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『濃厚なキス』
しおりを挟む「スパイ舐めんな!警察の一捜査員とスパイ・・どちらが優秀だと思ってるんですか?警察の分際でスパイの僕と互角に渡り合おうなんて、百万年早いですよ。」
「馨君、確かに君は優秀だ。誰よりもな。」
結局、出かける直前まで彼らの言い争いは続いていた。
タイプの違う、二人の色男。私の元カレと、現在の恋人。
恋人の馨君は、特殊な訓練を受けどんな任務も成功させてきた優秀なスパイだ。
任務に対しての彼の情熱はすごい。
何を差し置いても任務第一の彼がこれほど私の存在を気にかけてくれるのは初めてで、私は神矢さんへの感謝の気持ちでいっぱいだった。
普段は余裕な態度を崩さない馨君が、私への執着心をむき出しにしている。
こんな姿は初めて見た。
元カレ神矢さんの存在が、馨君の独占欲を煽っているらしい。
「僕の恋人にちょっかい出すのはやめてもらえませんか?僕がこうして言葉で頼んでいるうちに引き下がった方が身のためですよ。」
「女を落とすのは、仕事の優秀さとはまた別の話だろう?スパイとしてどんなに優秀でも、恋人を寝取られることもある。」
「・・・はぁ?!神矢亮一・・・てめぇ・・・彼女に振られたくせによくそんなでかい口が叩けるな?」
「か、馨君、お仕事遅刻しちゃうよ?」
睨み合う二人の間に入り、時計を指差した。
すでに出発予定時間を5分過ぎている。時間厳守の馨君が珍しい。
イケメン二人の言い争いをいつまでも聴いていたいけれど、任務に支障が出て彼が危険な目に遭わないかと心配だった。
「繭さん、毎晩電話します。僕の帰りを、良い子に待っていてくださいね。」
「馨・・・くん・・・っ・・ん・・・・」
馨君は、神矢さんの目の前で私を抱き寄せキスをした。
彼の舌がクチュリといやらしい音を立てて、激しく絡む。
深くて甘い、濃厚なキス。
至近距離で神矢さんが見ていると思うと、妙に興奮してしまう。
「あなたの心も身体も全部、満足させられるのは僕だけです。」
そうでしょう?と同意を求めるように私を見つめる馨君の笑顔に、私は簡単にノックアウトされてしまった。
「はい・・・♡馨君、無事に帰ってきてください。」
「やってくれるな、馨君。」
神矢さんはやれやれと呆れ顔で両手をあげ、お手上げのポーズをとる。
彼の瞳の中にただならぬ怒りの感情が垣間見えて、私はますます興奮してしまった。
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