【R18】義弟と一夜の過ちを犯してしまいました

ハリエニシダ・レン

文字の大きさ
11 / 13

11

しおりを挟む
喉が渇いたのでキッチンに下りたら明がいた。

「遠矢となんかあった?」

ギクリとしつつも首を振る。

「なんかって何よ。何にもないわよ」

じっと疑うような視線を注がれて、思わず唇を尖らせて睨む。
やましいことが、本当はあるから。

「何もないってば」

重ねて言うと、視線を逸らされた。

「あっそ」

興味を失ったような顔で冷蔵庫を開けた明が、麦茶を取り出した。

「あ、あたしにもちょうだい」

コップに注ぐ明に言うと、コクリと頷いて

「はい」

とそのまま渡してくれたので受け取る。

「ありがと」

「ん」

もう一つコップを取って、自分の分を注ぐ明。

こういうところは、相変わらず優しいんだけどな…

最近ちょっと付き合いにくくなってしまった弟をこっそり眺めながら、手の中の麦茶を飲む。

「…そういえば、彼氏と別れたの?」

唐突な質問に思わずむせた。
飲んでる時に聞かなくたって…。
ちょっとうらめしい。

「あーあ……」

ため息を吐きながら、近づいてきた明が背中を叩いてくれる。

「…なんで」

麦茶で汚れた口元を手の甲で拭って、上目遣いに明の表情を伺う。
まさか遠矢が明に……言う訳ないか。

「最近夜、電話してないみたいだから」

あ、それでか。と納得する。
明の部屋は私の部屋の向かいだけど、大きな声を出せば多少は聞こえてしまう。

「…うるさかったんだ。ごめんね?」

ちょっと配慮が足りなかった。
私は彼と付き合っ……ていると思い込んでいた頃は、毎晩三十分は電話してたから。……今思えば、その電話でも美穂子のことを結構聞かれてた気がする。
ちょっとくらい疑えば良かったと、ため息を吐いた。

「…で、別れたの?」

「関係ない」と言おうとして、隠すことでもないかと思い直して頷いた。

「へー…どうして?」

流石にそこまで言う義理はないので、首を横に振る。

「なんでだっていいでしょ。……合わなかったのよ」

…そもそも彼は、私のことなんて好きでもなんでもなかったんだから……

思い出して唇を噛んだ。
明が戸惑ったような顔になる。

「…あー、うん。ごめん…」

首を振って気にしなくていいと伝えた。
別にいい。もう終わった事だ。
次に誰かと付き合う時は、もうちょっと慎重になればいいだけなんだから…

そう思った瞬間に遠矢の顔が浮かんで、慌てて頭を振って追い払った。

遠矢はない。
遠矢は私の義弟で、姉弟として慰めてくれただけなんだから…。
……やり方はともかく。
だから遠矢はない。
除外。
そうじゃなくて、もっと別の誰か……

考えを巡らせていたら、明がじっと私を見ていた。

「何?」

「…ううん、何でも」

何でもないって顔じゃないけど、しつこく聞いても無駄だろう。明は最近特に、話をしてくれなくなったから。
昔は「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ってあんなに可愛かったのに……

…遠矢も明も詐欺だ。大きくなったらこんなに生意気になるなんて。
ちょっとムカムカしていると、「何?」と首を傾げられた。
…そういう仕草は、昔と変わらないのに。

「……昔は可愛かったのになって」

ジト目で言うと、嫌そうな顔をされた。

「高校生にもなって可愛い男とか気持ち悪いだろ」

……一丁前に。

「そんなことないわよ。あんたは三十になっても四十になっても、私の可愛い弟よ」

ムカついたので、ふふんと笑って言ってやった。この事実は変わらないから。何年経ったって、明は私の可愛い弟だ。ずっとずっと。
明が更に不機嫌になった。

「姉さんのそういうところが…」

ふいっと横を向いて呟いて、キッチンを出て行ってしまう。
失敗したと、ため息を吐いた。

明と少しギクシャクしてるのは、私も悪いのだ。今みたいにちょっと話す機会があると、嬉しくなってつい余計な事まで言ってしまうから。そのことに、明が怒ってしまうまで気づけない。
この程度で怒る明が怒りっぽ過ぎるとは思うけど。でも……


「…ごめんね」


相手には聞こえない謝罪をポツリと呟いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...