝と罵声の後にかなりの悲鳴が響いていたが、誰一人と連行されては来なかったのは、かなりカントリ兵は王宮内で理不尽な行いをしていたようで、
その報いは悲惨な状態であったのだろう。
カントリ兵四千人と負傷兵一千人余りは、有刺鉄線内に野晒しで束縛された。
カントリ兵に対しては、サンビチョ王国軍兵の怒りは凄まじい様子で、
一日の食事は芋一個と水が与えられるだけであった。
戦闘が終わった四、五日が過ぎたころ、奴隷商人数十が王宮に、
奴隷の買い入れ交渉に現れだした。
流石にこれにはイアラ王女もあきれている。
そんな喧騒の中、カントリ王都のガイア教会の司祭が現れた。
呆れた事に捕虜の解放条件を出してきた。
サンビチョ王国の奴隷商人等が、カントリ王国の女性たちを騙して、
他にも誘拐して奴隷とされた現、元売春婦慰謝料をカントリ王国が肩代わりするので、
カントリ王国兵捕虜の解放を、等価交換しようとのことである。
元々カントリ王国においては、自分の娘や妹を生活のために売る行為は、
正当な権利であるが為に、売られた娘たちの落ち着く場所は、
裕福なサンビチョ王国に、集まって来たようである。
イアラ王女は、ヘレニズ公爵と亜人協力国の併合合意の一件で、
身代金での交換は嫌がっている様子である。
イアラ女王は父と兄を惨殺された怒りも、時間とともに和らいだ様子なのか、
頂点に達していた怒りも落ち着いたのか、本来の優しいイアラに戻った様子で、
カントリ王国兵捕虜の扱いに悩んでいた。
イアラ女王は捕虜を奴隷として売ることにも、辟易していた状態であったがためか、
捕虜の身代金と等価交換の提案に、渡りに船と善意心で同意した。
此れは、カントリ王国の国民性を知らないイアラ王女の、苦悩の始まりであり、
そして、将来の苦悩の始まりとは知らず、カントリ王国兵捕虜の解放はスムーズに行なった。
イアラ女王は、カントリ王国兵に荒らされた、王都や村落の復興に加えて、
同盟の条件である奴隷と農奴の開放や、教育の普及にと没頭していた。
そして、亜人協力国中央銀行の初の融資は、サンビチョ王国であったが為に、
中央銀行総裁マティーレは金利の安さに不満を述べたが、
マーガレットとパトラにテテサや鹿島達は、強引にイアラ女王を後押しした。
後々の事件を起こす事になる特別援助融資枠で、
白金貨五百枚を五年払いの金利年一パーセントとした。
同盟国サンビチョ王国軍を含めて、併合した軍の百人隊長以上をすべて集めて、
コーA.Iから戦術及び軍の義務を、百人隊長以上には、一か月間に渡る講習を義務づけた。
更に、優秀な者は二か月延期講習を追加して、
将来は十万からなる軍の中核を担えるように育てた。
優秀な者の中に、特別参加を許されたカナリア街の七人の戦士も入っていた。
そして、十二歳以上の軍幹部養成を含めた、各業種三年間の職業訓練校すべて、
衣食住付きの無料で開校した。
亜人協力国は少しずつではあるが、将来を見据えた国としての地盤固めが始まった。
そして、鹿島の望んでいたガイア教会の通信連絡の方法が明かされた事で、コーA.Iの調査が始められた。
イアラ女王はカントリ王国兵捕虜の解放を終えて、ヘレニズ公爵と今後の打ち合わせを行い、軍の再編成と、罪人奴隷以外の奴隷と農奴や小作人の開放を強引に推し進めた。
貴族の領地を否応なく没収し、一極集中権力の達成を成し遂げた。
これらを力と金で押さえつけたが、その為に未だに国中が混乱状態である。
貴族の選択権は行政官を選ぶか、地方首領官としての知事の選択であるが、
職業の自由も保証した。
奴隷や農奴と荘園は、貴族の個人財産であると主張されたので、
奴隷や農奴は人権法で開放した。
行政官及び知事職は二重以上の収入を禁じたが為に、
貴族の造園収入は認められなかったが、荘園は貴族の個人財産をある事を認めた。
農地改革法で一定以上の保有数を禁止にし、
残りを買い上げると、安値で農奴や小作人に分配した。
イアラ女王は毎日が多忙で、睡眠不足から執務室の机にうつ伏せで寝込み、
浴槽の中でいびきをかいて寝てしまう事をたびたび起こした。
こんな中、敵と決めていたカントリ王国ではクーデターが起こり、
ハラグ王が新たに誕生した。
イアラ女王は自国の改革に追われて、カントリ王国どころではないので聞き流したが、
暫くしたのち、新たに赴任したガイア教会司祭長が就任の挨拶に現れた。
「イアラ女王様、王都教会に赴任したジュレジュレと申します。
今後もよろしくお願いいたします。」
「就任おめでとう。今後もよろしくお願いいたします。
司祭様は聖人テテサ修道女様の方針はどう思いますか?」
「正義の人だと思います。」
「私の感じでは、亜人協力国の国是そのものと思ったのですが、違いましたか?」
「それを含めて、すべての正義を含んでいると思います。」
何か重たい司祭のようである。
「こちらに赴任する前に、カントリ王都教会の司祭を務めていました。
その時にハラグ王は、カントリ国の女性たちを騙すなどして、また誘拐して奴隷としたのは、
サンビチョ王国に責任があると訴えて来られました。
ハラグ王の言うことには、そのことはサンビチョ女王も認めているので、
責任と謝罪をさせると、被害にあった彼女らに約束しました。
女王様は責任を認められましたか?」
「認めたわけではない!捕虜の返還に関しては、身代金もましてや奴隷として売ることは、
私の良心が許さないことなので、人道上捕虜はこちらからの善意で釈放した。
現、元売春婦慰謝料を前カントリ王国が救済するならば、誰でも人として手を貸すだろう。
前カントリ王は自国で救済すると言ったのだ!自国の責任において行え!」
現、元売春婦慰謝料を元カントリ王国は、一方的に肩代わりすると言ったのは事実である。
名目上であれ、イアラ女王は現また元売春婦の慰謝料として、何らかの保証があるのならと、同情して黙殺した事も事実である。
イアラ女王は再び慰謝料の話が出たのであれば、哀れな女性たちに同情した事で予期せぬ裏目に出た。
「それは前国王との約束であり、現在の国王とは、関係ないことだと言っています。
ガイア教会の司法官の前で争いますか?」
「すべて拒否する!前国王の自発的に約束したことは、現国王も約束は継続されるべきだ。
これ以上は売春婦の慰謝料の関しては、何も話すことはない。」
「解りました。今日はこれで失礼します。」
ジュレジュレ司祭長は何やら、含みを隠した退席であった。
イアラ女王は、善意で対応すれば善意が帰って来るし、
約束事は必ず守るのが指導者の基本であると教育されていた。
イアラ女王は、全ての人は、清らかな善意の心を持って生まれてくるのだと思っているので、国同士の約束は守られると確信していた。
サンビチョ王国兵はサコン司祭の言葉を信じて、正義の戦いと思っていたが、
聖人テテサ修道女の奇跡を目撃した為に、ガイア様の意に反していたと気付いて、
九つの徳を唱えながらも、虚脱感に囚われていていた。
サンビチョ王国兵は気付かないで、闇の魔王に加担してしまっていた自分を恥じてもいた。
ビリー等教育参謀がトラックで乗り込むと、野宿していたサンビチョ王国兵は飛散しだしたが、逃走する兵の前方に回ったシーラーは、
飛散する兵に向かってスピーカーで呼び止めた。
「間もなく、イアラ王女がくる!整列して迎えよ!」
と、叫んだ。
「イアラ王女がくる。」
との声に反応したそれぞれの指揮官たちは全員に声を掛けると、兵と傭兵達は飛散を止めて整列しだした。
コーA.Iから鹿島に報告が入り、サンビチョ王都の南門より、
多数の男女が首に綱をまかれて、引かれていくのを確認したと報告が入った。
カントリ国はサンビチョ王都の住人を奴隷目的で、捕縛していくようである。
鹿島は三湖街の守備隊をサンビチョ王都の応援に向かわせながら、
パンパ街の守備隊全員に、
カントリ兵の犠牲はやむを得ないが、サンビチョ王都の住人の救出救護を優先して、
出来れば、カントリ王の身柄を捕獲するようミクタとポール教育参謀中将に通信した。
ヒット国に向かっていた三湖街の守備隊は、急遽サンビチョ王都の住人の救出の為に、
ミクタの指揮でエミュー部隊だけでであるが、パンパ街の守備隊を追った。
パンパ街の守備隊はトラックに乗り込み、ポール教育参謀等の乗る機動車輌に遅れないように荷台の揺れを気に留めず、目一杯の駆動でついてきたが、少しずつ遅れだした。
ポール教育参謀等守備隊機動車輌部隊は、捕縛されている住民を開放すべき、
容赦ない攻撃でカントリ国兵に挑んでいた。
教育参謀等守備隊は奮戦しているが、カントリ兵の抵抗は激しいようで、
爆裂砲、レーザー砲、火炎放射器等を乗せた機動車輌は、
束縛されたサンビチョ王都の住人を守るように、
円を描きながら、戦場を駆け回っている。
トラック隊と三湖街のミクタエミュー守備隊も、束縛された住人を守っている守備隊に合流したが、
サンビチョ王都の北門から次々と、カントリ兵は湧き出てくる。
門と住人を守っている守備隊の間には、
かなりの死傷者が横たわっているのが確認できた。
特に門の前方は足場もないくらいの死傷者で、サンビチョ王都から脱出しようとしていたカントリ国兵は、
脱出を諦めて門を閉ざしてしまい、城壁街内に逃げ込んでしまった。
此れは、結果最悪の悪手であった。
ミクタとポール教育参謀達は一カ所に集まり、最悪の悪手になってしまったと苦境していると、急遽駆け付けたビリー教育参謀がトラックから降りてきて、
「まずい、閉じ込めてしまったようですね。」
と、ポールにニヤリと冗談交じりに笑うと、ポールは意に介さない様子で、
「サンビチョ王国軍の到着をまとう。ミクタ知事は三湖街の守備隊と傭兵を連れて、シリーに合流してほしい。」
とポールはミクタに声がけした。
「ありがとうございます!すぐに追いかけます。」
と言って、ミクタは、エミューに乗って駆け出して行った。
コーA.Iからの報告が常にあったとはいえ、ミクタはシリーの身をやはり気にしていたようである。
夕闇迫る頃、イアラ王女の気迫に押されて、落胆していたサンビチョ王国軍は、
駆けに駆けて来たかいがあり、ようやく東門前に到着した。
ポールは解放されたサンビチョ王都の住人三千人を、
サンビチョ王国軍の到着した東門の方へ案内した。
解放されたサンビチョ王都の住人三千人を前に、イアラ王女もサンビチョ王国軍すべてが怒りを表し、駆けに駆け続けて来た疲労は、何処かに吹き飛んでいるように思えた。
イアラ王女は、残ったカントリ兵を一人も逃したくないようで、
四ケ所のすべての門に兵を配した。
ビリーはイアラ王女に、城壁内にいるカントリ兵の逃走用逃げ口を、
緩くする事を提案したが、イアラ王女に頑として拒否された。
イアラ王女の意向を尊重して、ポールとビリーは各門に、レーザー銃携帯のエルフ騎馬隊十五名ずつ配置して、爆裂砲搭載機動車輌をも付けた。
城壁上に留る全てのカントリ兵を、薄暗くなりかけた空に照明弾を飛ばして、カントリ兵をまんべんなく浮かび表し、
エルフ騎馬隊のレーザー銃で頭を蒸発させた。
同時に、爆裂弾丸で門も破壊すると、サンビチョ王国軍すべてが、
我先にと王宮壁内になだれ込んだ。
サンビチョ王国軍は逃げ遅れたカントリ兵を、まんべんなく刺し殺して行った。
シーラーの乗った軽機動車輌は、無数の切り傷や突き刺されている、カントリ兵の遺体脇を通り抜けて街中へと向かった。
照明弾下の教会前広場では憤激した罵声が飛び交い、
サンビチョ王国軍の一方的と思える殺戮が起きていた。
戦闘を止めようと教会修道士が飛び出してきたが、これらの者達もサンビチョ王国軍兵から悪魔と罵られて、教会修道士等は袋叩きされてしまい、
サンビチョ王教会内に逃げ込んだカントリ兵と、教会修道士は残らず引き出されると、
殴られ蹴られてこれもまた容赦のない暴行を加えられているが、
教会の修道士は、兵士たちの不信に満ちた暴力と、
悪魔と罵られる意味が解らず、失意の表情で逃げ惑っている。
王宮に逃げ込んだカントリ兵は、王宮門を固く閉ざしていて、
顔をのぞかせる者達もなく逃げ潜んでいるようである。
シーラーの乗った軽機動車輌に搭載している爆裂砲が城門を破壊しても、
カントリ兵は潜んだまま姿を現さない。
現れないカントリ兵にシーラーは業を煮やしたようで、マイク片手に、
「カントリ国軍兵に次ぐ!亜人協力国のシーラー教育参謀中将だ。
速やかに投降しろ!命は保証する。
サンビチョ王国軍に探し出された者達は、どうなるか保証できない。」
と、叫んだ。
続々と現れた兵士は気力ない顔で、生へのかすかな希望を懇願するように、
武器を放り投げて次々とあらわれた。
サンビチョ王国軍兵は、四千人余りいるカントリ兵の甲冑を脱がすと、
ロープで首を数珠繋ぎに結んでいった。
サンビチョ王国軍兵二万人ほどと思える多数の兵は、
怒り表に王宮内の捜査に参加していく。
王宮内には、まだかなりの残兵が隠れていた。
恫喝と罵声の後にかなりの悲鳴が響いていたが、誰一人と連行されては来なかったのは、かなりカントリ兵は王宮内で理不尽な行いをしていたようで、
その報いは悲惨な状態であったのだろう。
カントリ兵四千人と負傷兵一千人余りは、有刺鉄線内に野晒しで束縛された。
カントリ兵に対しては、サンビチョ王国軍兵の怒りは凄まじい様子で、
一日の食事は芋一個と水が与えられるだけであった。
戦闘が終わった四、五日が過ぎたころ、奴隷商人数十が王宮に、
奴隷の買い入れ交渉に現れだした。
流石にこれにはイアラ王女もあきれている。
そんな喧騒の中、カントリ王都のガイア教会の司祭が現れた。
呆れた事に捕虜の解放条件を出してきた。
サンビチョ王国の奴隷商人等が、カントリ王国の女性たちを騙して、
他にも誘拐して奴隷とされた現、元売春婦慰謝料をカントリ王国が肩代わりするので、
カントリ王国兵捕虜の解放を、等価交換しようとのことである。
元々カントリ王国においては、自分の娘や妹を生活のために売る行為は、
正当な権利であるが為に、売られた娘たちの落ち着く場所は、
裕福なサンビチョ王国に、集まって来たようである。
イアラ王女は、ヘレニズ公爵と亜人協力国の併合合意の一件で、
身代金での交換は嫌がっている様子である。
イアラ女王は父と兄を惨殺された怒りも、時間とともに和らいだ様子なのか、
頂点に達していた怒りも落ち着いたのか、本来の優しいイアラに戻った様子で、
カントリ王国兵捕虜の扱いに悩んでいた。
イアラ女王は捕虜を奴隷として売ることにも、辟易していた状態であったがためか、
捕虜の身代金と等価交換の提案に、渡りに船と善意心で同意した。
此れは、カントリ王国の国民性を知らないイアラ王女の、苦悩の始まりであり、
そして、将来の苦悩の始まりとは知らず、カントリ王国兵捕虜の解放はスムーズに行なった。
イアラ女王は、カントリ王国兵に荒らされた、王都や村落の復興に加えて、
同盟の条件である奴隷と農奴の開放や、教育の普及にと没頭していた。
そして、亜人協力国中央銀行の初の融資は、サンビチョ王国であったが為に、
中央銀行総裁マティーレは金利の安さに不満を述べたが、
マーガレットとパトラにテテサや鹿島達は、強引にイアラ女王を後押しした。
後々の事件を起こす事になる特別援助融資枠で、
白金貨五百枚を五年払いの金利年一パーセントとした。
同盟国サンビチョ王国軍を含めて、併合した軍の百人隊長以上をすべて集めて、
コーA.Iから戦術及び軍の義務を、百人隊長以上には、一か月間に渡る講習を義務づけた。
更に、優秀な者は二か月延期講習を追加して、
将来は十万からなる軍の中核を担えるように育てた。
優秀な者の中に、特別参加を許されたカナリア街の七人の戦士も入っていた。
そして、十二歳以上の軍幹部養成を含めた、各業種三年間の職業訓練校すべて、
衣食住付きの無料で開校した。
亜人協力国は少しずつではあるが、将来を見据えた国としての地盤固めが始まった。
そして、鹿島の望んでいたガイア教会の通信連絡の方法が明かされた事で、コーA.Iの調査が始められた。
イアラ女王はカントリ王国兵捕虜の解放を終えて、ヘレニズ公爵と今後の打ち合わせを行い、軍の再編成と、罪人奴隷以外の奴隷と農奴や小作人の開放を強引に推し進めた。
貴族の領地を否応なく没収し、一極集中権力の達成を成し遂げた。
これらを力と金で押さえつけたが、その為に未だに国中が混乱状態である。
貴族の選択権は行政官を選ぶか、地方首領官としての知事の選択であるが、
職業の自由も保証した。
奴隷や農奴と荘園は、貴族の個人財産であると主張されたので、
奴隷や農奴は人権法で開放した。
行政官及び知事職は二重以上の収入を禁じたが為に、
貴族の造園収入は認められなかったが、荘園は貴族の個人財産をある事を認めた。
農地改革法で一定以上の保有数を禁止にし、
残りを買い上げると、安値で農奴や小作人に分配した。
イアラ女王は毎日が多忙で、睡眠不足から執務室の机にうつ伏せで寝込み、
浴槽の中でいびきをかいて寝てしまう事をたびたび起こした。
こんな中、敵と決めていたカントリ王国ではクーデターが起こり、
ハラグ王が新たに誕生した。
イアラ女王は自国の改革に追われて、カントリ王国どころではないので聞き流したが、
暫くしたのち、新たに赴任したガイア教会司祭長が就任の挨拶に現れた。
「イアラ女王様、王都教会に赴任したジュレジュレと申します。
今後もよろしくお願いいたします。」
「就任おめでとう。今後もよろしくお願いいたします。
司祭様は聖人テテサ修道女様の方針はどう思いますか?」
「正義の人だと思います。」
「私の感じでは、亜人協力国の国是そのものと思ったのですが、違いましたか?」
「それを含めて、すべての正義を含んでいると思います。」
何か重たい司祭のようである。
「こちらに赴任する前に、カントリ王都教会の司祭を務めていました。
その時にハラグ王は、カントリ国の女性たちを騙すなどして、また誘拐して奴隷としたのは、
サンビチョ王国に責任があると訴えて来られました。
ハラグ王の言うことには、そのことはサンビチョ女王も認めているので、
責任と謝罪をさせると、被害にあった彼女らに約束しました。
女王様は責任を認められましたか?」
「認めたわけではない!捕虜の返還に関しては、身代金もましてや奴隷として売ることは、
私の良心が許さないことなので、人道上捕虜はこちらからの善意で釈放した。
現、元売春婦慰謝料を前カントリ王国が救済するならば、誰でも人として手を貸すだろう。
前カントリ王は自国で救済すると言ったのだ!自国の責任において行え!」
現、元売春婦慰謝料を元カントリ王国は、一方的に肩代わりすると言ったのは事実である。
名目上であれ、イアラ女王は現また元売春婦の慰謝料として、何らかの保証があるのならと、同情して黙殺した事も事実である。
イアラ女王は再び慰謝料の話が出たのであれば、哀れな女性たちに同情した事で予期せぬ裏目に出た。
「それは前国王との約束であり、現在の国王とは、関係ないことだと言っています。
ガイア教会の司法官の前で争いますか?」
「すべて拒否する!前国王の自発的に約束したことは、現国王も約束は継続されるべきだ。
これ以上は売春婦の慰謝料の関しては、何も話すことはない。」
「解りました。今日はこれで失礼します。」
ジュレジュレ司祭長は何やら、含みを隠した退席であった。
イアラ女王は、善意で対応すれば善意が帰って来るし、
約束事は必ず守るのが指導者の基本であると教育されていた。
イアラ女王は、全ての人は、清らかな善意の心を持って生まれてくるのだと思っているので、国同士の約束は守られると確信していた。
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百合ランジェリーカフェにようこそ!
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
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