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『雨に濡れる』(SIDE 泰莉)
しおりを挟むカフェで話し込んですっかり薄暗くなった空から、急に大粒の雨が落ちてきた。
もうすぐ家に着くというところで、本降りになり雨の音が響く。
「急に降るなよなぁ~、すげー雨・・」
「降るなんて予報で言ってなかったよね。」
走って軒先に滑り込んだ俺たちは、お互いの身体が至近距離にあることに驚いて一瞬言葉を失った。瞬間的に身を引いた雫さんが、屋根の外側へ出てしまい、俺は慌てて彼の腕を掴む。
「雫さん、濡れるって、」
掴んだ彼の腕が細くて、ドキッと胸が跳ねた。
すでに濡れてしまったシャツが透けて、彼の白い肌が見える。
「あ・・・ごめん、ありがとう。」
瞬間彼の顔が赤く染まって、お互いにパッと視線を逸らした。
「・・・雨、酷かったね・・・。」
恥じらうように頬を染めて俯いた彼が色っぽくて、妙な気分になる。
早く家に入ればいいのに、いつまでも玄関先で気まずい時間を過ごしている俺たちは、一体何がしたいのだろう。
「雫さん、髪・・・濡れてる。」
彼の綺麗な黒髪から、ポタリ、ポタリと、水滴が落ちる。
無防備なうなじにツゥっと流れていく様に、俺は息を飲んだ。
触れたい。そう思った。
身体が何かに操られているみたいに、俺は彼の黒髪に手を伸ばし、その綺麗な艶を指先で弄ぶ。
「泰莉・・く・・・ん」
彼の透き通った綺麗な瞳が、俺を見つめて名前を呼んだ。
耳に指が触れた瞬間、彼の身体がびくりと震え、同時に声が届く。
「何してるんですか、こんなところで。」
低く乾いた男の声。
俺と雫さんの前に、傘をさした巧さんが立っていた。
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