【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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147北新大陸

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 軍需産業と造船業の好景気に引かれるように、
亜人協力国はインフレーションを加速させながらも、
運営委員会の危惧に反して好景気に沸いていた。

 マティーレの政策は、亜人協力国への税収を増やしただけでなく、南の国々は安い税の恩恵で、色んな産業を発展させた。

 日出州にある海軍省には、カジマ提督とヤン海軍元帥は、
三つの新大陸への海図とにらめっこしている傍で、
巴夫人は静かにコーヒー豆をひいている。

「三本マスト帆船にて先行した蘭丸海兵団は、
ここのフラ島列島に寄り、食料と水の補給を受けたのちに、
北新大陸の西海岸に着く頃には、補給艦隊も追いつくでしょう。
護衛艦隊として、装甲巡洋艦は春日と日進だけで良いのでしょうか?」

「海戦は小規模な戦いだろう。輸送艦の造船は間に合いそうですか?」

「優先に造船させていますし、他の用途計画中であった造船をも、
図面変更して輸送艦に改造中です。」

「申し訳ない。」

「全くですが、亜人共和国のインフレーションは、
思わぬ効果を南の国々に与えた様子で、
物の所有意欲の影響が大きくなって、自主意欲が出たようですので、我らの援助が少なくなるので、残りの帆船で間に合いそうです。」

「自主性と合わせて、個人の尊厳を浸透させてくれ。」
「暫く時間はかかるでしょうが、必ず浸透させます。」
と、
鹿島とヤンの会話中に、巴は二人にコーヒーを差し出しながら、

「父が大変なご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。」
と、巴は鹿島に頭を下げた。

「俺等には何も迷惑など何もなかった。気にするな。」
と、鹿島はにこやかに微笑み返した。

 日出州ヨコスカ軍港から近衛師団を乗せた輸送艦五隻を先導するように、装甲巡洋艦日進艦は港を出た。

 五隻の護衛艦の甲板からは、
色とりどりのテープが垂れ下がっているのは、
安全な航路を願われての送りを受けたのだろう。
 
 同じ頃、神降臨街の大河桟橋でも装甲巡洋艦春日艦を先頭に、
エルフ第四師団を乗せた輸送艦五隻も出航した。

 鹿島とパトラは、
装甲巡洋艦日進艦の艦橋で、これからの北航路の説明を受けている。

「新大陸まで、どこにも立ち寄ることは有りませんが、
新大陸までは最短距離です。ただ、海は少し波が高いでしょう。」
と、
元巴番長の配下で、豚似コヨーテに襲われていた少年は、
いまでは日進艦のイソロク艦長になっていた。

 船酔いで真っ青な顔の二人には、
説明されている海図に目を落としてはいるが、
理解してない様子である。

「パトラ、船酔いの薬はないのか?」
「あるなら私が使っています。」
と、
バケツを手にした二人は、立ってるのがやっとの様子である。

「船酔いは寝てるしかないでしょうが、
苦しくても食べるようにしてください。
それだけが、早く船になれる対処方法です。」
と、
最初、鹿島を恐れていたイソロク艦長は、
鹿島を人だと認識したのか、にこやかな顔をしだしている。

 鹿島とパトラのいる部屋は、落下したと思うと急に横に振れだす。

 パトラは毛布と枕を頭に乗せて、うつぶせ寝している。

「死んじゃう。苦しい。何とかして。」
「船酔いで死んだ人はいないそうだから、
何かを食べて睡眠剤を飲んで、寝た方がいいと思う。」
「口に入れると余計苦しい。」

 鹿島はパトラが苦しがるのを見て、
優しく肩と首のマッサージを始めた。

「気持ちがいい。ありがとう。」
と言って、
パトラは静かになったと思ったら、いつの間にか寝入っていた。

 鹿島はいい匂いに起こされると、
パトラはテーブルに野菜スープを皿に盛っている。

「おはよう。大丈夫かい?」
と、
まだお腹を締め付けられる感触ながらも、
鹿島はベッドから起きだした。

「もう平気みたい。お腹が空いたでしょう。私もお腹ペコペコです。」
と、パトラの顔は穏やかになっていた。

 鹿島は起き出してスープを飲み込むと、
お腹を締め付けられる感触は無くなり、少し晴れやかになった。

「なんか、身体が新品になったような感じがする。」
「でしょう。昨日までの気分の悪さは、私も無くなった。」
と、二人の食欲は戻ったようである。

「北の海では、怪物が出ると聞いたのだが、大丈夫だろうか?」
「いうなって。ほんとになったらどうするんだ。」
と、鹿島は海での戦い経験がないので、
特定の状況を引き出す言葉を遮りながら、

「フラグよたつな。くわばら、くわばら。」
と、呪文を唱えだした。

 月夜の海は真っ暗で、
甲板上に居る海兵見張りはデッキから海を覗くと、
「出た!」
と、叫んだ。

「何が?」
「海の中から、大きな目で睨まれた。」
と言って、震えながらデッキの下を指差した。

 相方が海を覗くと、
白い巨体が艦を追い越して前方の方へ過ぎていった。

「この春日艦は確か百五十メートルだったよな。」
「ああ~。百五十メートルに間違いはない。」

「同じぐらいの大きさだったよな。」
「同じ大きさだった。」

 二人はデッキから身を乗り出して進路先を確認しだした。

 舳先の艦首部の先は真っ暗であったが、
月の明かりに反射してる白い波を確認して眺めていた。

 鹿島とパトラは、
イソロク艦長からの緊急事態の連絡を受けて艦操舵室に向かった。

「後方の春日艦より連絡が入りまして、注意して警戒していますと、見たことも、聞いたこともない巨大な生物が、
艦を追い越していきます。」
といって、
左前方を指さしながら双眼鏡を鹿島に渡した。

 鹿島は双眼鏡を受け取り、
「巨大なのは理解できるが、
対象物がないので、正確な大きさはわからないな?」

「春日艦を追い越すときには、同じ大きさぐらいだったらしいです。」

「春日艦の全長は、
確か百五十メートルだったよな、、、そう聞いた気がしたのだが?」
「はい。百五十メートルです。」

「そんな生き物がいるのですか?」
と、パトラは鹿島から双眼鏡を受け取りながら、
前方の生き物を観察している。

「あ、なんかひげが出た!」
と、パトラが叫ぶと、
大きな生物はくじらであったが、
口には赤いイカの胴体をくわえて海上にジャンプした。

 イカの触手はクジラの胴体を巻き込んでいるのが見て取れた。

 クジラがジャンプしたために、
津波のように三角波が日進艦と後続の輸送艦を襲った。

 三角波の為に艦が大きく傾くと、
双眼鏡で覗いていたパトラの身体は宙に浮いた。

 鹿島の身体はすぐに反応して、パトラを抱きかかえるように、
パトラと床に間に滑り込んだが、
パトラを抱いたまま冷たい鉄壁にたたきつけられた。

 鹿島は意識朦朧になりかけると、
テテサ教皇の娘アンタイの声に起こされた。

「お父様。船の真下から怪物が浮上します。気を付けて!」

 鹿島は傍に転がってきたイソロク艦長の肩を掴み、
「真下から怪物が浮上してくる。避けろ!」
と、怒鳴った。

 イソロク艦長は無人となっている舵にしがみつくと、
舵を目一杯右に回しながら、
「面舵一杯!機関全速!」
と叫んで、船が九十度方向に向かうと

「ようそろ。こちらはイソロクだ!
各艦連絡せよ!天気晴朗なれど波高し!」
と叫んだ。

「ようそろ。」の掛け声はそのまま進めとの合図で、
「天気晴朗なれど波高し。」との言葉は、敵が現れたとの合図であった。

 日進艦のいた辺りの海面が大きく盛り上がって、
クジラとイカが再び現れた。

 イカの触手と足は胴体を飲み込まれないように、
クジラの胴体をぐるぐる巻きにしていた。

 鹿島は再び浮上したクジラの目と目が合ったと感じて、
にこりとされたようにも思えた。

 大きく盛り上がった海面は、表高五十メートルにも思えた。

「やばかったようでした。
閣下もヤン元帥と同じ感知魔法を使えるのですか?」
と、肯定の返事を期待している顔である。

「少しだけだが、使える。」
「ヤン元帥も敵の方向とか、規模さえも事前に感知できたので、
南の海では、向かうところの敵をせん滅出来ました。」
と、胸を張った。

 クジラとイカの格闘場から離れると、穏やかな航海が続き、
はるか遠くに、朝日に照らされた北新大陸の陸地が見えてきた。

 コーA.Iからの指示で、陸地と島の間を抜けた湾深くに侵入すると、砂浜海岸を確認できたが、
先に着いているはずの三本マストの帆船で向かった海兵師団の姿が見えない。

 輸送艦から多数の小舟が降ろされて、
近衛師団と魔物討伐隊は陸地に向かい、
一部の偵察隊を除いて臨時の浮島桟橋を作り始めた。

 程なく第四師団を乗せた輸送艦と春日艦も現れて、
第四師団による砦の建設が始まった。

 ようやく遅れていた海兵師団も浮き桟橋に横付けできたようで、
砦の建設に取り掛かった。
 
 丸太杭砦はたちまちの内に出来て行き、
砦内には二十万人用のテントが並んだ。

 一際大きなゲルの中では、
鹿島とパトラにハービーハン師団長や蘭丸海兵連隊長に、
各師団の連隊長が集まっている。

「近衛師団と魔物討伐隊半数は北に向かい、
第四師団と魔物討伐隊残りは南に向かう。

 各師団はそれぞれの地域に着いたならば、
東に向かって地域住民を吸収しながら東海岸を目指す。

 この大陸の主は魔物らしいので、みんな気を付けてくれ。」
と、鹿島は北新大陸地図に印をつけながら、
全員に侵攻目的と制圧順位を説明した。

 三つの新大陸に生息している魔物や魔獣は、
億を超えるらしいとのコーA.Iからの報告である。

 パトラは魔物討伐隊を集めて二班に分けたのちに、
「この大陸では、魔物も魔獣も大型らしいので、無理はするな。
どんな魔物がいるかわからないのが、現状だ!」
と、皆を見回した。

「同種族が居るとのことですが?」
「居る。インデアンエルフと呼ばれているらしいが、
彼等は狩りだけの生活なので、常に移動しながらの生活らしいから、農業や牧畜を教えて定住を促すつもりだ。」

「反感を持たれたら、どの様に対応すればよいのです。」

「親兄弟、親戚や友達と思い、優しく接してくれ。
我らが種族の名誉を汚すような、人道に背く行いはするな。」
と、パトラは一同を睨んだ。

    相変わらずの、乱文、迷文、変文のお付き合い、
                 ありがとうございます。
   仁、礼、智、信、孝、節、悌(てい)、義、絆
  九つの徳、の心で優しく見過ごしてください。

 貴方にガイア女神様の加護があるように祈っています。
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