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初デート
待ち合わせ
しおりを挟む噴水のところに、一人の男が座っている。
茶色がかった髪、すらりと伸びた首筋、手元の本に落とした涼しげな目。
少しの間見惚れていると、そいつは俺に気づいて顔を上げた。
「おはよう」
向けられた笑顔が眩しい。
見てくださいよ皆さん。コレ、かっこいいでしょ?俺の彼氏なんすよ。信じられます?
心の中で全国の皆さんに自慢しながら近づく。
「っす」
挨拶を返すとそいつは嬉しそうに目を細めた。
心臓が跳ね上がる。
なんなのこいつ。俺を殺す気なの?
よしきた、本望だ。かかってきやがれ。
俺が覚悟を決めて、口をぎゅっと引きむすんだら、そいつは心配そうに顔を曇らせた。
「どうした?具合でも悪いのか?」
俺だけを見つめる視線。気遣う声音。
肩に手を回され引き寄せられる。
そのまま頰に手を当てられ顔を上向けさせられた。
目を覗き込まれる。
「大丈夫か?」
一連の動作が流れるようで、反応できなかった。
はっと我に返り飛び退く。
「おまえ近いよ!」
顔が一気に熱くなった。
外で何やってんだよ。
「いや、心配で」
そいつは困ったように笑うと、また目を細めた。
だから、その顔をーーーやめなくていいんだけど俺の心臓がピンチだ。
さっきから心臓がうるさい。
一生の間に打てる鼓動の数には上限があるって何かで読んだことがある。
俺の寿命はこいつに削られるんだな。
よしきた、本望だ。
「なんもねぇよ。心配すんな」
そっぽを向いてそう言うと、ホッとした空気が伝わってくる。
なんだよ、そんなに俺のことばっか気にしてんじゃねぇよ。ドキドキが収まらねぇだろうが。
「行くぞ」
少しでも距離を開けたくて、早足で歩き出す。
だがそいつは長い脚でなんなく隣に並んだ。脚長すぎだろ、モデルかよ、くそっ。
そして俺の手を握った。
「ななな、何してんだよ!??」
だからここ、外だぞ!?
そいつは振り解こうとした俺の手をしっかりと握ったまま、距離を詰めてきた。
「いや、やはり心配でな。様子がおかしい」
そのまま目の奥を覗き込まれる。
「今日はずっとこうして手を握っていたい。ダメか?」
至近距離で言葉を紡ぎ出す色っぽい唇。
握った手の親指で、手首から指先までそっと撫で上げられた。
腰が砕けてしゃがみ込まなかった俺を誰か褒めてくれ。
なんだよこの破壊力。一人の人間が持ってていいもんじゃないぞ?
「だだだ、ダメーーー」
真っ赤になって拒否しようとするが、
「嫌か?」
真剣な眼差しで問われる。
その聞き方はずるいだろうが。
ダメとは言えるけど嫌なわけがねぇ。
目を見たままだと断りづらくて、そっとそらした。
「い、嫌じゃねぇけどダーーー」
おいこら。
俺の言葉の途中でぎゅっと手を握り直すんじゃねぇ。
そんでそのまま歩き出すんじゃねぇ。
そんで歩き出す前にそんな嬉しそうに笑うんじゃねぇ。
見てねぇけどなんか気配でわかんだよ。おまえが笑うの。
手を引かれて仕方なく俺も歩き出す。
そう、引っ張られたから仕方なくだ。
指と指を絡ませあった右手が熱いだなんて思ってねぇ。
そこから伝わってくる熱に目眩なんて感じてねぇ。
断じてだ。
くそっ。
会って5分で倒れそうだ。
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