完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに！王子、私は侍女ですよ！言い寄られたら困ります！

第一話 突然の婚約破棄！

「マリア、君に伝えなければならないことがあるんだ。」

マリアは婚約者であるハルトの、突然の呼び出しに困惑しながら答える。

「はい、なんでしょう？」

ハルトはマリアから視線を外し、

「ふぅ…、僕は真実の愛に気付いてしまったんだ！君には大変申し訳ないんだが……この婚約は破棄させてもらう。」

あまりの事にマリアは言葉を失うが、必死に言葉を絞り出す。

「は、え……な、何で、婚約破棄なんですか？し、真実の愛って…。」

「君には妹がいたね。彼女、ソフィアは僕が生まれた時からの運命の人だったんだ。そして、ソフィアも僕との運命を感じ、二人は結ばれた……それからは彼女が僕の全てになったんだ！これぞ、まさしく真実の愛！」

何を言っているんだ？よく分からないことを……とマリアは思う。

そして、熱弁するハルトに若干引きながら……

「そ、そうなんですね……。」

「ああ、そうなんだ！ソフィア、入っておいで。」

扉が開き、ソフィアが入って来る…微かにソフィアの口角が上がっているように見受けられる……そうか…そういうことなのね。

ソフィアは継母の連れ子で、私の義理の妹、見目麗しく、皆から可愛がられる彼女は、事あるごとに、私にマウントをとり、そして、私の物を奪っていった。

「お姉さま、ごめんなさい……お姉さまの大切な婚約者とは、分かっていたのだけれど……、この真実の愛を否定する事は出来なかったの……。」

ああ、今度は婚約者か……。継母とソフィアのいる実家をやっと出られたと思った矢先に……。

マリアは、ソフィアの事を思い、

「そんなことを言って、私から様々な物を奪って、ひとしきり愛でると貴女はすぐに飽きて捨ててしまう……婚約はそうはいかないのよ。分かっているの？」

「あ～あ、ハルト様から婚約を破棄されたからって、ひがんじゃって、お姉さま、みっともないと思わないの？姉なら、姉らしく、妹の幸せを祝福するのが当然だと思うけれど？」

嘲笑を浮かべ、私を見下す。

ソフィアに、私の言葉は全然響かなかったようだ…

「そ、そうね……おめでとう。」

「どうもありがとうございます。マリアお姉さま。私が家を出たらお母様がお相手して下さるそうよ。」

今度は意地の悪い笑顔……どれだけ悪魔の笑顔をもっているんだよ！っと、ツッコミを心のなかでいれられるくらい私の心は冷静になってきた。しかし、義母が相手か……最悪だ！ソフィアを見ればその母親はどんなものか……想像に固くないだろう…

こうして私はハルト=リッチ侯爵に婚約破棄をされ、実家に帰る事になった。