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『複雑な事情』(SIDE 陸斗)


浅葱あさぎは幼い頃に両親を事故で亡くして、叔父さんと一緒に暮らしている。

母親の弟だというその男性は金融業を生業としているらしいけれど、どう見ても堅気の人間には見えなかった。
ド派手な金髪、細縁のメガネ。目を惹く色男だけれど、強面で目つきが鋭い。

浅葱の部屋に泊めてもらうことになった俺は、玄関の扉が閉まる音で目を覚ます。
深夜2時。叔父さんが帰ってきたらしい。

「お前、今日帰って来ないんじゃなかったのかよ。」

浅葱はその男のことを「お前」呼びしている。

自分の叔父さんをそんなふうに呼ぶなんて俺にとっては信じられないことで、彼らの間に普通ではない複雑な事情があることにはすぐに気付いた。

「あ?お前なに男連れ込んでんだよ。」

「ダチ泊めて何が悪いんだよ。お前今日は帰って来ないって言ってなかったか?」

言い争う声が聞こえて心配になり、ドアの隙間から二人の様子を覗く。

「俺がいなくて寂しいからって、他の男連れ込んでんのかよ?テメェはほんと淫乱だな。」

「やめろ馬鹿・・・っ・・触んな・・・ッ!」

「お前がどんだけ淫乱か、テメェの大事なダチに教えてやろうか?」

浅葱が髪を引っ張られて押さえつけられているのが見えて、次の瞬間俺は後先考えず飛び出していた。

「やめろ・・・!浅葱に何してんだよ・・・!」

「あ?何だ、お前?」

浅葱に乱暴する男を引き離して、睨みつける。

「俺、浅葱の彼氏だから・・・!!そういうのもう全部やめてください。」

「あ?お前がこいつの・・・?ガキが何言ってやがる。」

「ガキじゃねぇし。浅葱に・・俺のもんに手出すなら、誰だろうが絶対許さねぇ!」

彼の言う通り、俺はただのガキだった。
後先考えず、浅葱の気持ちも確かめず、突っ走る。

それでも浅葱を助けるにはこうするしか無いのだと、俺には妙な確信があった。

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