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61老樹霊の加護
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鹿島は台所の片隅でタブレットパソコンを開いて、砦が丘街の様子を見ながら、
考えている事はムー帝国との戦場である。
身体年齢を自由に変える事が出来るのだから、これは卑怯だろうと思われる、
望み通りの美人顔にしたのであろう二万年老樹霊が現れて、
「今日。ムー帝国との決戦場所へ行かれるのでしたら、私もお供させてください。」
「人間同士の争いに興味がおありですか?」
「いいえ。まったくありませんが、人には経験しない方がいい場合もあります。経験させたくないので行きたいのです。」
「意味がよくわかりませんが?」
「創造主女神ガイア様の御心です。」
「ガイア様を信じているのですか?」
「混沌とした世界を陸と海に分けて、両方の世界に生あるものを育てたのがガイア様です。」
「魔獣や魔物もガイア様が生み出したのですか?」
「必要な時に必要なものを育てなさいます。」
「必要な理由は?」
「進化の過程で食物連鎖は重要です。だけども強いものだけが生き残る弱肉強食の世界では、秩序は生まれないのです。」
「秩序維持だけならば、草食獣だけでも良かったのでは?」
「秩序維持だけでは、世界を競争発展させるために用意した資源は無駄になり、進化も止まり意味がございません。」
「発展しなければならない理由は?」
「他の星から、神の代理である生き物が現れるのは、予測されているからです。
あなたたちが空のかなたから現れたときに、邪悪な神に生を受け生き物では無いことがわかり、
姿が似ているので同じマザー.イブ同胞から生まれたのであろう、あなた方に協力を求めたのです。」
「マザー.イブ同胞?」
「生と秩序に善良を尊ぶ母の子供達です。」
「われらが現れるとなぜ予知できたのですか?」
「星々が生まれる前は、神々全て生あるものを生み出せるのだが、
邪悪な神々同士の争いが激しくて、善良なる神々も争いに巻き込まれて、
互いに空の隅まで焼き尽くして、熱の塊である星々を生み出しました。」
「神々は死んでしまったのですか。」
「神々は死にませんが、手先となり戦う配下は焼き尽くせます。
焼き尽くした熱の塊は溶岩塊になり、
溶岩塊は空の熱エネルギーをすべて溶吸い取ります。
絶対零度の空間次元が生まれると、空はすべての神々を凍らせるほどに冷たくなるのです。
善良な神々も邪悪も神々共に生ある配下を作り出せるように、
熱の塊である星々に逃げるしかなくなり、
神は各星で各柱となったとの事です。」
「全ての星々には、其々神が存在しているのですか?」
「全てではないが、かなり存在していると思います。ですので、
神の星に住む子供達を守るために、
配下同士の代理戦争となるかもしれないので、
他の神の配下から防御できる発展が必要です。」
「貴方はどうして神々のことを知ったのですか?」
「ガイア様が活動している間には、いろんな生物やら植物が生まれました。
私が生まれて間もないころは、いつも私のそばでよく休んで、神々の話をされました。
ガイア様とこの星の生あるものの活動時間が違いますので、
今は理念と幽体だけが残り、まだ休まれている時間のようです。
活動出来る時が来たならば、貴方にガイア様への疑問がございましたらお聞きください。」
「いつ活動を始めるのですか?」
「わかりません。明日か?来年か?十年先か?あなたの生ある時までに間に合うのか?わかりません。」
鹿島には、確かにガイア様の存在は確認できてはいるが、
星々に神様が存在していて、それぞれの星で生あるものを育てている話は、鹿島は、似た話は部分的であるが神話として聞いたことがあった。
女性らは起きだして、せわしなく食事の用意を始め出したので、
鹿島は台所の隅も居心地がわるくなり、二万年老樹霊にこれ以上同行する理由を聞くことなく、居間ソファーへ移動した。
エアークラフトからの眺めは、ムー帝国の城壁外にある小高い丘の上に色とりどりの旗が閃いている。
コーA.Iからの報告では、隣国応援部隊の二国も参加しているらしい。
黄色に一の文字下に三星が描いてある柄の旗は鉄の国であり、赤鳥柄は塩の国らしい。
塩の国現国王はムー帝国から養子に出されたスケジュ皇帝の弟であり、
鉄の国の分家属国でもある。
鉄の国三万軍と塩の国一万軍は、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍合わせて六万軍と、対峙している大将軍トローチ率いる四万の軍勢を、見下ろした丘に布陣した理由は、
戦闘が始まると、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍の側面へ丘の上から駆け下り、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍を攻撃分断するようである。
ムー帝国の城壁を守っているのは二万の兵だけであるが、城壁外での戦闘が始まると、
直ちに門から進撃して、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍の側面攻撃態勢で、一万の兵が門の内側に待機しているのは、かなりの戦術慣れしたムー帝国である。
このまま戦闘が始まると、両方にかなりの死傷者が出そうだ。
キョクトウ君は賛同してきた兵と、三八式歩兵銃を装備したエミュー隊千名に、
エミューに引かせた大砲六十門と、神降臨街屯田兵とを加えた五千の軍を率いて、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍に合流する予定地に急いでいたが、
戦場につくにはまだ半日かかりそうである。
エアークラフト内部でパトラは落ち着きなく動き回っているのは、
何かを決心しているようでもあり、迷ってもいるようでもある。
パトラの腰には矢を入れる革製の靭(うつぼ)を装備し、五本の赤い矢を収めてある靭から矢を一本ずつ取り出して確認していると、
靭から二万年老樹霊が三本の矢を引き抜き、
呪文を唱え始めた。
「ガイア様の力と精霊、この矢に宿れ。」
すると、二万年老樹霊が握りしめた三本の矢に、赤い微粒子が集まりだすと、
赤い一本の棒になった。
二万年老樹霊は赤い棒を握りしめたまま、操縦士マーガレットに囁いた。
「我らを太陽の光の中に隠れさせて頂きたい。
そして神降臨街で太陽が隠れた時に、テテサ教皇様が歌われたトルコ軍歌(祖先も祖父も)の曲を流してください。」
マーガレットは何かを悟ったように、
「了解しました。」
と、言ってエアークラフトを旋回しだし、コーA.Iに
とテテサの録音した歌声を送信するよう要請したのは、再び奇跡を起こすためのようである。
エアークラフトからの眺めは良好で、トーマス等の機動車輌は、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍中央前方に位置している。
大将軍トローチは二台の旅車の上に接続させた指揮番所を設けて、隣の荷車の乗せた陣太鼓に指示をしている。
陣太鼓に合わせて弓隊が前面に出て整列して弓に矢を添えると、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍は皆が盾を頭上にかざした。
一万の矢が軍中央前方に位置しているトーマスたちに、向かって迫ってきたが、
火炎放射器搭載軽車両十台からの強い風を伴った、火力にて全てが炭になり、
対峙している中間に焦げた煙の臭いと一緒に落ちてくると、
両陣営から驚きの声が響いたと同時に、トルコ軍歌(祖先も祖父も)が響き渡り、
皆が空を見上げたのちに、両知事と兵たちは片膝ついて祈りだした。
エアークラフトのドアを目いっぱい開けた状態の前で、
パトラは仁王立ちして赤い矢を弓にあてがい、
「トローチ将軍の眉間を狙います。」
と言ったが、二万年老樹霊は赤い棒を握りしめたままで、パトラを制し押しのけて、
パトラの居た位置に自身の身を置いた。
「ガイア様の力。」
と言って二万年老樹霊は、やりを投げるように、赤い棒を放り出した。
赤い棒は炎に包まれた燃える鳥がごとく、鋭い嘴(くちばし)に燃え盛る翅(はね)となり、
皆が注目する中で炎に包まれた燃える鳥は、両陣営の中間で旋回したのちに、
トローチ将軍に向かっていった。
炎に包まれた嘴と翅は赤い矢に戻り、トローチ将軍の眉間と両胸に刺さった。
両陣営の皆がトローチ将軍を注目していると、トローチ将軍は三本の赤い矢を身に刺したままで、身を硬直させての姿でゆっくりとした倒れ方であった。
ムー帝国軍兵は皆唖然としていたが、急に一人のトローチ将軍傍にいた兵のヒステリックな声で、全体がパニックとなり、ムー帝国軍兵は城門に向かって逃げ出した。
塩の国一万軍はあろうことか、パニック状態になったムー帝国兵に向かって丘から駆け下りて行き、逃げ惑うムー帝国軍に攻撃を始めているが、
それを見ている鉄の国三万軍は、素知らぬふりして丘の影に消えていった。
逃げ惑うムー帝国の兵は、城門に入ろうと押しかけているが、門の中には待機している一万の兵に阻まれて、進むことができないでいるところに、
後方から塩の国一万軍が襲い掛かっている。
門の内側に進む事ができないと判断した何名かの指揮官は、軍をまとめながら壁沿いに退却し出している。
四万の軍を何とか半数二万だけは、軍の秩序を持たせたようである。
体制を整えた二万のムー帝国兵は、逆に塩の国一万軍に襲い掛かった。
今度は塩の国一万軍が総崩れとなり、丘の方へ逃げ去ったが、ムー帝国軍は追うことはしなかったので、塩の国一万軍は丘の上で陣を組み直すと、野営の準備をしだした。
一度は総崩れとなった城壁外のムー帝国軍も、門を背に整然と居並んでいるのは、
ムー帝国軍の指揮官の中にも優秀な人材がいるようで、
鹿島はコーA.Iにそれらの指揮官を選別記録するように指示した。
トーマス元帥たちの軍も野営の準備を始めた様である。
パトラは唖然と顔で二万年老樹霊を眺めている。
「あなたは何者?ガイア様の使徒それとも眷属?」
「私にもわからないわ。ただ、七千年前に世のすべての種族に平和と安泰をもたらす者たちが現れたならば、力を貸してあげなさいと言われたの。」
「ガイア様にですか?」
「そうです。女神ガイア様です。」
「平和と安泰をもたらす者たちとは、複数人ですか?」
「たぶんそうだと思うわ。ガイア様に何度も話を聞かされた私の感じでは、
運営委員会のメンバー全員だと解釈しています。」
「ガイア様に何度もお会いしているようですが、今もお会いしているのですか?」
「七千年前までは、ガイア様は活発に行動していましたが、今ガイア様は眠りの中です。」
「しかしながら、私達は、夢の中で、閣下は妖精たちに包まれたガイア様のお会いして、力をいただいたのは最近でしょう。」
「私がお預かりしていたガイア様の理念の憑依印からの念力です。
半身様がお会いしたのは、理念です。
閣下がお会いしたガイア様は、幽体と理念です。」
「貴女がガイア様の憑依印から、私たちと閣下に会わせたのですか?」
「私ではないです。憑依印から理念が飛び出していったのです。」
「話を戻しますね。平和と安泰をもたらす者たちとは、
私達の子供たちも含まれているのですか?」
「運営委員会の知識と技術で、三千年間停滞していた遅れを取り戻す事ができる子供たちは、すべての中心的な役目を持つでしょうから、
その母親たちが根幹をなすのは当たり前です。」
「コーA.Iの知識を、子供達が活用できると?」
「ガイア様の理念が、何かを察知したのでしょう。」
「トローチ将軍を射るのを変わったのも、理由があってのことですか?」
「母親たちは全員聖母であるべきです。手を血で染めるのは閣下と私です。」
パトラと二万年老樹霊の会話を聞いていたマーガレットは、
「一万年老樹霊が、テテサも半身になって子供を授かると?」
「もちろんです。」
「父親は、やはりガイア様の伴侶ですか?」
「私は、予知する。空間次元の操作は出来ません。」
「あと二人の子供のことも、分からないと。」
「平和と安泰をもたらす者の子供達に、老樹霊達の加護は当然です。」
「それ、答えではない。」
と、マーガレットの声がスピーカーから響いた。
鹿島は、老樹霊の言葉の曖昧さと歯切れの悪さの原因は、
余計な言葉は、ガイア女神の代理だと誤解されたくないのと、自分が出来る事だけを伝えたいだけと思えたので、
二人の険悪を避けるように、
「最悪の樹海美魔女も加護者?」
「あの子はまだ五千年少しなので、ガイア様にお会いしてないので無理です。
これからの後、ガイア様の加護を受けた一万年以上の老樹霊達と、
猫亜人を救い出した老樹霊も現れますし、
あなた達耳長種族が知識と力を得たときの、
手助けをした老樹霊も現れるでしょう。」
「一つ確かめたい。最初魔物の眉間に剣を刺したときに、得体の知れない悪寒を感じたのだが、二度目の魔物からは、何も感じなかった。何か理由を知っていますか?」
と鹿島は、胸に刺さった刺の疑問を聞いた。
「制御の利かない魔物のことですね。その得体のしれないもの、邪悪な餓鬼を見つけ出して欲しいのです。」
「あの男も、邪悪な餓鬼、、、、、?」
「餓鬼道に落ちた邪悪に心当たりが?」
「聖杯窃盗団の一人から、同じ得体の知れない悪寒を感じたが?」
「私たちで調査します。」
と、言って、二万年老樹霊闇は考え込んだ。」
鹿島は、また新しい疑問、制御の利かない魔物のことが出たし、まだいろいろ聞きたくなってきたが、二万年老樹霊は、鹿島達から離れた位置に座り込んでしまった。
そして、薄い影となって消えてしまった。
老樹霊はガイア様ではない様だが、ガイア様の意思その者であるように思えた。
眷属と呼ばれる正体のようでもある。
台所の片隅で、老樹霊が経験させたくないといったのは、
パトラのことであったようである。
考えている事はムー帝国との戦場である。
身体年齢を自由に変える事が出来るのだから、これは卑怯だろうと思われる、
望み通りの美人顔にしたのであろう二万年老樹霊が現れて、
「今日。ムー帝国との決戦場所へ行かれるのでしたら、私もお供させてください。」
「人間同士の争いに興味がおありですか?」
「いいえ。まったくありませんが、人には経験しない方がいい場合もあります。経験させたくないので行きたいのです。」
「意味がよくわかりませんが?」
「創造主女神ガイア様の御心です。」
「ガイア様を信じているのですか?」
「混沌とした世界を陸と海に分けて、両方の世界に生あるものを育てたのがガイア様です。」
「魔獣や魔物もガイア様が生み出したのですか?」
「必要な時に必要なものを育てなさいます。」
「必要な理由は?」
「進化の過程で食物連鎖は重要です。だけども強いものだけが生き残る弱肉強食の世界では、秩序は生まれないのです。」
「秩序維持だけならば、草食獣だけでも良かったのでは?」
「秩序維持だけでは、世界を競争発展させるために用意した資源は無駄になり、進化も止まり意味がございません。」
「発展しなければならない理由は?」
「他の星から、神の代理である生き物が現れるのは、予測されているからです。
あなたたちが空のかなたから現れたときに、邪悪な神に生を受け生き物では無いことがわかり、
姿が似ているので同じマザー.イブ同胞から生まれたのであろう、あなた方に協力を求めたのです。」
「マザー.イブ同胞?」
「生と秩序に善良を尊ぶ母の子供達です。」
「われらが現れるとなぜ予知できたのですか?」
「星々が生まれる前は、神々全て生あるものを生み出せるのだが、
邪悪な神々同士の争いが激しくて、善良なる神々も争いに巻き込まれて、
互いに空の隅まで焼き尽くして、熱の塊である星々を生み出しました。」
「神々は死んでしまったのですか。」
「神々は死にませんが、手先となり戦う配下は焼き尽くせます。
焼き尽くした熱の塊は溶岩塊になり、
溶岩塊は空の熱エネルギーをすべて溶吸い取ります。
絶対零度の空間次元が生まれると、空はすべての神々を凍らせるほどに冷たくなるのです。
善良な神々も邪悪も神々共に生ある配下を作り出せるように、
熱の塊である星々に逃げるしかなくなり、
神は各星で各柱となったとの事です。」
「全ての星々には、其々神が存在しているのですか?」
「全てではないが、かなり存在していると思います。ですので、
神の星に住む子供達を守るために、
配下同士の代理戦争となるかもしれないので、
他の神の配下から防御できる発展が必要です。」
「貴方はどうして神々のことを知ったのですか?」
「ガイア様が活動している間には、いろんな生物やら植物が生まれました。
私が生まれて間もないころは、いつも私のそばでよく休んで、神々の話をされました。
ガイア様とこの星の生あるものの活動時間が違いますので、
今は理念と幽体だけが残り、まだ休まれている時間のようです。
活動出来る時が来たならば、貴方にガイア様への疑問がございましたらお聞きください。」
「いつ活動を始めるのですか?」
「わかりません。明日か?来年か?十年先か?あなたの生ある時までに間に合うのか?わかりません。」
鹿島には、確かにガイア様の存在は確認できてはいるが、
星々に神様が存在していて、それぞれの星で生あるものを育てている話は、鹿島は、似た話は部分的であるが神話として聞いたことがあった。
女性らは起きだして、せわしなく食事の用意を始め出したので、
鹿島は台所の隅も居心地がわるくなり、二万年老樹霊にこれ以上同行する理由を聞くことなく、居間ソファーへ移動した。
エアークラフトからの眺めは、ムー帝国の城壁外にある小高い丘の上に色とりどりの旗が閃いている。
コーA.Iからの報告では、隣国応援部隊の二国も参加しているらしい。
黄色に一の文字下に三星が描いてある柄の旗は鉄の国であり、赤鳥柄は塩の国らしい。
塩の国現国王はムー帝国から養子に出されたスケジュ皇帝の弟であり、
鉄の国の分家属国でもある。
鉄の国三万軍と塩の国一万軍は、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍合わせて六万軍と、対峙している大将軍トローチ率いる四万の軍勢を、見下ろした丘に布陣した理由は、
戦闘が始まると、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍の側面へ丘の上から駆け下り、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍を攻撃分断するようである。
ムー帝国の城壁を守っているのは二万の兵だけであるが、城壁外での戦闘が始まると、
直ちに門から進撃して、トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍の側面攻撃態勢で、一万の兵が門の内側に待機しているのは、かなりの戦術慣れしたムー帝国である。
このまま戦闘が始まると、両方にかなりの死傷者が出そうだ。
キョクトウ君は賛同してきた兵と、三八式歩兵銃を装備したエミュー隊千名に、
エミューに引かせた大砲六十門と、神降臨街屯田兵とを加えた五千の軍を率いて、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍に合流する予定地に急いでいたが、
戦場につくにはまだ半日かかりそうである。
エアークラフト内部でパトラは落ち着きなく動き回っているのは、
何かを決心しているようでもあり、迷ってもいるようでもある。
パトラの腰には矢を入れる革製の靭(うつぼ)を装備し、五本の赤い矢を収めてある靭から矢を一本ずつ取り出して確認していると、
靭から二万年老樹霊が三本の矢を引き抜き、
呪文を唱え始めた。
「ガイア様の力と精霊、この矢に宿れ。」
すると、二万年老樹霊が握りしめた三本の矢に、赤い微粒子が集まりだすと、
赤い一本の棒になった。
二万年老樹霊は赤い棒を握りしめたまま、操縦士マーガレットに囁いた。
「我らを太陽の光の中に隠れさせて頂きたい。
そして神降臨街で太陽が隠れた時に、テテサ教皇様が歌われたトルコ軍歌(祖先も祖父も)の曲を流してください。」
マーガレットは何かを悟ったように、
「了解しました。」
と、言ってエアークラフトを旋回しだし、コーA.Iに
とテテサの録音した歌声を送信するよう要請したのは、再び奇跡を起こすためのようである。
エアークラフトからの眺めは良好で、トーマス等の機動車輌は、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍中央前方に位置している。
大将軍トローチは二台の旅車の上に接続させた指揮番所を設けて、隣の荷車の乗せた陣太鼓に指示をしている。
陣太鼓に合わせて弓隊が前面に出て整列して弓に矢を添えると、
トロンボ州兵軍とゲルググ州兵軍は皆が盾を頭上にかざした。
一万の矢が軍中央前方に位置しているトーマスたちに、向かって迫ってきたが、
火炎放射器搭載軽車両十台からの強い風を伴った、火力にて全てが炭になり、
対峙している中間に焦げた煙の臭いと一緒に落ちてくると、
両陣営から驚きの声が響いたと同時に、トルコ軍歌(祖先も祖父も)が響き渡り、
皆が空を見上げたのちに、両知事と兵たちは片膝ついて祈りだした。
エアークラフトのドアを目いっぱい開けた状態の前で、
パトラは仁王立ちして赤い矢を弓にあてがい、
「トローチ将軍の眉間を狙います。」
と言ったが、二万年老樹霊は赤い棒を握りしめたままで、パトラを制し押しのけて、
パトラの居た位置に自身の身を置いた。
「ガイア様の力。」
と言って二万年老樹霊は、やりを投げるように、赤い棒を放り出した。
赤い棒は炎に包まれた燃える鳥がごとく、鋭い嘴(くちばし)に燃え盛る翅(はね)となり、
皆が注目する中で炎に包まれた燃える鳥は、両陣営の中間で旋回したのちに、
トローチ将軍に向かっていった。
炎に包まれた嘴と翅は赤い矢に戻り、トローチ将軍の眉間と両胸に刺さった。
両陣営の皆がトローチ将軍を注目していると、トローチ将軍は三本の赤い矢を身に刺したままで、身を硬直させての姿でゆっくりとした倒れ方であった。
ムー帝国軍兵は皆唖然としていたが、急に一人のトローチ将軍傍にいた兵のヒステリックな声で、全体がパニックとなり、ムー帝国軍兵は城門に向かって逃げ出した。
塩の国一万軍はあろうことか、パニック状態になったムー帝国兵に向かって丘から駆け下りて行き、逃げ惑うムー帝国軍に攻撃を始めているが、
それを見ている鉄の国三万軍は、素知らぬふりして丘の影に消えていった。
逃げ惑うムー帝国の兵は、城門に入ろうと押しかけているが、門の中には待機している一万の兵に阻まれて、進むことができないでいるところに、
後方から塩の国一万軍が襲い掛かっている。
門の内側に進む事ができないと判断した何名かの指揮官は、軍をまとめながら壁沿いに退却し出している。
四万の軍を何とか半数二万だけは、軍の秩序を持たせたようである。
体制を整えた二万のムー帝国兵は、逆に塩の国一万軍に襲い掛かった。
今度は塩の国一万軍が総崩れとなり、丘の方へ逃げ去ったが、ムー帝国軍は追うことはしなかったので、塩の国一万軍は丘の上で陣を組み直すと、野営の準備をしだした。
一度は総崩れとなった城壁外のムー帝国軍も、門を背に整然と居並んでいるのは、
ムー帝国軍の指揮官の中にも優秀な人材がいるようで、
鹿島はコーA.Iにそれらの指揮官を選別記録するように指示した。
トーマス元帥たちの軍も野営の準備を始めた様である。
パトラは唖然と顔で二万年老樹霊を眺めている。
「あなたは何者?ガイア様の使徒それとも眷属?」
「私にもわからないわ。ただ、七千年前に世のすべての種族に平和と安泰をもたらす者たちが現れたならば、力を貸してあげなさいと言われたの。」
「ガイア様にですか?」
「そうです。女神ガイア様です。」
「平和と安泰をもたらす者たちとは、複数人ですか?」
「たぶんそうだと思うわ。ガイア様に何度も話を聞かされた私の感じでは、
運営委員会のメンバー全員だと解釈しています。」
「ガイア様に何度もお会いしているようですが、今もお会いしているのですか?」
「七千年前までは、ガイア様は活発に行動していましたが、今ガイア様は眠りの中です。」
「しかしながら、私達は、夢の中で、閣下は妖精たちに包まれたガイア様のお会いして、力をいただいたのは最近でしょう。」
「私がお預かりしていたガイア様の理念の憑依印からの念力です。
半身様がお会いしたのは、理念です。
閣下がお会いしたガイア様は、幽体と理念です。」
「貴女がガイア様の憑依印から、私たちと閣下に会わせたのですか?」
「私ではないです。憑依印から理念が飛び出していったのです。」
「話を戻しますね。平和と安泰をもたらす者たちとは、
私達の子供たちも含まれているのですか?」
「運営委員会の知識と技術で、三千年間停滞していた遅れを取り戻す事ができる子供たちは、すべての中心的な役目を持つでしょうから、
その母親たちが根幹をなすのは当たり前です。」
「コーA.Iの知識を、子供達が活用できると?」
「ガイア様の理念が、何かを察知したのでしょう。」
「トローチ将軍を射るのを変わったのも、理由があってのことですか?」
「母親たちは全員聖母であるべきです。手を血で染めるのは閣下と私です。」
パトラと二万年老樹霊の会話を聞いていたマーガレットは、
「一万年老樹霊が、テテサも半身になって子供を授かると?」
「もちろんです。」
「父親は、やはりガイア様の伴侶ですか?」
「私は、予知する。空間次元の操作は出来ません。」
「あと二人の子供のことも、分からないと。」
「平和と安泰をもたらす者の子供達に、老樹霊達の加護は当然です。」
「それ、答えではない。」
と、マーガレットの声がスピーカーから響いた。
鹿島は、老樹霊の言葉の曖昧さと歯切れの悪さの原因は、
余計な言葉は、ガイア女神の代理だと誤解されたくないのと、自分が出来る事だけを伝えたいだけと思えたので、
二人の険悪を避けるように、
「最悪の樹海美魔女も加護者?」
「あの子はまだ五千年少しなので、ガイア様にお会いしてないので無理です。
これからの後、ガイア様の加護を受けた一万年以上の老樹霊達と、
猫亜人を救い出した老樹霊も現れますし、
あなた達耳長種族が知識と力を得たときの、
手助けをした老樹霊も現れるでしょう。」
「一つ確かめたい。最初魔物の眉間に剣を刺したときに、得体の知れない悪寒を感じたのだが、二度目の魔物からは、何も感じなかった。何か理由を知っていますか?」
と鹿島は、胸に刺さった刺の疑問を聞いた。
「制御の利かない魔物のことですね。その得体のしれないもの、邪悪な餓鬼を見つけ出して欲しいのです。」
「あの男も、邪悪な餓鬼、、、、、?」
「餓鬼道に落ちた邪悪に心当たりが?」
「聖杯窃盗団の一人から、同じ得体の知れない悪寒を感じたが?」
「私たちで調査します。」
と、言って、二万年老樹霊闇は考え込んだ。」
鹿島は、また新しい疑問、制御の利かない魔物のことが出たし、まだいろいろ聞きたくなってきたが、二万年老樹霊は、鹿島達から離れた位置に座り込んでしまった。
そして、薄い影となって消えてしまった。
老樹霊はガイア様ではない様だが、ガイア様の意思その者であるように思えた。
眷属と呼ばれる正体のようでもある。
台所の片隅で、老樹霊が経験させたくないといったのは、
パトラのことであったようである。
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ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
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といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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