189 / 194
橘家
8
しおりを挟む
夜中に何度か健介が目覚めた。
というより、熟睡する時間の短い子供のようだ。
原田は元々寝ていないので、健介が目覚めてぐずって泣く前に気付いて宥める。
しかし宥めても一度起きてしまうと寝ないでぐずる。
しょうがないので布団を出て、寒いので毛布を被ったまま健介を抱いてカーテンを開けて下に広がる夜景を眺めたりする。
そうしているうちに、また健介がうとうとと瞼を閉じる。
健介がいくら泣いても朱鷺が起きることはないから気が楽だ。
それを何度か繰り返し、朝になった。
朝とは言えまだ日も昇らない早朝で、本当はもう一度寝て欲しいのだが健介が一向に泣き止まない。
ここまでぐずるのはもしかしておむつか?と気付き、買い置きがダイニングの隅にあったことを思い出し、原田は健介を抱いて部屋を出た。
他人の家で勝手に階段を降りたり部屋に入ったりすることに躊躇いを覚えながらも、こんな早朝に許可を取る方が失礼なので勝手にダイニングに失礼する。
暖房がタイマーでセットしてあったようで、室内は暖かい。
ソファに健介を降ろし、おむつを一つ取り出し、取り換えてやる。
まだ不満そうな顔をしているが、眠いだけだろう。
そこに橘母が下りてきて、あら早いのね、とあくび交じりに笑った。
「おはようございます。夕べは遅くまでお騒がせしました」
「いいわよ。一番うるさかったのは大和だし」
そう返されて、原田もつい笑う。
朝食前に健介と二人分のほうじ茶を入れてもらってソファに座ってまったりしていると、橘父、昴、大和と順番に下りてきた。
おー、はやいね、おはようございます、寝られた?まぁそこそこ、じゃあよかった、そんな挨拶をしていると次に君島がやかましく駆け下りてきた。
「あ!いた!布団まで無くなってたからいなくなったんだと思ったよ!どこ行ってたの?!」
第一声からやかましい。後ろから森口も来ておどおどと挨拶した。
「おはようございます。みなさん、お早いですね」
そうでもないけどな、だいたい朱鷺はいつも遅いしな、などと返しているうちに朱鷺も下りてきた。
洗面所に行ったり食卓についたりして慌ただしく順番に朝の準備を進めていく。
今日はどうするんだ?とか家ってどこなの?とかそういえば昨日の書類を書いてないなと思いだしたりして、順番に食卓を離れて昨日森口が持ってきた書類を広げた。
「家の住所か。ここの下ですから、ここと番地が違うぐらいですよね?」
と、原田がその書類を摘まんで大和に訊く。
「そうだろうな。全部みどりさんに依頼してしまったからみどりさんに訊くしかないな」
みどり不動産にあの物件はお願いした。
「今日営業してるだろ?始業頃に電話してみろよ」
「はい」
「あら。お店通したら手数料を取られるんじゃないの?私がお友達に話してあげるから直接買えばいいじゃない?」
母がキッチンから声を掛けてきたが、原田が断った。
「いや、手続きや引き渡しの手間を考えたら仲介料払った方が安いと思いますよ。それと、申し訳ないですけど、売り主と直接の交渉はあまり持ちたくないです」
「まぁ、それもそうね。じゃあ私も知り合いが買ったなんて言わない方がいいわね?」
「はい。できれば」
「そう。わかったわ」
そしてみんな出掛ける準備を始める。
そんな中、着替えを持っていないのは原田一人。健介の着替えは森口と君島が持ってきたし、二人は夕べ着替えを取ってからここに来たのだ。
朝からまた児童相談所に行くのだが、原田が着替えるために途中でアパートに寄ることにした。
行ってきます、とまた昨日と同じメンバーで車に分乗した。
というより、熟睡する時間の短い子供のようだ。
原田は元々寝ていないので、健介が目覚めてぐずって泣く前に気付いて宥める。
しかし宥めても一度起きてしまうと寝ないでぐずる。
しょうがないので布団を出て、寒いので毛布を被ったまま健介を抱いてカーテンを開けて下に広がる夜景を眺めたりする。
そうしているうちに、また健介がうとうとと瞼を閉じる。
健介がいくら泣いても朱鷺が起きることはないから気が楽だ。
それを何度か繰り返し、朝になった。
朝とは言えまだ日も昇らない早朝で、本当はもう一度寝て欲しいのだが健介が一向に泣き止まない。
ここまでぐずるのはもしかしておむつか?と気付き、買い置きがダイニングの隅にあったことを思い出し、原田は健介を抱いて部屋を出た。
他人の家で勝手に階段を降りたり部屋に入ったりすることに躊躇いを覚えながらも、こんな早朝に許可を取る方が失礼なので勝手にダイニングに失礼する。
暖房がタイマーでセットしてあったようで、室内は暖かい。
ソファに健介を降ろし、おむつを一つ取り出し、取り換えてやる。
まだ不満そうな顔をしているが、眠いだけだろう。
そこに橘母が下りてきて、あら早いのね、とあくび交じりに笑った。
「おはようございます。夕べは遅くまでお騒がせしました」
「いいわよ。一番うるさかったのは大和だし」
そう返されて、原田もつい笑う。
朝食前に健介と二人分のほうじ茶を入れてもらってソファに座ってまったりしていると、橘父、昴、大和と順番に下りてきた。
おー、はやいね、おはようございます、寝られた?まぁそこそこ、じゃあよかった、そんな挨拶をしていると次に君島がやかましく駆け下りてきた。
「あ!いた!布団まで無くなってたからいなくなったんだと思ったよ!どこ行ってたの?!」
第一声からやかましい。後ろから森口も来ておどおどと挨拶した。
「おはようございます。みなさん、お早いですね」
そうでもないけどな、だいたい朱鷺はいつも遅いしな、などと返しているうちに朱鷺も下りてきた。
洗面所に行ったり食卓についたりして慌ただしく順番に朝の準備を進めていく。
今日はどうするんだ?とか家ってどこなの?とかそういえば昨日の書類を書いてないなと思いだしたりして、順番に食卓を離れて昨日森口が持ってきた書類を広げた。
「家の住所か。ここの下ですから、ここと番地が違うぐらいですよね?」
と、原田がその書類を摘まんで大和に訊く。
「そうだろうな。全部みどりさんに依頼してしまったからみどりさんに訊くしかないな」
みどり不動産にあの物件はお願いした。
「今日営業してるだろ?始業頃に電話してみろよ」
「はい」
「あら。お店通したら手数料を取られるんじゃないの?私がお友達に話してあげるから直接買えばいいじゃない?」
母がキッチンから声を掛けてきたが、原田が断った。
「いや、手続きや引き渡しの手間を考えたら仲介料払った方が安いと思いますよ。それと、申し訳ないですけど、売り主と直接の交渉はあまり持ちたくないです」
「まぁ、それもそうね。じゃあ私も知り合いが買ったなんて言わない方がいいわね?」
「はい。できれば」
「そう。わかったわ」
そしてみんな出掛ける準備を始める。
そんな中、着替えを持っていないのは原田一人。健介の着替えは森口と君島が持ってきたし、二人は夕べ着替えを取ってからここに来たのだ。
朝からまた児童相談所に行くのだが、原田が着替えるために途中でアパートに寄ることにした。
行ってきます、とまた昨日と同じメンバーで車に分乗した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
桃と料理人 - 希望が丘駅前商店街 -
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】。
居酒屋とうてつの千堂嗣治が出会ったのは可愛い顔をしているくせに仕事中毒で女子力皆無の科捜研勤務の西脇桃香だった。
饕餮さんのところの【希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』】に出てくる嗣治さんとのお話です。饕餮さんには許可を頂いています。
【本編完結】【番外小話】【小ネタ】
このお話は下記のお話とコラボさせていただいています(^^♪
・『希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339
・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
・『希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283
・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』
https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/582141697/878154104
・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
※小説家になろうでも公開中※
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる