27 / 61
『現実逃避』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む
「出来ない・・・泰莉・・ごめん。」
美影さんに身体を許したくせに、俺には抱かれたくないと拒絶した弥弦さんの態度が許せなかった。
いつもみたいに罵ったり、理屈の通らない駄々を捏ねてめちゃくちゃに掻き回してくれれば、どれほど良かっただろう。
「んだよ、お前。珍しいじゃねぇか。」
どうしても家に帰りたくなくて向かった先は、昔馴染みの喧嘩仲間の家だった。
弥弦さんとの恋人関係は、もう続けられそうにない。
俺が「別れる」と口にしたら、彼は追ってきてはくれないから・・・覚悟がまだ出来なくて、逃げ出した。
「たまにはお前のアホ面見てぇなと思って来てみた。中入れろよ。」
鮫島 榮吾。高校時代の俺の相棒。
ずば抜けた身体能力の持ち主で喧嘩が強く、高校を出てすぐ格闘家として活躍するようになった。
「気の置けない友人」と言うよりは、「戦友」の方がしっくりくる筋肉バカ。
しばらく見ないうちに、また逞しくなった気がする。
短髪がよく似合う強面で、口調が荒く無愛想な男だ。
こいつなら俺が酷い態度を取っても、簡単に傷ついたりしない。
「しばらく泊めてくれねぇ?」
「勝手にしろよ。」
鮫島はいつも何も詮索してこないし、細かいことはまるで気にしない。
学生時代に親と喧嘩して家出した時も、仕事がうまくいかなくてやけになっていた時期も、俺はここに来た。
現実逃避のための場所、なのかもしれない。
疲れていたのか少し眠って目を覚ますと、部屋中に肉の焼ける良いにおいが漂っていた。
「おう、起きたか。そこ座って食えよ。」
「すげぇ美味そう。お前いつも肉ばっか食ってんの?」
「肉を食わなきゃ始まらねぇだろ。」
俺が弱って逃げ出して来ると、いつも旨いものを食わせてくれる。
こんな風に一緒にいて同じものを食べて・・ただそれだけで良かったのに。
弥弦さんは「普通の幸せ」という枠の中におさまる人じゃない。
それでもなお弥弦さんのそばに居たい、手放したくないという気持ちが俺の胸を締め付ける。
今はただほんの少しの間だけ、現実逃避していたい。
投げ出した鞄の中、弥弦さんからの着信が何度もスマホの画面を点滅させていることを、その時の俺は知る由もなかった。
美影さんに身体を許したくせに、俺には抱かれたくないと拒絶した弥弦さんの態度が許せなかった。
いつもみたいに罵ったり、理屈の通らない駄々を捏ねてめちゃくちゃに掻き回してくれれば、どれほど良かっただろう。
「んだよ、お前。珍しいじゃねぇか。」
どうしても家に帰りたくなくて向かった先は、昔馴染みの喧嘩仲間の家だった。
弥弦さんとの恋人関係は、もう続けられそうにない。
俺が「別れる」と口にしたら、彼は追ってきてはくれないから・・・覚悟がまだ出来なくて、逃げ出した。
「たまにはお前のアホ面見てぇなと思って来てみた。中入れろよ。」
鮫島 榮吾。高校時代の俺の相棒。
ずば抜けた身体能力の持ち主で喧嘩が強く、高校を出てすぐ格闘家として活躍するようになった。
「気の置けない友人」と言うよりは、「戦友」の方がしっくりくる筋肉バカ。
しばらく見ないうちに、また逞しくなった気がする。
短髪がよく似合う強面で、口調が荒く無愛想な男だ。
こいつなら俺が酷い態度を取っても、簡単に傷ついたりしない。
「しばらく泊めてくれねぇ?」
「勝手にしろよ。」
鮫島はいつも何も詮索してこないし、細かいことはまるで気にしない。
学生時代に親と喧嘩して家出した時も、仕事がうまくいかなくてやけになっていた時期も、俺はここに来た。
現実逃避のための場所、なのかもしれない。
疲れていたのか少し眠って目を覚ますと、部屋中に肉の焼ける良いにおいが漂っていた。
「おう、起きたか。そこ座って食えよ。」
「すげぇ美味そう。お前いつも肉ばっか食ってんの?」
「肉を食わなきゃ始まらねぇだろ。」
俺が弱って逃げ出して来ると、いつも旨いものを食わせてくれる。
こんな風に一緒にいて同じものを食べて・・ただそれだけで良かったのに。
弥弦さんは「普通の幸せ」という枠の中におさまる人じゃない。
それでもなお弥弦さんのそばに居たい、手放したくないという気持ちが俺の胸を締め付ける。
今はただほんの少しの間だけ、現実逃避していたい。
投げ出した鞄の中、弥弦さんからの着信が何度もスマホの画面を点滅させていることを、その時の俺は知る由もなかった。
20
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
兄の愛人だった男(ひと)
すいかちゃん
BL
高村慎一郎は、兄の康太郎から頼みごとをされた。それは、愛人に手切れ金を渡してくるというものだった。渋々届けに行った慎一郎は、兄の愛人である前島智広のあまりの美しさに心を奪われる。おまけに智広からは、康太郎に間違えられ…。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる