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『雨の夜』(SIDE 陸斗)


雨の夜は、たまらなく兄ちゃんに会いたくなる。
なぎさと付き合っていると知った時から、俺は自分の気持ちを押さえ込むことに必死だった。

俺だけが兄ちゃんを好きで、俺だけが兄ちゃんに会いたいと思っている。
その事実が辛くて悔しくて、気持ちを抑え込んでいた。

結局そんな風に意地を張ってみても何の意味もなくて、悔しさも寂しさも涙も全部、兄ちゃんを愛しているのだと証明する材料にしかならない。


「龍ちゃん・・・そこ・・・ダメェ・・・・っ」

(な・・・何これ・・・・っ・・・・)

兄ちゃんにもらった合鍵を使って部屋に入ると、渚の苦しそうな声が聞こえてきた。
持っていた傘がカタン、と音を立てて、床に落ちる。

「渚・・・力抜いてろ・・・」

(兄ちゃんの声・・・・え・・・これって・・・)

「痛く無いか・・?」

「龍・・・ちゃん・・・気持ち・・イイよぉ・・・・」

(・・・・兄ちゃんと渚が、エッチしてる・・・・?)

恋人同士なのだから、当たり前と言えばそれまでのことなんだけど、俺は考えないようにしていたんだ。
兄ちゃんが俺以外の誰かと、エッチするなんて・・・想像するのも嫌だったから。


兄ちゃんの家から慌てて飛び出して、猛ダッシュ。
前も見ずに雨の中をひたすら走る。

傘は兄ちゃんの部屋に、置いてきてしまった。

「陸斗・・・?」

ドンと衝撃を受けて尻餅をついた俺は、数秒してようやく人とぶつかったことに気付く。

「・・・浅葱あさぎ・・・?」

俺を見下ろし傘を差し出した、長髪の男。
彼の顔を見て、涙が溢れ出す。

「な・・・陸斗、お前・・・どうした?」

泣き出した俺を見て慌ててしゃがみ込んだのは、親友の浅葱だった。

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