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137南方戦線

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 西大陸戦争は激化し始めると、
海兵師団は、南の島々や国々が植民地となっていた地に攻め込んだ。

 海兵師団の活躍は目覚ましく、
強力な火力の前には向かうとこ敵なしの状態で、
それらの島々の植民地を次々と開放していった。

 南の国々を制圧する戦略拠点として、東大陸の最南端の海峡海岸上陸作戦が発動した。

 海峡海岸においては、西大陸連合軍の司令部が置かれていた。

 海峡海岸の海岸線には頑強な丸太防御壁が出来ていて、
桟橋と思われる残存跡の杭だけが海から突き出ている。

 海峡海岸の丸太防御壁内には、
湾を取り囲むように大型弩弓を並べている。

 その陣容は、
潮瀬戸際からは足を踏み込ませないとの威圧を与えていた。

 頑強な防御壁に向かって、戦艦武蔵と既にディーゼルエンジンに切り替えた戦艦春日と戦艦日進に、五隻の巡洋艦の砲撃が始まった。

 砲撃は絶え間なく続けられ、頑強な防御壁は意味をなさなくなった。

 西の海峡から百隻を超える三本マスト帆船が現れると、
届く距離ではない場所から、
大型弩弓から放された石の塊と火矢の飛来が戦艦に向かって来るが、
全て海中に落ちていった。

 巴司令官は慈悲もなく、
三本マスト帆船に向かって全艦砲撃命令を出した。

 三本マスト帆船の船体木片は、
爆裂により全てが空に投げ捨てられた状態に見えた。

 静寂となった海上には燃える帆だけが、
海に浮かんでいるマストから離れたがるようにたなびいていた。

 五隻の輸送艦は、
百隻を超える三本マスト帆船が浮かんでいた場所に行き、
多くの丸太を投下しだした。

 多くの丸太の周りには白い波が溢れていて、海峡両岸の岸に向かいだしていた。

 双眼鏡か見える海峡海岸の頑強な防御壁は、すでに無くなっていて、
「コーA.I。敵の残兵戦力はどのくらいだ。」
と、ヤン元帥は尋ねた。
「負傷者は多数ですが、
動ける者は全て後方のジャングルに後退しました。」

 三万の海兵連隊は矢一本の抵抗を受けることなく、
伝馬船と呼ばれる小型木造船での上陸を行った。

 巴司令官は慈悲もなく三本マスト帆船に向かって全艦砲撃命令を出したが、防御壁内の負傷者に対しては回復薬を与えていた。

 上陸した三万の海兵連隊は弾き飛ばされた丸太杭を集めると、
頑強な防御壁と比べるとお粗末ながらも、
背丈ぐらいの防護壁を構築した。

 西大陸連合軍はジャングルから出てきて、
二晩続きで二度の攻撃を行ったが、
海兵連隊の反撃で死傷者を残したままジャングルに後退した。

 上陸三日目から、五人十人と投降者が現れだしてくると、五日後には百人を超え、七日後には千人の投降者と共に、
西大陸連合軍の各国将軍をも投降してきた。

 各国将軍は、高級士官の好待遇を要求したが、
ヤン海軍元帥はやんわりといなしながらも、
捕虜の待遇に差別はないとはっきりと返事すると、
捕虜になるか、落ち武者になるかを選べと恫喝した。

 落ち武者になり、ジャングルに逃げるならば追跡は不可能なので、追跡はしないと約束したが、
高級士官達は、
ジャングルでの七日間は生き残るのは不可能であると思い知らされていたので、差別のない捕虜の待遇を受け入れた。


 ヤン元帥と巴司令官は、万余の捕虜に苦慮したが、
捨ておくこともできないと判断すると、闇の樹海の最南端裏の山脈側への侵攻に備えて、施設労働者として雇い入れた。

 施設労働者として雇い入れた西大陸連合兵士達は、
現地人からの恨みが強いので、
丸腰での逃亡は危険と判断しているのか、
海兵師団の保護下に入って各施設の建造と敷設にいそしんだ。

 海兵師団は、
南の島々と山脈裏の国々から西大陸連合国を追い出し降伏させたのちは、植民地となっている国すべてを独立させると、
港湾施設を整えて南大陸に海側から向かう準備がなされた。

 解放された植民地では、
巴司令官は原住民を自営団の名目で武装させ、
独立宣言をさせると、
学校の普及と亜人協力国の国是を浸透させ理解させた後に併合の調印を行っていった。

 武装艦船においては、南大陸と南の島々や山脈裏の国々の中間大洋に浮かんでいる帆船の検問検査や船内検査を行い、
奴隷の輸送や掠奪物を取り締まっている。

 帆船に武器類を備えたり持ち込んでいたならば、
即破壊して沈めてしまった。

 中間大洋の海は、海賊海原と呼ばれていたが、
亜人協力国の武装艦船が往来しだすと、
今では海賊行為を働く船舶はなくなっていた。

 西大陸方面では、現状兵力では防衛一方になりだしてきたので、
第三師団と魔物討伐隊を除いて、すべての兵力を投入した。

 鹿島とトーマス元帥は、珍しく輸送艦の屋上野外ステージで、
ビール片手に今回の戦争においては、
かなりの犠牲者が出るだろうと予想していた。

「十万人では収まらないだろう。」
「どんなに犠牲者が出ようと、各国の指導者は引かないでしょう。」
と、トーマスは暗い顔をしたまま、
優雅に飛び回る赤と黄色にピンク色の赤とんぼと呼ばれている複葉機に見入っていた。

「あの三機の複葉機は如何程かっかたのだろう?」
「三人とも白金貨十枚出したらしいですね。」
「一億クレジットか。贅沢な遊びだ。」
「どうせ、手元にあっても使い切れない。通帳の肥やしだ。」
と二人は、自分等も使い切れない、
給金の処置に苦慮してるかのように話している。

 亜人協力国においては、最高給金受取者はカジマ提督であり、
亜人協力国が成立した頃は、
兵士の初任給の八倍と決めていたのだが、
行政官が増えるたびに給与のバランスが取れなくなって、
今では月の給与は白金貨五枚になっていた。

 カジマ提督の給与に合わせるように、みんなの給与も仕事に没頭してるために、使う道は少ないが、高額給与となっていた。

  二人の会話を待ってたかのように、
タブレットパソコン片手にヤン海軍元帥が現れた。
「お待たせしました。かなり細かく調べることができました。」
と言って、画面わきにずらりと文字が並んだ。

「矢張りショーセツは三八歩兵銃を持ち出して、
仲間と共に海洋へ逃げたようです。」
「弾丸は?」
「かなりとしか、言いようがありません。」
「まだ三八歩兵銃はショーセツの手元にあるのだな。」
「中間大洋の海賊海原で、エゲレスの三本マスト軍船に乗っていた、本国に逃げる途中の将軍を捕獲出来ました。
三八歩兵銃の噂を聞いた所、
エゲレス国が一千万住民のいる南の島々を領土化していた場所と、
三八歩兵銃と弾丸に火縄銃五十丁で交換したらしいのです。」
「火縄銃?」
「この惑星ではもともと古くから、黒煙火薬はあったようです。
ただ、いままでは花火程度に使われていただけだったらしいです。」
「銃身の製造は難しいだろう?」
「面白い作り方をしています。太い針金と細い針金を組み合わせて、筒を製造したようです。」
「組み合わせて?」
「鉄の棒に太い針金を巻いて、凹みの部分は細い針金で埋めるように巻いてから、焼き叩いて穴をこしらえたようです。」
「それでも。銃身の根元を密封するのは難しいだろう。」
「その技術は亜人協力国から漏れたようです。
塩生産工場建設時に、梁を固定するのにネジを使っていたようで、
その技術が使われているようです。」

 以前、日出国の独特の大八荷車を鹿島は思い浮かべた。
「日出国州の職人は、独特の創作力があるようだ。」
と、ポツリと鹿島はつぶやいた。
「その作り方だと、大量生産は可能ですね。」
とトーマス元帥もつぶやいた。

「ショーセツを捕らえる事は出来るか?」
「その島々を取り巻く海流は、南側は東方から西側へ流れていて、
北側は西の方から東側に流れているようです。
両方とも海流の流れが速く、岩礁の先の方はとがっているらしいので、島の住人は浅瀬と岩礁を避けるすべを知っているが、
島の住民以外は島々にはなかなか近寄れない場所のようです。」

「火縄銃製造場所にいる、技術者の捕獲を優先してくれ。」
と、鹿島は銃身を製造した技術者に会いたくなって捕獲を命じた。

 南方戦線は概ね制圧は終わりを迎えたとの、
ヤン海軍元帥の言葉があったので、
鹿島は技術者の人材の確保を優先させた。

そして、日出国州の技術者の確保をも指示した。

「戦い方が、かなり変わりますね。」
と、トーマスは暗い顔をさらに暗くした。

 そして、エゲレス国では火縄銃の大量注文により、
流れ作業に始まった産業革命がおこった。

 産業革命によって、西大陸の国々でも工場を建て始めだすと、
いろんな軍事物資が大量に戦場に現れだした。

 第一次世界大戦は、三百万丁の火縄銃も加わり、
弾丸が飛び合う戦場となっていった。

 それに伴い、亜人協力国の負傷者は当初一けた台であったが、
火縄銃が加わったことで、両方に多くの負傷者と戦死者を、
戦うごとに記録を更新しだした。
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