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『危険な男』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む「離せよ・・・!!」
弥弦さんとのベッドシーン。
雫さんは応援してくれたけど、仕事とはいえこの男と絡むのは精神的にかなりキツイ。
「痛ぇよ・・離せって・・・!!」
まるで容赦がない。
弥弦さんは力尽くで俺をベッドに押し倒し、ネクタイを乱暴に引っ張り上げた。
「お前、まだ俺のこと好きなんじゃねぇの?」
台本には無い弥弦さんの一言。
一瞬にして全身に鳥肌がたつ。
脳内に直接響くような、甘ったるい彼の声。
身体が震える。
自信満々の勘違い男に心底腹が立ったけれど、衝撃で身体がまるで動かなかった。
俺の身体はまだこの声に反応してしまう。
その事実に、心底ゾッとする。
「あぁ?」
精一杯の強がりで、彼を睨みつけた。
飲まれてはいけない、この男の放つフェロモンに。
「お前のその顔、すげぇ好き。」
呪いのように俺を捉えて、いつまでも離さない。
これはただの洗脳だ。
最低最悪な性格の、ダメ男。
頭ではそうわかっているのに、俺はこの声に骨の髄までやられているらしい。
「いいねぇ今のアドリブ!!2人の関係性がよく現れてて、俺ゾッとしちゃったよ!よし!このシーン使おう!!」
監督の嬉しそうな声が、別世界の出来事のように遠くかすんでいた。
『すげぇ好き。』
弥弦さんの声が、脳内で何度もリピートする。
(そんな言葉、軽々しく言うんじゃねぇよ。)
奴は相変わらず、人の気持ちを逆撫でするのが得意らしい。
♢♢♢
「泰莉、久しぶりだな。」
控え室に戻ると、弥弦さんが待っていた。
「人の部屋に勝手に入るんじゃねぇよ。」
撮影では何度も顔を合わせているのに、2人きりの空間にいるというだけで心臓がバクバクと激しく音を立てる。
「出てってくれ。」
なんとか声を抑えて、怒りを静かに吐き出した。
「やっぱりお前は、俺のこと何にもわかってないね。」
「アンタのことわかる奴なんかいんのかよ。」
つい、声が大きくなる。
(頼むからもう・・・俺の人生に関わるのはやめてくれ・・)
「俺がお前のこと好きじゃなかったとか・・・本気で思ってんの?」
「よく言うぜ。あれだけ酷いこと平気でしといて、今更なんだよ。」
「恋人にしたいと思ったのは、お前だけだよ。」
彼の目がいつになく真剣で、息を呑む。
罵倒の言葉が出てこない。
この男は危険だ。
心からそう思っているのに。
彼が一歩、また一歩と近づいてくるのを、俺は身動き一つ出来ずただ見つめていた。
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